零戦の操縦 2011
11/7
月曜日

以前、購入して読んでいなかった「零戦の操縦」について要点をピックアップしたい。
(零戦に興味がないかたは、まるで猫に小判であろうが・・・)

零戦の操縦をしたい。
特に一騎打ちをしたいわけではなく、安全に大空を飛びたい(でも曲芸飛行もしたい・・)と真剣に夢を想い描いている。
そのためには、ある程度の操縦技術が必要となってくる。

今回は、以下の章に沿って解説して行こう。
参考文献は、以下左「零戦の操縦」を私なりにより操作と確認事項、注意点と分かり易く分類した。
チェックリストとして活用できればとの想いである。
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第一章 零戦とはどんな飛行機か
-艦上戦闘機に求められる性能
第四章 空母での離着陸
-空母からの発艦
-空母への着艦
-急速発進・急速収容とは
-急速発進
-急速収納
第二章 飛び立つ前に
-飛行装束
-飛行前打合せ
-飛行前点検
-機体への接近
-主翼に登る時
-風防をオープン
-操縦席への乗り込み
-外観の点検
第五章 空中戦
-空中戦とは
-見張り
-空中戦の基本
-空中戦の準備作業
-敵攻撃の回避
-対爆撃戦闘機
-(1)後ろ上方からの攻撃
-(2)後ろ下方からの攻撃「上昇しながら爆撃機の下腹を狙う」方法
-(3)前方からの攻撃
-戦闘時に大事なこと
第三章 操縦の基本
-発進(離陸)
-タキシング(移動)
-離陸
-上昇
-水平飛行
-燃料タンクの切り換え
-運動<上昇>
-運動<降下>
-運動<急降下>
-旋回
-旋回からの水平飛行
-着陸
-着陸<三点着陸>
-失速について
-着陸後停止まで
-機体の停止後
-飛行点検
第六章 トラブル対処法
-悪天候
-雨
-霧
-風
-雷雲
-「失速」と「錐揉み」とは
-「失速」
-「錐揉み」
-エンジンの異常過熱
-エンジン停止
-火災
-空中脱出法
-高山病(ハイポキシア)
付録 『坂井三郎の零戦操縦 』よりピックアップ

【参考文献】
零戦の操縦
青山 智樹 こが しゅうと
475721734X
坂井三郎の零戦操縦 [増補版]
世良 光弘
4890632425
【参考】
零戦百科事典―傑作戦闘機ハンドブック (光人社NF文庫)

雑誌「丸」編集部


零戦21型 A6M2 零戦52型 A6M5 零戦 M6A2a TYPE11 3-170


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第一章【零戦とはどんな飛行機か?】

 ・日本が作りだした工業製品の最高傑作のひとつ
 ・生産機数 1万機以上
 <優れていた点>
 ・スピード、格闘戦性能、長時間飛行能力、武装の全体の「バランス」がよく、きれいにまとまっていた
 ・格闘性能が優秀
 ・稼働率:90~95%
◎長所
 (ずば抜けた視界)視界確保を優先した「涙滴型風防」
 (ずば抜けた航続力)900リットルの燃料を搭載、「落下式燃料タンク(増槽)」
 (翼に仕込んだ20mm機銃)大破壊力
 (すば抜けた旋回能力)艦上戦闘機のため着艦速度が低い→小回りが効く
◎短所
 (少しの被弾で炎上)パイロットを守る防弾板、タンクに空いた穴を防ぐ自動防漏機構はなし
 (上昇性能)高度5,000から6,000mになると極端に上昇性能が悪くなり高々度迎撃には不向き
 (高速での操縦に大きな力が必要)剛性低下方式が採用された操縦索は昇降蛇(エレベーター)のみ
 (過度な急降下は空中分解)軽量化の弊害として急降下速度が連合軍機に比して遜色


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【艦上戦闘機に求められる性能】
(1)コンパクト設計
・空母のエレベータに乗せられるサイズであること(最初期型で全幅が12メートル)
 ⇒当時使っていた空母のエレベータと同じ大きさであったため、よほど上手く運搬しないと引っかかってしまう
 ⇒翌型では翼端を50センチ折りたためるようにした

(2)耐食性
・海水の飛沫を受けたり、緊急発進用に飛行甲板で待機することもあり、金属を激しく浸食する⇒さび止めの塗料を塗ったり、もともと錆びにくい材料で作られる必要がある

(3)着艦フック
・空母のサイズは全長が二百数十メートル、羽田空港の二十分の一、調布飛行場の四分の一しかない
・二百メートルという長さは、零戦ならブレーキを使ってかろうじて止まれる距離だが、空母の飛行甲板を全て滑走路として使うには、「エレベー ターをもとに戻しておく」必要があった。なぜなら、日本海軍空母のエレベーターは飛行甲板と一体化しており、エレベーターを元に戻さないと、飛行甲板に12メートルの 大穴が開いていることにな る。しかし、そうそう戦闘中にすみやかな機体収納ができる場合ばかりではない
・そこで本来なら着陸時に何百メートルも滑走する飛行機を十数メートルで止める荒っぽい機構が用意された。それが「着艦ワイヤー」と「着艦フ ック」。飛行甲板後部に何本もの「着艦ワイヤー」というワイヤーロープを張り、飛行機の側では「着艦フック」という鉤を下してワイヤーに引っかける
・かなり荒っぽい着艦方法であるため、艦上機はこれに耐えられる丈夫な機体であることが要求される
・「着艦ワイヤー」はドラムに巻きつけられており、十五メートルほど引き出されると電気力、ないしは油圧で制止力を強くして飛行機を止める

(4)頑丈な機体
・空母という着陸場所は、安定した場所ではなく、着艦時の危険が大きい
・飛行機を離着艦させるためには空母の速度は速い方がよい。そのため空母は他の軍艦より速く設計されており、最大で約三十ノット(時速50キ ロ程度)の最大速度で航行することができる。実際の運用時には海面を吹いている風に艦首を向けて、風の速度と空母との航行速度と合わせて二十ノット(時速40キロ弱 )程度になるように機関を調整する
・零戦の着陸速度は一〇〇キロプラスαであるため、これで速ければ飛行機側の着艦はかなり楽になる。反面、航行中の空母は揺れ、飛行甲板は激 しく上下動する。「着艦完了」と思った瞬間に飛行甲板が下がっていたり、あるいは激しい突き上げが来たりする。
・フックがワイヤーを捕らえていれば空母から落ちることはないが、艦上機は時速六〇キロで飛行甲板に叩きつけられても壊れない頑丈さが求められる
・零戦は非常に軽かったため脚に対する負荷が少ない

(5)機体の扱いやすさ
・海上では地上と違い足りない物があれば取り寄せることが出来きず、なかなか思うようにいかない場合もあるため、整備が簡単で故障しにくい機体が喜ばれる
・栄発動機は九七艦攻と同じエンジンで、部品に互換性があったため、故障しても予備の部品をすぐ確保できた
・零戦はエナーシャ式エンジン始動機を搭載しているため、乗務員やパイロットがハンドルを回して始動ができた。肝心なのは人間が始動できたこ と
 (日本陸軍では「始動車」が必要だった。飛行機が甲板でずらりと並んだ「始動車」を使えなかった。つまり人間が始動できなかった)


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第二章【飛び立つ前に】

-飛行装束
下着 越中ふんどしが理想
飛行服 ツナギの綿入れ(凍え対策)
電熱服 ニクロム線を仕込んだが評判悪し
マフラー 襟元からの風を防ぐ
機上不負傷時の包帯代わり
風防ガラスの曇り拭き
格好いい:城羽二重
救命胴衣 海上を飛ぶ場合
パイロットの判断で使わなかった場合が多い
飛行靴、手袋 革製の支給品
(自分でお気に入りを買い求めるケースもあり)
ロングブーツ
落下傘 パラ-シュート
初期:腰からぶら下げるタイプ
後期:リュックサックのような背中に背負う
使わないパイロットが多かった
非行帽 防寒用
毛皮、内側は起毛
飛行眼鏡 風よけゴーグル
視界確保と眼球保護
酸素マスク 飛行機の備品
一定高度異常時に昏倒を防ぐ
航空配食 片手で食べられる
巻き寿司、イナリいなり寿司、おはぎ、サイダー
航空糧

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不時着時(緊急)用
サラミソーセージ、金平糖、氷砂糖

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-飛行前打合せ

・機体に乗り込む前にやること
・どんなルートをとるのか
・何をするのか(前戦に移動、爆撃機を掩護、敵飛行場の銃撃、敵機遭遇時の対処方法)
・整備員からの連絡(エンジンの調子、オイルの温度等)


