『スクールボーイ閣下(上下巻)』ジョン・ル・カレ(著) 2020
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原書は、Tinker, Tailor, Soldier, Spy, John le Carre(1977)。

ジョージ・スマイリー三部作、第一弾『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』に続く、第二弾となる。

上巻:ざらついた感の中にも、スマイリーをボスとする部下(コニー、ドグetc)のキャラクターが光り輝いていている。ギラムのとぼけた感がありながら案外、的を得た観察眼と、スマイリーの緻密な洞察力に対比するとコントラストになっている。いいのじゃないでしょうか。

下巻:上下巻通して、各地域、場所での温度や空気感、臭い、音、人の表情が目の前にいるが如く浮かんでくるのが上手な小説の大前提であるだろう。また、スマイリーの仕事一途な情熱と執念、同僚達からの信頼を得ているが、プライベートなアンとの冷えた関係。主要な登場人物も家庭・健康面では満ち足りていない設定。これも芯のある小説、共感するための第二点目ではないだろうか。さて、中盤以降加速した展開も終着点はこれでいいのか、と。余韻・未練が残ったと感じた人は次作を読んでみよう、ということでしょうね。

スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) 登録情報
文庫: 461ページ
出版社: 早川書房 (1987/1/31)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150404313
ISBN-13: 978-4150404314
発売日: 1987/1/31
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) 登録情報
文庫: 423ページ
出版社: 早川書房 (1987/1/31)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150404321
ISBN-13: 978-4150404321
発売日: 1987/1/31
内容(「BOOK」データベースより)
ソ連諜報部の工作指揮官カーラの策謀により、英国諜報部〈サーカス〉は壊滅的打撃を受けた。だが、その長に就任したスマイリーは、即座に反撃を開始する。〈サーカス〉の厖大な記録を分析し、カーラの弱点を解明しようというのだ。そこで浮かびあがったのは、パリから東南アジアへと伸びる極秘送金ルート。その受取人をつきとめるべく、スマイリーは臨時工作員ウェスタビーをルートの終着地、香港へ派遣した!ロンドンと東南アジアを舞台にスマイリーとカーラの死闘を描き、三部作の中核を成す巨篇。英国推理作家協会賞受賞の本格スパイ小説。
カーラの資金を受けとる香港の大物実業家ドレイク・コウ。彼の弟ネルソンは中国情報機関の中枢に送り込まれたカーラの二重スパイだった。そしていまウェスタビーの調査により、ドレイクが弟を中国から脱出させようと企てていることが判明した。この情報を基にスマイリーはネルソンを捕えるべく秘密作戦を開始する。だが、密命を帯び戦火のインドシナ半島に潜入したウェスタビーが、指揮下を離れ、独自に行動を始めていたとは知るよしもなかった!非情なスパイの世界に生きる男女の姿をリアルに描写、ル・カレの最高傑作と絶賛された力作巨篇。英国推理作家協会賞受賞。




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