日本陸海軍機大百科、『零式艦上戦闘機五二型』[A6M5] 2011
8/25
木曜日

 シリーズ第三九弾は、米軍新型機に対抗すべく登場した海軍の『零戦』五二型を紹介しましょう。発動機を栄「二一型」(1,130hp)に換装し、主翼幅を短縮するなどの改良を加えた、いわゆる「二号型零戦」(のちの三二型)は、海軍と三菱技術陣にとっては、太平洋戦争に即した理想の新型になるはずだった。しかし、現実にはその三二/二二型をもってしても、アメリカ軍の新型軍用機を相手に力不足の感は否めなかったのであった。そこで、発動機はそのままに、排気管の推力式単排気化、カウリング、主翼のさらなる空力的洗練など、涙ぐましい再改良を加えて登場したのが五二型だった。


■改良のポイント
 ・正面空気抵抗源の多くを占めるカウリングの再設計
 ・前面開口部の上方に位置する気化器空気取り入れ口の形状を丸みの強い形状に改良
 ・排気ガスのロケット効果向上のため、集合排気管に代わり、各シリンダーからの排気ガスを
  そのまま後方に導き、推進力に利用する「推力式単排気管」化
 ・カウルフラップの後縁に切り欠きを細工
 ・排気ガスの高温により外板が破傷するのを予防するため、外板(発動機補器類覆)の表面に耐熱板の貼り付け
 ・主翼端を11メートルに短縮
 ・フラップ幅を主翼骨組みの小骨1区画分(20cm)延長し、面積増加による揚力維持
 ・発動機周りの消火装置を廃止し、代わりに主翼内燃料タンクの周囲に自動消火器装置の設置
 ・無線機を新型の三式空一号に更新

■効果の程は?
 最高速度は二二型に比べて約25km/h優速の565km/h(高度6,ooom)となり、零戦の弱点とされていきた急降下制限速度が666km/hまで引き上げられた。反面、主翼面積の減少と重量増加(二二型に比べて約50kg)により、水平面の旋回性能、航続力は低下した。

 次回は、実践で使用されなかった陸軍の対艦攻撃用小型特殊攻撃機『剣』を紹介します。

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