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-飛行前点検

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行動
操作 確認事項・挙動・対処 注意・考慮点
機体への接近

左翼側から翼を回り込むようにして近づく
整備員がいれば一緒に点検する

プロペラに巻きこまれないため


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主翼に登る時

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「フムナ」「サワルナ」赤い文字、赤い線には足を掛けない

足を掛ける場所に注意

注意しないと機体は簡単に凹む


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風防をオープン

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「風防ロック孔」のラッチ(止め金)を引いて風防をスライドする

真ん中部分がスライド

風防は一番前と真ん中、後部に3分割


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操縦席への乗り込み

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電源スイッチを入れる

電源を必要とする計器類がちゃんと動作しているか

不備があれば整備員に渡し修理

電源スイッチを一旦切る

間違ってプロペラが回り始めないため

操縦桿に手を掛ける

ちゃんと繋がっているか
繋ぎ間違いはないか
テンションはかかっているか

操縦桿を前に倒し、後を振り向く

尾翼にある昇降蛇(エレベータ)が下を向いているか

操縦桿を右に左に切る

主翼左右の補助翼(エルロン)が動作しているか

フットバーを踏み込む

垂直尾翼の方向蛇(ラダー)が動作しているか


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外観の点検

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一旦、操縦席から降りる

飛行機の周りを上から見て左回りに点検

胴体に穴が空いていないか
舵そのものを目で見て不備はないか
布製の補助翼は切れていないか
燃料はきちんと入っているか
オイルは足りているか
タイヤの空気は抜けていないか

不備があれば整備員へ修理依頼
前戦で整備員がいない時は自分で修理
点検を入念に行わないと死ぬのは自分


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第三章【操縦の基本】

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-発進
 (離陸)

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操作 確認事項・挙動・対処 注意・考慮点
零戦に乗り込む

航空時計をセット

計器盤、所定の場所

支給品

高度計の調整

気圧計は調整されたか

気圧は刻々と変化するため、最新の気圧にしておく

(右側)「手動燃料ポンプ」でシリンダーに燃料を注入

燃料は注入されたか

海軍では「注射」とも言われていた

(整備員)プロペラを手でゆっくりと回す

プロペラは回されたか確認

燃料がエンジン全体に回るようにするため

電源スイッチを入れる

整備員がいる時は「電源入れる」と合図したか

操縦席の左側レバー
プロペラピッチ(低)(※注1)
混合比(MC)レバー最濃(※注2)

左記操作は完了したか

(右手)カウルフラップ全開

カウルフラップは全開したか

(右手)電気関係のスイッチを操作

周りに人はいないか

いないことを確認

(整備員)エナーシャを回す
(整備員がいないときは自分で回す)

エンジンの右上に付いているハンドルで弾み車を回したか

「コンタクト!」と叫ぶ
頭の上で右手を振り回す

整備員は退いたか
エンジンとエナーシャが接続し、プロペラが回り始めたか

右足で操縦桿を手前に巻き込んで飛行機を上昇する態勢にしておく

アイドリングでも300~400馬力もあるため下手をすると前につんのめってしまうため

スターター結合レバー「エナーシャースターターレバー」を引く
(時にはスロットルを操作する)

エンジンはかかったか
尾部は地面に押しつけられているか

プロペラの吹き出した風が昇降蛇に当たるため尾部が地面に押しつけられる

安全ベルトをチェックする

パラシュートと飛行服が接続されているか

三点ベルトにより背面飛行になってもがっちりと椅子に固定される

(エンジンがかかったら)
油圧計、電圧計(発電機の具合)、排気温度を点検する

発電機から供給される電力がきちんと充電されているか
空気圧が充分に来ているか

エンジンが停止状態では確認が出来ない計器であるため

磁気コンパスと同調させる

磁気コンパスは同調できたか

パイロットが調整出来るようになっている


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-タキシング
 (移動)

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椅子を「座席上下操作レバー」で一番高い位置に上げる
飛行眼鏡をかける

椅子は一番上に上がったか
飛行眼鏡はかけたか

機体の前には大きなエンジンがあるため視界が悪くなっている、そのための視界を確保する
高い位置ではプロペラ後流がもりに吹き付けられるが我慢する

ブレーキを一杯に踏む

ブレーキを踏んだか

機体が動き出さないため

スロットを一杯に開く
(エンジンの回転数はおよそ2000/mpsを維持する)

エンジンの出力は上がったか

地上で2000/mps以上を続けているとオーバーヒートしてしまう

オイル温度、エンジン排気温度、すべての計器類を確認

良好か


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-離陸

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「離陸良し」は送られてきたか
(待機所からの手旗信号、管制塔があれば発光信号など)

自分の目で滑走路に離陸途中、着陸中の飛行機がいないか

いないことを確認したか

(左手で)スロットル全開
操縦桿は前に押し倒す
(風の影響で左右に振られたらフットバーで調整する)

尾部は持ち上がってきたか

機が水平になったら、操縦桿の前倒しをやめる

機の水平状態が維持されているか

(機体速度が規定離陸速度(およそ90ノット(150キロ)に達したら操縦桿を引く

タイヤからガタゴトと伝わっていた振動が途絶えたか

1ノット/h=1,852m/h
大体1.8倍で時速換算

椅子を降ろす

椅子は降りたか

風防を閉める

風防は閉まったか

安全ベルトを調整する

安全ベルトは調整できたか

ベルトが緩んでいると背面飛行では身体がずり上がってしまい、操縦桿やフットバーにも 手も足も届かなくなってしまう


-
-上昇

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-着陸脚(引きこみ式)をしまう
操縦桿の右側「注油ポンプの切替スイッチ「脚切換レバー」を「右脚」に切り換え収納、次に「左脚」に切り換え収納、次に「尾輪」を収納する( 順番は特に指定なし)

出しっぱなしでは空気抵抗になりスピードは出ない
(ヘタをすると)風圧で脚が折れることもある
引き込めない場合は整備不十分であり引き返す

-耳の調整をする
鼻をつまんだり、わざとあくびをする

鼓膜の外と内側が同じ圧力になったか

放っておくと激しい頭痛が起こる

適切な上昇速度にする
速度を100ノット(185キロ)にする

速度が100ノットに安定しているか

燃料を余分に消費する
(零戦では)速度を100ノット(185キロ)にすると事前に適切に上昇角度になる

操縦席左脇の黒いハンドル「昇降蛇トリムタブ操作ハンドル(エレベータトリム)」を手 前に回し昇降蛇を調整する

昇降蛇を引き続けるのと同様の効果が得られる
trim:【海・空】 (積み荷・乗客などの配置によって)〈船・飛行機の〉バランスをとる
長時間の上昇の体勢では脚が疲れないようにするため

「方向蛇タブ操作ハンドル(ラダートリム)」を調整する

左に振られずまっすぐに飛ぶようになったか

機首を上げ続けていると左に振られてくる。まっすぐ飛ぶためには右のラダーペダルを踏み続けなければならない。意外に体力を消耗するため、脚を楽にさせておく

「スロットル」、「混合レバー」(※注1)、「プロペラピッチ」(※注1)を調整する

「ブースト計」(スーパーチャージャー)に注意する(※注2)

まとめると、
AMCを入れる
プロベラピッチを「低」に固定する
トリム(昇降蛇、方向蛇)を調整する

「勝手に上昇してくれる」か


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-水平飛行

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目標を想定し、それに向かって飛行する

適当な高度に達したとして

エレベータートリム(中立)にする

上昇・下降はしていないか

ラダートリム(中立)にする

横に機が流れていないか

三蛇(補助翼、昇降蛇、方向蛇)を真ん中に保つ

機が上昇・下降せず、左右に傾かず、横ずれしていないか

エンジン出力を調整する(スロットルを絞る)

回転計の回転数を一八五〇回転くらいになったか

離陸上昇中にフル稼働させたが、水平飛行でもそれを続ければ燃料がなくなり、オーバー ヒートをしてしまう

プロペラピッチを調整する
→プロペラピッチレバーを「高」に押し進める

いったん飛行機の速度が遅くなるが、暫くすると速度が上がってきたか? プロペラの角度が深くなるためたくさんの風をかき出すようになる
プロペラピッチが変わって、ミッションが上がったのにエンジンがついていけないため(車のギアをハイ(トップ)にしたのと同じ)

