『11/22/63』スティーヴン・キング著 2013
10/13
木曜日

スティーヴン・キングの上下巻1,000ページを越える長篇。
過去は強情で、改変することに過去は抵抗する。ジョン・F・ケネディの暗殺事件に、この主人公ジェイク(過去はジョージ)が「待った」をかけようとする。ケネディ暗殺を阻止しようとするわけだ。そのことにより、ケネディー大統領が延命していることで、彼の手腕でベトナム戦争をすることなく、多くの若い命が失われることを阻止できるのではないか。ジェイクはガンでなくなる相棒から、この特命を仰せつかってしまうのだった。何故、過去に行けるのか、それはどこへでも、どの時代へもご自由に、といったタイムトラベルなチープチックなものではなく、いつも決まった場所、いつも決まった年月日にしか行けない。現代に戻り、その過去へ改めて足を踏み入れると、また過去は振り出しに、故意・任意の改変はリセットされている。(何をいわんや、判りにくいでしょうが、本書を読まれんことを・・・)

キングは、自分の背丈にも及ぶ書物を読み、調査とインタビュー、ダラスの現地調査をおこなった上で11/22/63を執筆したという。世界的に有名な「ケネディー暗殺」にキーワードとして「オズワルド」、「陰謀・共謀説」、「単独犯説」など、ダラスの臭い・景色・貧困などの一万ピースにもなろうかと思う出来事・人物・事件をパッチワークのように縫い合わせていく。ケネディー暗殺に向かうまでの前処理(営み)がハンパないほど書かれているのである。たくさん登場する人物に人格と個性を持たせ、ミキサーでかき混ぜたゲロゲロ物、それがキング・ワールドの醍醐味であって、好き嫌いは分かれるかもしれない。しかし、最後には1万ピースの部品はピタッと嵌る? いや、2~3ピースは敢えて行方不明にするのもキング帝王学かもしれない。読者に見つからないピースを探させるのである。シンキング・タイムだな。にくにね、このオッサン。

さてさて、 ケネディー暗殺を阻止し(ネタバラしか?)、現在(2011年)に戻った主人公ジェイク(現代)が知った世界とは・・・・

P.S.
主人公のジョージと恋に落ちるセイディーのラブ・ストーリーに胸躍るが、でもでも結末に涙するのだが・・・。ザ・ビートルズのホワイトアルバムでジョン・レノンが歌うセクシー・セイディーと本書のセイディーが部分的にオーバーラップする。この部分→SEXY SADIE: Just a smile would lighten everything  Sexy sadie she's the latest and the greatest of them all
<たったひとつの微笑みで、すべてが明るくなった  セクシー・セイディー、最新で最高の恋人>

省吾のスティーヴン・キング

11/22/63 上
スティーヴン キング Stephen King
4163824804
登録情報
単行本: 529ページ
出版社: 文藝春秋 (2013/9/13)
言語 日本語
ISBN-10: 4163824804
ISBN-13: 978-4163824802
発売日: 2013/9/13
11/22/63 下
スティーヴン キング Stephen King
4163824901
登録情報
単行本: 527ページ
出版社: 文藝春秋 (2013/9/13)
言語 日本語
ISBN-10: 4163824901
ISBN-13: 978-4163824901
発売日: 2013/9/13

内容(「BOOK」データベースより)
<上巻>
小さな町の食堂、その倉庫の奥の「穴」。その先にあるのは50年以上も過去の世界、1958年9月19日。このタイムトンネルをつかえば、1963年11月22日に起きた「あの悲劇」を止められるかもしれない…ケネディ暗殺を阻止するためぼくは過去への旅に出る。世界最高のストーリーテラーが新たに放った最高傑作。

<下巻>改変を拒む「歴史」が繰り出す執拗な妨害。降りかかる痛ましい悲劇。世界の未来と愛するひとの命のどちらを選べばいいのか?緊迫のクライマックス、涙のラスト・シーン。国際スリラー作家協会長編賞受賞。LAタイムズ文学賞ミステリー部門受賞。英国幻想文学賞、ローカス賞最優秀SF長編部門最終候補作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

キング,スティーヴン
1947年、アメリカ、メイン州生まれ。1974年に『キャリー』で作家デビュー。恐怖小説をアクチュアルな現代小説に再生した「モダン・ホラー」の巨匠。『11/22/63』は2011年にアメリカで発表され、国際スリラー作家協会最優秀長編賞、ロサンジェルス・タイムズ文学賞ミステリー/スリラー部門の二冠に輝いたほか、英国幻想文学賞ホラー長編部門、ローカス賞の最優秀SF長編部門の最終候補作となるなど、非常に高く評価された

白石/朗
1959年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。英米文学翻訳家







(2013/10/13 16:39)


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