巡航速度を高度3,000メートルで135ノットくらいにする

巡航速度を守れているか

一番燃費がよい
エンジンの特性として3,000~4,000mが効率的
エンジンのスロットルをいじっても回転数は変わらない(恒速プロペラが一定の回転数で最も効率よく空気をかき出すように調整している)

AMCを閉め、ACを調整する

オート調整していた混合比を手動に切り換えてガソリンの消費量を少し落とすため

水平儀(ジャイロコンパス)を調整する
(一回スイッチを入れると(エンジンが回ること)自動的に作動する
一五分おきにジィロコンパスと磁気コンパスの同調をとる

ジャイロコンパスを調整して磁気コンパスに合わせたか
どの位ずれるのかはジャイロコンパスのそばに書かれているので、これを読んで調整したか
鉄分の持ち込みには注意したか

・飛行機では方向を表示するのに、磁気コンパスではなくジャイロコンパスを主に使用する
・理由は磁気コンパスは反応が遅く、旋回してすぐには正確な方向を示さない。またジャイロコンパスは前後左右の傾きも表すことが出来る
ジャイロコンパスは上半分が空を表す青、下半分が地面を表す黒に塗られている
・境目のところに今自分がどちらを向いているか示す「NEWS」の方角と目盛りが刻んである
・雨で視界が悪かろうが雲の中に入ろうが、自分がどんな姿勢でいるのか一目でわかる実に便利な計器。欠点は地球の自転に同調していない。
・鉄の部品は磁気コンパスの方向指示は正確ではない
・工場で組み立て時点で、磁気コンパスがどれくらいずれるのかを記録しておけば,機上でパイロットが修正可能


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-燃料タンクの切換え

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(初期型の一一型、二一型の例)
燃料タンクのどれから使うかを決める
増槽を付けれいる場合は、増槽から使う

(初期型の一一型、二一型の場合)胴体内タンク、右主翼タンク、左主翼タンクに3つの タンクがある
空中戦になったら増槽を捨てる必要がある。余計な重量や空気抵抗は邪魔。他のタンクから燃料を使っていた場合、増槽を捨てたら基地に戻ってこれなくなるかもしれない

<増槽を使いきった場合、または最初から付いていない場合>
主翼内のタンクを使う
左右のタンクがバランスよくなっていない場合は、燃料タンクが適度に軽くなるまで飛行場の上をぐるぐる飛ぶか、空中放出をする

燃料の残量があるか
該当タンクのコックは閉めたか
全部(右、左、胴体内のコックは全部開けたままにしていないか
スロットルを一杯上げる
プロペラピッチを「高」にする
操縦桿を倒して突っ込んでいくあまり強く操縦桿を押していないか(激しい動きは機体の速度を殺してしまう)
恒速プロペラが自動的にプロペラピッチは調整したか

始めは右翼、左翼どちらでもよい
主翼内のタンクを使う理由は、空中戦となった場合の火災を防ぐため、主翼内のタンクは戦闘に入った場合、一番被害を受けやすい面積が広いため
左右交互に使う理由は、燃料を残したまま着陸するため。左右のバランスが悪いと反対側の主脚に余計な負担をかける
極端な場合は着陸できない。
急降下中はトリムを悠長にくるくる回している暇はないので力任せに操縦桿を抑え込むことになる

<例えば>右を30分使ったら右のコックを閉め、左を開いて30分飛ぶ

右、左の残量は残っていないか
胴内の燃料の残量を確認したか

<右、左翼内の両方を使いきった場合>胴体内タンクに切り替える

胴体内タンクに切り替えたか

重力で燃料が全部、一番下の増槽に落ち、この状態で敵機と出会い、増槽を捨ててしまったら大変なことになる

15分に一回、ジャイロコンパスの調整をする
30分に一度、燃料タンクの切替をする

左記作業を行っているか

オイル温度と、排気温度、シリンダー温度は時々点検する

左記、計器類は点検しているか

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-運動
 <上昇>

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(一分一秒でも早く高い高度に達するために)
スロットルは上昇出力
ブーストはいっぱい
プロペラピッチ「低」

速度は90ノット程度に抑えているか
オイル温度に注意しているか

「飛行機は操縦桿を引くから上昇するのではなく、スピードが上がるから上昇する」
速度が速くなればなるほど飛行機を引っ張り上げる力(揚力)は強くなる。ところがただ速いだけでは翼の能力を発揮しきれない。そこで操縦桿を 引いて機首を上げ、翼が沢山の風を受けるようにしてより強い上昇力を得る

ACよりもAMCを使う

AMCを使っているか

上空は気圧の変化が激しいため

高高度では酸素マスクは付ける

高高度では酸素マスクは付けたか

高高度になると空気が不足する

3,600メートルで過給機(スーパーチャージャー)を二段に切り替える

過給器を二段に切り替えたか

エンジンにより多くの空気を送り込むため
過給圧はブースとで微調整するが、それだけでは不足するため二段切り替え式の機械式過給機を使う


-
-運動
 <降下>

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(スピードを落とす場合)
スロットルを緩める
(急いで降下する時)
エレベータトリムを回す

スピードは下がったか

エレベータトリムを使うと操縦桿を押しっぱなしの体勢では疲れるし、機械に任せられるところは機械に任せたほうが楽で、安定した挙動が期待できる


-
-運動
 <急降下>

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スロットルを一杯上げる
プロペラピッチを「高」にする
操縦桿を倒して突っ込んでいく

あまり強く操縦桿を押していないか
(激しい動きは機体の速度を殺してしまう)

恒速プロペラが自動的にプロペラピッチは調整する
急降下を続けていると速度がどんどん上がり、プロペラは風に煽られバリバリとものすごい音を立てる。速度が上がると翼の揚力が強くなり、機 種が上がりがちになるので抑え込む
急降下中はトリムを悠長にくるくる回している暇はないため、力任せに操縦桿を抑え込むことになる

急降下制限速度を守る
スピードを緩めるには操縦桿を引いて機首を上げるか、スロットルを引く

スピードは遅くなったか

(初期型では時速六三〇キロを超えると空中分解をする危険がある)
速度が速くなりすぎたらスピードを緩める


-
-旋回

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目印を見つけ、目印に向けてまっすぐに飛ぶ
ジャイロコンパスと磁気コンパスを調整する

ジャイロコンパスと磁気コンパスは調整したか

旋回したい方向(右の場合は)右に操縦桿を倒しながら、右のフットバーを踏み込む
操縦桿を引きつけて若干上昇の姿勢をとる⇒この動作をしないと高度が落ちる
「旋回計(吊り玉)」のガラス球をもとに戻すようにラダーを踏み、姿勢を保つ

目印方向に旋回しているか
横滑りをしていないか

注意:(<推奨しないが>ラダーを使わずに旋回をする場合)、操縦桿だけを右に切った とすると、機体は右に傾いて横滑りをしながらも旋回を続ける。しかし旋回の初期に補助翼に前方から受け風が変化して、旋回しようとする方向の逆に機首が向いていしまう ⇒蛇行することになり戦闘中では大変危険
横滑りは変な上昇をしたり、高度の喪失に繋がる


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-旋回から水平飛行

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目標物が見えたら早めに柁を戻す(前方に見えてから柁を戻すと少し遅れてしまう)

目標物を捉えたか

零戦の柁はすばらしく効きがよいがタイムラグは発生する

(目標物に向かうため)ジャイロコンパスを使う方法は、旋回開始時に自分の向いている 方向を覚えておく
一周するのを見て水平飛行に戻す

目標物に向かったか

熟練したパイロットは必要な計器類を全て見ながら正確な旋回が行なえる


-
-着陸

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飛行場が見えたら管制塔あるいは待機所から着陸許可を確認する
既定の高度で滑走路に向かって直進する
高度1,000フィート(およそ300メートル)とするとスロットルを速度100ノットになるまで下げる
AC「最濃」(AMCでも構わない)

もっとも難しい「着陸」であり、離陸に比べ格段に危険な動作

(速度が110ノットになったら)
主翼とフラップを下げる
主脚は収納する時と逆に油圧ポンプのセレクターをひとつひとつ切り換えて脚を下していく
同様に尾輪を下す

「カチッ」と音を立ててロックされたか
計器盤のランプが点灯したか
主翼上に脚が出ていることを示す棒が突き出ているか

「フラップ(下げ翼)」は下げることによって着陸速度を遅くする
零戦の場合は「スプリット・フラップ」でバカッと下向きに開く原始的なもの

エレベータトリムを調整して水平飛行を維持する
飛行眼鏡をかける
風防を開く
イスを持ち上げる

滑走路が良く見えるようになったか

滑走路が良く見えるようになる

滑走路端に向けて速度を70ノット(厳守)にする
降下角度は三度が理想(降下角度は感覚で覚えるしかない

速度を70ノットに厳守しているか

着陸の速度が70ノットより速すぎても遅すぎても着陸は失敗する

(空母や整備された飛行場)着陸指示板(着陸指示灯)を目印にしながら侵入経路をとる

スロットルを開きながら操縦桿を引いて調整したか

地面に赤い板があり、その手前何メートルかに白い板を打ち付けた棒が立っている
上空から見て二枚の板が水平に並んで見えれば、適正な侵入経路に乗っていることになる
赤い板が上に出ていたら低すぎ

(滑走路を超えて)スロットルをアイドリングまで緩める
操縦桿を引きつける
同時に機体が左に振られるので ラダーで調整する
この段階では速度計は見ずに外の地平線を見る

機体は左に振られていないか


-
-着陸
 <三点着陸>

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「下げ翼(フラップ)」を使いつつゆっくりと発動機の出力を絞り、少し機首を上げて「 三点着陸姿勢」で滑走路に近づく
急激に速度を下げて失速しないこと、急激に機首を上げて同じく失速しないこと

二本の脚と胴体後ろの尾輪が同時に地面につくことを「三点着陸」という
着陸寸前に速度と高度を最後まで落とすのは主脚を守るため
着陸のショックで主脚が折れたり、極端な場合は主翼を突き破る事故にもなる

<三点着陸体勢>
速度を落とすため機体が少しでも落ちたら操縦桿を引いて、機首上げ姿勢をとる
再度機体が落ちたら再度操縦桿を引く
当て舵を強くするが速度が落ちているためスカスカですぐには効かない

頼れるのは自分の目と、操縦桿から伝わってくる感覚だけ


-
-失速について

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操縦桿を更に引きつけこらえる
この状態でもう一度、操縦桿を引くと翼が力を失い翼が震える「不正振動」
速度がつきすぎた状態では、タイヤが地面に着いたとしても、ボーンとリバウンドする
滑走路が充分に長ければもう一度出力を上げ、もう一回着陸操作をする
滑走路が短すぎたら、出力を上げて、飛行場の周りを一周してやり直す

速度は遅すぎないか(地面に充分接近する前に落ちてしまう)
速度が速すぎないか(運が悪いとバウンドせずにタイヤを捕られて前のめりにつんのめる)

飛行機の翼が力を失うこと
垂直に落下する
着陸時、失速直前の速度は60ノット程度
教官たちは「地上、一寸(約3センチ)で失速させろ」と教えていた


-
-着陸後停止まで

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ブレーキを踏んで速度を落とす
両方(左右)のブレーキをゆっくり踏む

片方だけのブレーキを強く踏んでいないか⇒左右にぶれて滑走路から飛び出し、その場で 一回転しかねない
飛行機は停止したか

ブレーキはいきなり踏みつけると機体がつんのめる


-
-機体の停止後

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所定の場所までタキシングしていく
地面に映る自分の機の影や、影同士がぶつからないように機体を運ぶ
機体を定位置に持っていく
<エンジン停止手順>
AMCは入っていたらACに切り替える
ACを「最薄」から、「切」にまで引っ張る
スロットレバーを停止位置にする
ガソリンコックをすべて「閉」にする
電源スイッチ「切」にする
安全ベルトを外し、飛行機から降りる

隣の零戦にぶつけないように注意しているか
地上では影を利用しているか
定位置に停止したか
(エンジンへのガソリン供給が断たれるため)エンジンが停止したか


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-飛行後点検

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操縦席から降りる
飛行機の周りを点検する(尾部、水平尾翼、垂直尾翼、主翼後端、主翼、主脚の様子、プロペラ、反対側の主翼)上官に報告
(場合により)飛行後打ち合わせをする

(整備員は)チョーク(車輪止め)を噛ませて動かないようにする

不具合はないか
不具合があれば整備員へ伝えたか
飛んでいて「左(あるいは右)に傾くなぁ」と感じたか

零戦にはエルロン(補助翼)トリムがないため整備員に報告する
整備員は補助翼に付いた金属の板(トリムタブ)をペンチで曲げて調整する


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第四章空母からの発艦・着艦
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-空母からの発艦

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操作 確認事項・挙動・対処 注意・考慮点

艦橋根元の搭乗員待機室から出て零戦に乗り込む
エナーシャ回せ
計器類のチェック(10秒以内)

零戦に乗り込んだか
整備員は弾み車を回したか(場合により整備員がエンジンをかけておくこともある)

飛行前点検は、格納甲板で整備がなされているため省くことが多い
飛行甲板でエンジンの試運転、を含む重整備、点検が終了しているため
暖機運転は整備員が行う(空母ではタキシングする場所はない)
一刻を争うことが多い

AC「最濃」
プロペラピッチ「低」
フラップを20度降ろす
フルスロットでブレーキを踏む
エンジンの回転数が上がるのを待つ


エンジンの回転数は上がったか

空母の機首は、風の方向を示す発煙剤がたかれるか、水上機を吹き出しているため、煙はまっすぐ飛行甲板を流れている
横風を心配する必要はない
空母の方で風上を向いてくれる

「発艦よし」の合図でブレーキを離す

「発艦よし」の合図はでたか

飛行甲板は50メートルしかない
空母が二〇ノットで高速に進むため零戦は直ぐに浮き上がる


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-空母への着艦

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第一旋回、左九〇度旋回する
エンジンを巡航状態に調整
第二旋回、左九〇度旋回する

飛行周回高度(1,000フィート)に達したか

空母が左後方45度にきたか

空母を左に見ながら空母の進行方向と逆に進む

第三旋回する

空母がもう一度、左にきたか

さらに左旋回をして最終進入経路に入る

着艦許可(緑色の発光信号)が出たか
他に最終形路、飛行甲板上に機がいないか

エンジン調整
脚を出す
着艦フックを下ろす

着艦指示板(灯)があるので進入角度はわかりやすいが、空母は揺れている、あくまで目安にしかならない
【着艦指示灯】難しい着艦を少しでも容易にしようと我が国が考案した独自システム
赤灯緑灯の「着艦指示灯」が横一列になるよう機体を操ると進入角が適正になる
------------------------
   ■■■■ 高い
■■
------------------------
■■■■■■ 適正
------------------------
■■
   ■■■■ 低い

エンジンを絞る
空母後端の着艦ワイヤーを目指して降りていく
艦尾を行きすぎたら着艦する
操縦桿を引きつけ、三点着陸の姿勢をとる

着艦フックがワイヤーを捕らえたか
主脚が看板に着地したか

飛行甲板のワイヤー位置両側に着艦指示用の白いペンキが塗られている
この間に降りられれば成功
多少、叩きつけられても着艦ワイヤーが引っかけられれば問題はない
降りたのが空母の手前なら後端に激突する
右すぎても左すぎても海に落ちる
行きすぎれば着艦フックはワイヤーを引っかけられない
ワイヤーは十数本が何メートル毎に張られている、この間に着艦すること


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-急速発進・急速収容
事故の確率は格段に上がる
すみやかな発艦と着艦が可能となる ページの先頭へ
行動 操作 確認事項・挙動・対処 注意・考慮点

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-急速発進

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急速発進後、母艦の上空を周りながら待機する
艦爆、艦攻が飛び立ち、空中集合し、一斉に攻撃に向かう

格納甲板でガソリン、オイルの注入、操縦索の調整は終わっているか
エレベーターで飛行甲板に運び上げられているか

飛行甲板では前方から、戦闘機、急降下爆撃機、水平爆激、雷撃機と軽い順に並ぶ
軽い零戦は一番最初に発艦する


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-急速収納

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最終進入経路に入る
着艦が成功したら着艦の邪魔にならないように控え室へ行く

(母艦側では)着艦の都度、ワイヤーバリケードを立て、無事、着艦できればバリケードを倒す
(整備員は)艦載機を駐機側に手で押し運び、次の着艦に備える

急速収納は急速発進に比べ更に危険度が上がる
航続距離の短い、艦攻、艦爆から着艦
航続距離の長い零戦は最後
急速収容では着艦部分と、駐機部分の間に「ワイヤーバリケード」という棚を張ってある
飛行機を収め取るスチールワイヤーを50センチ感覚で張った目の粗い綱


-
第五章【空中戦】

空中戦は合図があって始まるものではなく、こちらが相手を見つけて始める場合もあれば、逆に相手が襲ってくる場合もある。「よい空中戦」とは 、二機がくねくねと旋回を繰り返しながら打ち合う(巴戦)というものではない。「よい空中戦」とは「なるべく早く敵を見つけて、そっと後から近づき銃撃を打ちかけて撃 墜する」というもの。戦闘は戦場であり、戦闘機に期待される役割は敵機を追い払ったり、やっつけたりすることで「手段は問われない」のだ。正々堂々と勝負することが目的ではない。戦場では、生き残ったものが偉いのだ。

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-見張り

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操作 確認事項・挙動・対処 注意・考慮点

(敵機を予測し)前後左右に視線を走らす
敵機発見に努める

遠くから来る敵機は見えないか
水平線のわずか上に付いた「糸くず」のように見えないか
敵機が(先に)後についていないか

敵が出てくる状況
・基地で待機していて空襲警報が発せられた時
・爆撃機を掩護して敵地奥深く進入するとき
・艦隊を守って上空掩護にいるとき
敵を発見しないと戦闘にならない
一刻でも早く敵を見つけ戦闘を有利に進める最も重要なファクタ


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-空中戦の基本

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(格闘戦に入ったら)急旋回で敵機を追う
ブラックアウトしても我慢して急旋回を続ける
直ぐにトリガを引かずに待つ
(急旋回を続けていると敵機が諦めた瞬間が狙い目で敵機が反対側に旋回しても、急降下に移るとしても一瞬だけ直線飛行に入る)瞬間にトリガを 引く
(照準器の真ん中に敵機をとらえても、多少でも旋回していると当たらないことがあるため)曳航弾で軌道を修正する

ブラックアウトに注意しているか
(注意しても起きるので耐える)

激しいG(荷重)により、血が足におりてしまい目の前が真っ暗になる
激しい旋回を続けていると速度が落ちても諦めずに急旋回を続ければブラックアウトから回復する
急旋回の最中に機銃を撃っても遠心力で弾は旋回の外側にそれて命中しない

機銃には何発に一発、銃弾の中に燐という燃焼剤を詰めて、光を発光しながら飛んでいく弾が混ざっている
曳航弾は昼間でもよく目立つ

敵機に気付かれないように攻撃しやすい場所に移動する
高度は敵より上空にとる

(相手が戦闘機なら)後上方が弱点
(相手が爆撃機なら)下から突き上げるような攻撃も有効
状況により有利な攻撃態勢をとっているか

先制発見ができれば、勝ったも同様

「太陽の中に隠れる」

太陽を背にして戦闘することを心掛けているか

敵機が対空レーダーを持っていない限り気付かれない、気付かれたとしても反撃できない


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-空中戦の準備作業

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操作 確認事項・挙動・対処 注意・考慮点

(開始と同時に)
(燃料タンク(増槽)を付けていたら)落下タンクの燃料コックを閉めてタンクを投下する

増槽は落下したか

増槽を付けたままでは戦闘の邪魔になる

安全装置を外し、機銃試射をする
四丁ある機銃の装填レバーを引いて、スロットルに付いた「機銃切り換えスイッチ(7.7m両、20m併用)トリガ(引き金)を「ちょん」と引く

二〇粍機銃は銃弾搭載数が少ないので節約しているか

初期型の二〇粍機銃は2秒から3秒で撃ち尽くしてしまう
7.7mm:発射速度は速いがすぐに速度が落ちる
20mm:発射速度は遅いがあまり減速しない

照準装置のスイッチを入れる

照準はとれたか

OPL光学照準器

AMCを作動させる
プロペラピット自動にする
フルスロットル

<空中戦に入っても敵が諦めない時>
操縦桿を強く引き付ける
旋回のさらに内側に食い込む
(この状態では機銃を発射すると、機銃弾はいったん、旋回の内側に飛び込んだ後、遠心力で外に流れるので)ちょうどその場所に敵機がいるように 旋回を調整する

五回も六回も急旋回を続けていると、次第に速度も高度も落ちていく。自然に旋回も緩やかになるが、<零戦より優れた旋回性能を持つ機はない>と肝に銘じること
経験がモノをいう
かなりの急旋回になるが他の機種では失速してしまうような状態でも零戦は心配なく、安心して敵機を追うこと

<上記でも勝負がつかない時>
(格闘線が続くと速度と高度を急速に失い、時には海面あるいは地面すれすれまで降りてきてしまう時は)一気に上昇する
低空を飛んでいる敵機に上空から銃弾を浴びせかける
(高度があるときは)急降下して逃げる
(高度が低い時は)撃墜する
戦闘中でも周囲の状況に目を配る

零戦は軽く、主翼面積の広い機体。旋回性能ばかりでなく、上昇においてもすば抜けている。特に高度4,000 メートル以下では第二次世界大戦の最高傑作と言われたP51ムスタングすら寄せつけられなかった
高度があるときは急降下して逃げる敵機を追いかけると機体構造の弱い零戦は空中分解をしてしまうが、十分に高度が低ければ相手はこれ以上降り られなくなり、逃げることができない
可能な限り先制発見、先制攻撃で仕留めるのが理想
零戦は高度4,000メートル以上では速度も上昇能力も他機にかなわないと気付いた連合軍は高高度から零戦に対して急降下攻撃を繰り返すようになり、格闘戦に応じないようになった

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-敵攻撃の回避

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操作 確認事項・挙動・対処 注意・考慮点

(敵機に追いかけられている場合)急旋回でかわす
「S字旋回」「8の字旋回」の旋回で狙いを逸らす
(敵の速度が十分に遅い場合)敵機の弱点である背後に食いつく
あるいは、横滑りさせ敵機をそらす
操縦桿を中立にしたまま右でも左でもラダーを踏み込む

右、左と連続しての切り換えしには敵パイロットがどんなに腕利きでも、操縦桿の操作に タイムラグが出てしまい、ぴったりとついてくることは出来ないし、射撃できない、出来たとしても当たらない

(上記の操作で敵機を交わして、敵が再攻撃をかけてきた場合)
敵機に「あとちょっとで落とせるかもしれない」と思わせておき、低空に誘い込む
敵機が急降下で脱出出来ないような状況に追い込んでしまい反撃する

低空では連合軍の性能は極端に低下する
すれすれの横滑りを繰り返して敵機を低空での格闘線に引きずり込むことができれば勝利は約束されたようなもの
「S字旋回」「横滑り」も勧められた戦法ではない


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-対爆撃機戦闘
戦闘機の重要な任務として「敵爆撃機の排除」がある。爆撃機と戦闘する時も戦闘機と戦闘する時と条件は同じ。先制発見、先制攻撃は非常に重要
爆撃機は大きな荷物(爆弾など)を積むため、どんな機種でも戦闘機より大型で、機種によっては「双発」(エンジンを2発積んでいる)であった り機体が大きいため遠くからでもよく目立つ。ほとんどの場合、相手よりも先に発見して先制攻撃を実施できる。しかも「空中で偶然遭遇」するのではなく、地上の監視所、 あるいはレーダーなどによって「敵機接近中」の報を受けてから発進する為ため、敵機がやってくる方向も大体見当がつく
連合軍は太平洋戦争の後期になるまで長距離戦闘機の開発が出来ず、その代わり連合軍爆撃機は単独で活動できるように多数の対空機銃、防御板を 持っていた。爆撃機は重い爆弾を持っているうえに、装甲板が充実しているため機体の重量がかさみ、結果的に戦闘機より鈍重で、速度も遅い機体がほとんど
エンジンを狙う理由:エンジン周りにはガソリンやオイルなどの細い配管が通っていて燃料に火をつけやすいため。主翼内の燃料タンクは防弾(ゴムで包まれた自働防漏機構付き)が優れており、少しの穴を開けたくらいでは燃えない。操縦部も厳重な装甲で守れられている。エンジンを狙う理由はここにある。ひとつのエンジンが止まれば、たとえ四発機といえども航行が非常に苦しくなる。二発も停止させられた敵機はまず生きては基地まで帰られないだろう
戦闘機対爆撃機では絶対に戦闘機が有利かというと、そうとも言い切れない。なぜなら、爆撃機は編隊を組んでやってくる。「一騎討ち」の場合は 戦闘機が有利。戦闘機に向けられる機銃も少ない。しかし、爆撃機が一〇機いれば一〇の機銃、あるいはそれ以上の機銃が自分の機に集中する。この激しい爆幕を突破しなけ ればならない

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行動 操作 確認事項・挙動・対処 注意・考慮点


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-(1)後ろ上方からの攻撃

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自機の位置を敵爆撃機の上空に移動し、そこから降下しながらエンジンを狙う
降下して一撃した後、上昇して反復攻撃をかける

もっとも楽な攻撃
反撃も激しいと覚悟すること


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-(2)後ろ下方からの攻撃
「上昇しながら爆撃機の下腹を狙う」方法

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静かに下から接近して斜め上方に機銃弾を撃ち上げる
(第一撃で敵爆撃機は傷つき、かつ動揺するため)攻撃を続行して撃墜する

反撃はないか。「相手に反撃方法はない」
やりたい放題か

爆撃機は後ろ上方機銃、あるいは地上を機銃掃射するために前方に機銃を持っているケー スが多く、後ろ下方に対空機銃を持っている機種は僅か。後方に向けることが出来る対空機銃がある機種もあるが、あくまで「後方」であって、「下方」視界は限られている
本攻撃は総合的に「安全ではあるが、不安定な攻撃方法」と言える。理由:上昇しながらの攻撃は速度が遅くなる。下手をすると、敵爆撃機におい ていかれる。照準も不安定になる。ふらついてしまう。多数機による反復攻撃も困難(上昇しながらでは速度も遅くなりがちで、次々と舞い上がるというのは難しいもの
この攻撃法は大戦中後期以降、海軍では「斜銃」、陸軍では「斜め銃」、ドイツでは「シュレーゲ・ムラージュ」がある。破壊力の大きい機銃であ ったため戦果を挙げている/TD>


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-(3)前方からの攻撃

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「敵機が見えた瞬間」に照準しトリガを引く
命中させるためには迅速な作業をする
命中したら、すぐに回避行動に入る
(自機と敵機はそのまま行けば空中衝突するため)即座に上昇旋回などの運動を行い、コースをずらす

爆撃機が接近してきた場合、もっとも素早い攻撃方法は「正面からの攻撃」
敵機が一直線にこちらにやってくるのだとしたら、こちらも「直線に突っ込んでいけばもっとも早く攻撃をしかける」ことができる。同時にこれほど破壊力の大きな攻撃方法もない。零戦の二〇ミリ機銃では破壊できないが、B29と是と線の相対速度1,000キロ分が上乗せされれば敵機の弱点である操縦席を一撃で破 壊できる
弱点その1:爆撃機は機銃掃射用の強力な前方攻撃の機銃、または固定銃を持っている場合もあるため、先制発見という点では小型で見つけにくい 点で有利だが、正面からの攻撃では反撃を受ける可能性があり、もし反撃を受けて銃弾を受けた場合は機体の被害は甚大となる
弱点その2:相対速度は1,000キロにもなるが猛烈な高速であるため、「敵機が見えた瞬間」に照準しトリガを引かないと間に合わない。命中さ せるためには迅速な作業が必要


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-戦闘時に大事なこと

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「敵に接近すること」
<空中戦の鉄則>「激突せんばかりに敵機に肉薄して機銃弾をたたき込む」

七.七機銃ミリでも二〇ミリでも近くから撃てばそれだけ威力が増す
命中率が上がる
二〇ミリ機銃の場合、左右主翼に取り付けられた機銃の銃弾が400メートル先で交差するようにセッティングされている(地上で整備員が飛行機の尾部を持ちあげて、400メートル先の標的を向くように調整する)
一方、機種上面にある七.七ミリ機銃は並行して直線で飛ぶようになっている。感覚は二三センチ。結果として零戦は400メートル先で全ての機 銃弾が交差するようにできているが400メートル先と言えばちょっとした長距離。
実際の空中戦は三〇秒から一分。長くてせいぜい二分で終わる


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第六章【トラブル対処】


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悪天候

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悪天候に対抗するためのベストな対策は「飛ばない」こと
しかし、作戦次第では天気が悪い日に飛ばなければならないこともあるし、飛行している間に天気が悪くなり、「帰ってきたら飛行場が見えなかっ た」ということもある


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雨は余り怖くない。視界は悪くなり風防を開くと雨粒が飛び込むが、よほど の豪雨でない限り普通に発進できる。着陸も「なんかいやだなあ」という程度ですむ


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霧は大敵。飛び立つには滑走路のセンターラインぐらい見えていればどうに か発進はできる。しかし、霧の中で編隊を組むことも出来ないし、接近してくるほかの機も見つけられない。ヘタをすると空中衝突する。何よりも困るのが着陸。滑走路が見 えないのでどうしようもない。
対処方法はケースに応じて適宜パイロットが判断しなければならない
一般的「代替飛行場に着陸」→通常、飛行前に決めておく
飛行機を操縦していると地上で考えていたことの四割分くらいしか頭が働かない。「飛行前の打合せ」でいろいろな事態を想定して、対処方法を考 える
「代替飛行場が見つからない、帰るべき場所がわからない場合」→雲の切れ目を見つけて雲の下に降りる。上空からはまっ白な霧に見えてもただの雲で地上はクリアであることも珍しくはない
注意することは必ず「切れ目」を探すこと。いきなり雲の中に飛び込むことは決してしてはならない。雲のすぐ下に山があるかもしれない。
「それでも飛行場が見つからない」→霧のないところか霧の薄いところを探して「不時着」する。飛行機を壊すことになるかもしれないが、墜落するよりはるかにまし。燃料が続く限りは安全を期すること


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飛行機は風に向かって離陸し、風に向かって着陸するのが原則。その方が地 面に対する速度が遅くでき、離陸、着陸ともに主脚に余分な負担をかけなくて済む。しかし、実際には風の吹く方向は刻々と変化し、強さも変わる。いつも滑走路に向かってまっすぐ吹いてくれるわけではない
風の方向が悪いときでも離陸はさほど難しくない。もし、右からの風が強ければ、操縦桿を右に傾けて飛び立つ。左右に蛇行するかもしれないが、ラダーで調整できる
難しいのは着陸。実際の着陸に移る前に風の向きを読まなければならない。風が吹いているときの着陸はまず、飛行場の上空で旋回し地上の吹き流 しの方向を確認し、どの滑走路を使うかを決める。単純な飛行場では滑走路は一本だが、一本の滑走路でも入り方は二通りある。
東西に走っている滑走路は東から入るか、西から入るかを決めなければならない。管制塔のある飛行場なら手旗信号か発光信号で進入方向の指示 がある
降りる場所を決めたら、一旦飛行場から離れ、高度を周回高度に落とし滑走路を左に見ながら飛ぶ。ほかに機がいなければ着陸するが、もし別の機 がいたらその機が滑走路からどくのを待って、二度左旋回したのち最終進入に入る。そして風の方向に合わせた操作をしながら着陸をする
風が左から吹いていれば左に機体を傾け、傾けながらラダーで飛行機をまっすぐ飛ぶように調整する。もし、横風があまり強すぎるようであれば着陸を諦めなければならない。代替飛行場を向かう
「滑走路を左に見ながら飛ぶ」場合でも風を読む必要がある。つまり、右から強い風が吹いていれば、飛行機は風に流され飛行場の真上を飛ぶこと になる。これでは他の機と衝突してしまうかもしれない。パイロットたる者は、風の方向には常に注意を払う


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雷雲

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飛行機に雷雲が近づいてきたり、空中で雷雲と出会ったら、絶対にその中を飛ばないこと。直ぐに逃げる(誰もあなたを避難しない)
怖いのは風で、風が一定方向に吹く「台風」であればまだいいが、雷雲による風は前後左右に常時方向を変える。上下に吹き付けている場合もある
飛行中、もし「後ろ」から風が吹いてきたら、高度を急激に失う。離陸直後、あるいは着陸寸前であればそのまま地面に叩きつけられてしまう。「上」から吹いてくる風も結果は同様
「正面」から強い風が吹いてきたら、零戦の制限速度を超えてしまうかもしれない。制限速度の超過は即、空中分解する
雷雲の発する突風は、現在の最新旅客機が最新設備の飛行場へ着陸する際にも事故を起こさせるくらい、強烈で予測がつかないもの。また雷雲の中 では強い風に加えて「雷」が待っている。飛行機は金属製なので、落雷を受けても電撃は飛行機の中を通過するだけだが、機体に穴を開けたり、主翼端を溶かしたりする。電気機器がやられる場合もある
雷雲が近づいてきたら、とにかく逃げること。天候の変化より零戦の方が速度は上なので、逃げることは充分可能


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「失速」と「錐揉み」
飛行機はプロペラを回して進み、それによって前からの強い風を受けると主翼が浮き上がるような力(揚力)を発して飛び上がる。速度が速ければ 早いほど揚力は強くなり、遅ければ揚力は弱くなる

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「失速」

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何らかの原因で、揚力がゼロないし機体を飛ばすだけの力が保てなくなった状態を「失速」と呼ぶ。失速はどのような姿勢でも、どんな速度でも起こる
ある程度の高度を飛んでいるときは失速は危険ではない。失速すると飛行機は高度を失い、どんどん降下する。すると坂道を転がり落ちる自動車が 速度を増すようにスピードが増して、結果として自動的に失速から回復する
危険なのは、離陸時、着陸時の地面に近い場所での失速で、地面に叩きつけられて事故に直結する
失速はよく起こり危険も伴う、パイロットは訓練の初期段階から高々度でわざと失速状態を作りだして対処方法を学ぶ。自分でわざと失速し、その後パワーを上げて軽く操縦桿を押し、失速から回復させるという動作を繰り返すことで、失速に慣れるようにした


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「錐揉み」

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失速の非常に極端な形として「錐揉み」がある。これは「主翼の右と左が違 う度合いで失速する現象」。つまり「錐のように機体はぐるぐると回りながら落下する」。失速したらすぐ錐揉みに入る機種もあるが、零戦の場合、かなり無理な操作をしな いと錐揉みには入らない。だからあまり錐揉みの対処は必要はない。零戦に限らず、設計のしっかりした飛行機では、パイロットが復帰操作をしなくても自動的に回復する。 「錐揉み」はパイロットにとって「恥」と考えられる失態で、唯一の例外として敵機に追いかけられてどうしても逃げられないような場合、わざと錐揉みに入れて逃げるとい う方法があるが、高度を失うのでやはり勧められた脱出方法ではない


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エンジンの異常過熱

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いわゆるオーバーヒート。零戦は「吸気温度計」と何種類もの温度計が取り 付けられている。零戦用のエンジン「栄」は開発段階でたびたび異常加熱をを起こし、燃料不良を起こしたために、このように複数の温度計が取り付けら れるようになった。「ほとんど」というのは、「長時間大出力運転を繰り返し」たり、「オイルが不足した場合」には温度計をみる必要がある。エンジンを酷使する状況というと、長時間の上昇や、長時間の戦闘が考えられる。普通の戦闘は一分たらずで終了する
排気音が高すぎる時、低すぎる時は混合比が不適切であることが多く、AMCを入れる。大抵はこれで解決する。解決しない場合は故障であり、引 き返して整備員に渡す
エンジン、あるいはオイル温度が高すぎる場合はカウルフラップ、オイルクーラーに入りこむ空気の量を調整するためそれらを開く。これらは可動式の「蓋」でこれらを開くとエンジンなどが冷えてくる。
もうひとつの方法が、「速度を上げる」こと。「速度が上がればエンジンが冷える」というのは意外かもしれないが、速度が上がればそれだけ「エンジンなどに当たる風の量が 増えて」冷える。水平飛行ではプロペラピッチを変えるのと同じ回転数で速度が得られる。エンジンを絞って降下するのも同じ効果がある。
一番怖いのが「オイル漏れ」で、オイルが漏れて減ってくるとオイルの温度が上がり、完全になくなるとエンジンが焼きついて止まってしまう。
これにはオイル系統が最初から故障している場合、あるいは戦闘でやられるケースがある。カウルフラップ、オイルクーラーフラップを開いて冷却する。


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エンジン停止

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「突然エンジンが止まってしまう故障」もある。原因は色々あるが、「飛行時間の計算を誤ってガソリンがなくなってしまう」、「燃料コックの操作ミス」、「電気系統のショート」など
状況の解決方法として「空中脱出する」とう方法があるが、もしそこが都市部の上空であれば、自分が助かっても飛行機は民家に落ちるかもしれない。たくさんの人に迷惑を かけることになるので、できればそれは避けよう。また、多くの零戦パイロットはパラシュートを積まずに出撃しため、そういう場合は空中脱出はそもそも選択肢としてなか った。
「不時着」「不時着水」するのが妥当。肝に銘じるのは「絶対あきらめない」事。戦場であれば「敵の陣地に体当たりして敵を道連れにする」とうのが手軽ではあるが、安易にその行動を起こしてはならない。
エンジンが停止し、再始動もできない状態の場合、グライダーのように滑空して、不時着あるいは不時着水しよう

(1)不時着
「不時着」を決断したらプロペラピッチを「高」にする。プロペラが大きく傾いて前から受ける風の量を減らす。エレベータトリムを調整して降下速度を一〇〇ノットに調整する。着陸速度とほぼ同じ。この速度が、エンジンが止まっても一番長い距離を飛べる。
次に不時着する場所を探す。
零戦はエンジンが停止した場合でも飛行高度の七倍から、八倍の距離を滑空できる。高度一〇〇〇メートルであれば、七〇〇〇メートル滑空出来る。かなりの長距離なのでその間にあたりを見回し着陸できそうな場所を探す
何もない平原や、道路が不時着場所として好適。畑や水田のような地面の柔らかいところではタイヤがとられてひっくりかえってしまうが、人家にぶつけるわけにはいかないので、緊急時は畑でも構わない。エンジン停止はいつでも起こりえる事態なので、都市部上空を飛ぶ時は常に不時着場を意識するよう心がける。
不時着には二〇〇メートルの距離が必要。機を壊しても構わない、あるいはやむを得ないは一〇〇メートルでも構わない。降りた瞬間にブレーキを一杯に踏めばつんのめり、 飛行機は壊れるが、周囲に被害は出ない。不時着を決めたら風を読む。飛行機はエンジンを止めてただ滑空しているだけであるため、自分の機がどちらに流されているかで風 の方向を知ることができる。あるいは野焼きの季節などであれば地面から煙が上がっているのでそれを利用する。
風の方向を読み、不時着点を決めたら、操縦桿を前に操作して普通の着陸と同じように着陸操作をを行う。脚は出ているか、フラップは下りているかを確認して、普通と同じように着陸する。但し、やり直し(着陸復航)はできないので一発勝負。冷静に慌てず、失敗しないように降ろしていく。
不時着したらスイッチ関係を全部切って、機体から離れる。火災を起こして爆発する恐れがある

(2)不時着水
海の上は、不時着水をする場所を探す必要はない。どこに降りても同じ。もし、味方の船が近くにいたらそのそばに不時着水する。着陸方法は基本的に不時着と同じ。違うの は「脚を収納したまま降りる」こと。脚を出したままでは、海水に脚を捕られてつんのめってしまう
不時着水は激しい衝撃を伴う。着水時、機体がきちんと三点着陸の姿勢を取っていれば、飛行機の尾翼部分が最初に水に触れる。それに引っ張られて主翼が失速し、更に速度 が落ちて行く。これが理想的な不時着水。それでも一〇〇キロ近い速度で水に突っ込むことに変わりはない。生身であれば確実に死ぬ速度であり、最新の注意をはらって操縦 をしよう
海に落ちても飛行機は一分程度は浮いていられる。主翼部分が浮き袋のような構造になっているため。機体が浮いている間に安全ベルトを外して、機外に脱出する。着水時の衝撃で気が遠くなることもある。失神でもしたら終わりなので、意識を失わないように気をしっかり持って飛行機から脱出する。
洋上飛行が前提であればライフジャケットを着る。ライフジャケット着水であればそのままでも浮かんでいられるが、木でも浮き輪でも、捕まる物があれば捕まって救出されるのを待つ。
洋上漂流でもっとも重要なのは「体力の温存」。陸地が見える時以外は余分な体力を使わない。体温を低下させないように動かずじっと待つ。自分から泳いで助けを求めようと考えてはいけない。海は広いし、機体から離れると捜索側でも探しにくくなる
後期の零戦であれば赤や茶色の染料が自動的に流れ出す。これを目印にして水上機や、駆逐艦が拾いに来てくれるのを待つ


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火災

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火災の原因はさまざまであるが、戦闘、電気系統の故障も火災の原因になる 。零戦には、自動消火付きの機種や、燃えている燃料を空中に放出してしまう機構もあるが、これでも火が消えない場合がある。空中脱出できるようであればすぐに行う。「パラシュートを積んでいない」「高度が低すぎて、パラシュートが開きそうにない」場合は空中脱出できない。出来るだけ短い時間で降下し不時着をする。大変危険な状態
急降下では速度がつきすぎて着水できない。そこでスロットルを絞り、一旦上昇して速度を一一〇ノットまで落とす。それからフラップを一杯に開き、脚を出す。そして急旋 回しながらの降下に入る。急旋回をすると飛行機は速度を失いながら高度も落ちる。速度計から目を離さず、絶対に一一〇ノットを超えないように注意する。フラップが壊れ てしまったら速度を落とすことが出来ないので着水出来ない。急旋回を続けながら風の方向を読み、不時着場を探す。適切な高度、速度に達したら、落ち着いて着陸操作を行 う。無事着水できたら、速やかに機体から離れる


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空中脱出法

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戦闘で機体が重度の損傷を受けたり、何らかの理由で「もう駄目だ」という事態になったら空中脱出を行う。「飛び出せばいい」訳ではない。仮にまっすぐ上に飛び出したとしたら、垂直尾翼にぶつかり、機体は車よりずっと速いスピードで飛んでいるので、手足の一本二本くらいならまだいいほうで、下手をすると胴体を真っ二つにされてしまう。
空中脱出を決意したら、まず速度を落とす。あまり速度が速すぎると、風防の外の風圧に負けて外に出られない。速度を落とす基本操作は「スロットを絞る」「機首を上げて高度を上げる」の二つだが、この場合両方の操作を行う。風防を開いたら機体の右側の胴体に張り付くようにして操縦席から離れ、空中に脱出する。機体は速度を落としていてもものすごいスピードで進んでいる。飛行眼鏡をかけていなければ、目そのものが風圧に押されて開けているのも難しい。充分動作に気をつけること
右側に脱出、というのはプロペラが回っているため、飛行機のプロペラは扇風機のようにぐるぐる回って風を後方に押し出している。まっすぐ後ろに吹き出されている訳ではない。プロペラは操縦席から見て反時計まわりに回っているため、風は胴体の右側では斜め上に吹いている。その状態で脱出すれば安全に空中に飛べる。(もし左に飛び出し たらどうなるか?⇒下手をすると吹き下ろされた風によって水平尾翼に叩きつけられてしまう)
空中に飛び出したらすぐに開傘索を引く。基本的に飛行機から脱出するとパラシュートは自動的に開くが、パラシュートの実地点検はほとんど行わない。自働的に開かない場合もあるので、開傘索は引いておく。無事地上に降りられたら、がんばって助けが来るまで生き延びる。降りた先が日本国内とは限らない。ジャングルや海である可能性もある


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高山病
(ハイポキシア)

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長時間高高度で飛ぶと、飛行機だけではなく人間も不調になる。いわゆる「 高山病」の症状。個人差が大きく、飛行高度二〇〇〇メートルぐらいで発病するケースもあるし、まったく平気なパイロットもいる
高山病の症状は多岐にわたり、頭痛、思考力の低下、眠気などが起こる。頭がぼーっとした状態では空中戦どころか、安定した飛行も望めない。
零戦は酸素マスクを積んでいるので、それを装着すれば解決する。零戦パイロットの高山病の原因のほとんどは「カッコつけて酸素マスクをつけなかった」というもの。伊達 もほどほどに!



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 『坂井三郎の零戦操縦 』よりピックアップ 
 【出陣(侵攻作戦)】

・指揮所(ピスト)前で”出陣式”を行い、さあ、’かかれ’の号令のもと。

 【事前点検】

・整備兵が機体の点検・暖機・試運転はするけれど、自分自身で、
・機体を一周
・タイヤの空気圧、尾輪のオレオ点検
・胴体の各点検窓カバーや燃料タンクの蓋の取り付けが大丈夫か?
・エンジンから著しいオイル漏れはないか?
・ピトー管、二〇ミリ機銃の覆いは外されているか?
 

【搭乗の手順】

・風防(キャノピー)はちゃんと閉まるか?
・チェックして、その後再び開けて乗り込む
・座席の高さ(上げ/下げ)の点検
・座席に腰を降ろしたら、クッションとなっている座席に収納してある落下傘本体と身体に装着した落下傘バンドを
 金具によって結合する(後方の見張りがおろそかになるため誰もしなかった模様)
・ライフジャケットを身につけた身体をがっちり固定する
・蛇の確認(三蛇)
 ①昇降蛇(エレベータ) ※上昇・降下
 ②方向蛇(ラダー) ※機首の向きを変える
 ③補助翼(エルロン) ※左右の翼の傾きをコントロール

【燃料系とAMC (オートミクチャーコントロール)】

・燃料のチェック
・燃料コックを「開」、メインタンクを翼内
・AMC(※注1)がフリーになっていること
 (※注1)AMCとは飛行中、高度に応じて排気温、筒温が最良になるよう飛行機の上昇、下降によって
     応じる大気圧の変化に自動的に感応して、気化器よりシリンダー供給れる混合気を調整する装置のこと)

【栄二一型エンジン始動】

・エナーシャ・スターター(プロペラ慣性軌道機)を使用
・’前離れ、スイッチオフ、エナーシャまわせ’
・’コンタクト’ メインスイッチを入れる。
・エナーシャとエンジン軸を直結するため、座席右前方の引手「エナーシャースターターレバー」をひく
・若干スロットル開く
・カウルプラップを全開
・操縦桿をいっぱいに引く(チョーク止めがあるため前につんのめるのを防止)

【動作計器の確認】

・ブースト計
・筒温計
・排気温計
・燃料圧力計
・エンジン油計
・油圧計
・作動油計(フラップや脚を動かす)
・照準器のOPL(九八式射爆照準器)点検
 →球切れ、点灯の確認
・機銃7.7mm(ななみりなな)の半装填
 →全装填は空中で行い試射する
・燃料コックを増槽に切替え、増槽から確実に燃料が上がるか確認(試運転は5~6分、緊急(迎撃)は1分以内
・燃料コックを翼内→増槽だと燃料の吸い上げが離陸の振動で不良になったり、増槽が落下するケースもある
・プロペラを低ピッチへ(最大馬力が離陸時に必要、高ピッチにすると離陸できない)

【離陸の手順】


















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・’チョーク払え’
 →整備兵に向かって操縦席から両手を左右に広げる
・キャノピーは全開
・座席位置をいっぱい上げる→視界確保
・ブレーキの利き具合を試す
・エンジンを一度ふかし、プラグの汚れをとって調子を確認してからエンジン全開→ブースト計を
 黒ブーストを示す最高出力の0目盛まで上げる
・当舵→右足で方向蛇踏棒(フットバー)を踏み込む(そうしないとプロペラトルクと風圧で機体が左に向かおうとする)
・失速速度(約100キロ)になる前にじょじょに操縦桿を元に戻す
・脚を引き込む(プロペラの気流の関係で右脚が早く収納される(希に逆もある))
・表示盤が青→赤を確認
・両翼上の脚位置表示板が沈み込むことを確認
・脚把柄を中正に戻す(互いの僚機の収納も確認)
・座席位置を下げ→照準器と目の高さを合わせる
・キャノピー閉じる
・ゴーグルずらす
・記録板に離陸時刻を記入
・高度200メートルで燃料コックを増槽に切替(燃料の節約)
・巡航状態で7.7ミリ機銃の試射



補足説明
(※注1) 「プロペラピッチ」 スロットルを変えてもプロペラの回転速度は一定になるように設計されている「恒速プロペラ」がある
プロペラピッチ変更レバーは23度~51度まで可変ピットが可能(従来の固定ピッチペラ装備の航空機より大幅に航続距離を伸ばすことが可能と なった
離陸の場合は特にパワーが必要なため、プロペラピッチを「低」に設定する
(※注2) 「混合比レバー」  <MC:ミクスチュア・コントロール、A.C.:エア・コントロール、呼び方はどちらでもよい>
→エンジンは吸い込む空気の中に燃料を吹き込んでエンジンを回すが、あまり高い高度(空気が薄い)では燃料が余るようになる
そこで吹き込む燃料を減らして混合比を薄める
同時にブーストを上げてパワーを確保する。混合比レバーは高度が変化するたびに調整して、最良の燃焼効率を得る必要がある
零戦には混合レバーとは別にA.M.C.(オートマチック・ミクスチュア・コントロール)レバーを入れておけば、自動的に混合比を調整してく れる




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