日本陸海軍機大百科、三式戦闘機『飛燕』一型丁 2010
8/12
木曜日

 シリーズ第二三弾は、陸軍の三式戦闘機『飛燕(ひえん)』一型丁だ。シリーズ五弾で同じく『飛燕』一型甲を紹介している。今回は戦訓に応じた武装強化型として戦争後期に就役した一型乙~丙、丁を紹介しよう。

 陸軍航空上層部の絶大な機体をうけて,三式戦は昭和18(1943)年7月からニューギニア島戦線にて本格的な実践活動を開始した。しかし、性能はともかくとして、最初の生産型一型甲[キ61-Ⅰ甲]の7.7mm機銃2挺、12.7mm機関砲2門の射撃兵装は、防弾装備の強固なアメリカ軍機に対してはいかにも火力不足だった。そのため、一型には射撃兵装の強化を中心とした改良が矢継ぎ早に実施され、1年も経たぬ間に一型乙、丙、丁の3型式が生産ラインにのる目まぐるしさで、現場の要望に応えた。

■三式戦闘機一型乙[キ61-Ⅰ乙]
※一型甲に対する変更点
・翼内武装をホ一〇三 12.7mm機関砲に換装
・胴体内第三燃料タンクを廃止
・砲クリア・バルジの位置、大きさを変更
・生産工程簡素化のため尾脚を固定

■三式戦闘機一型丙[キ61-Ⅰ丙]
※一型乙に対する変更点
・翼内武装をマウザー20mm機関砲に換装
(マウザー砲は電気式装填/発射式を採用しているため、圧搾空気、もしくは油圧装置のための設計変更を行う必要がなかったため、機体の改修事項は最小限で済んだ)
・砲クリア・バルジが大型化

■三式戦闘機一型丁[キ61-Ⅰ丁]
※一型乙、丙に対する変更点
・機首上部武装をホ5 20mm機関砲に換装(翼内武装はホ一〇三のまま)
・胴体内第三燃料タンク復活
・翼端灯の形状変更
・重心位置修正のため胴体第1~2円框間を200mm延長
・棒状バルジ設置

パソコンのモニターの前で撮影

川崎 陸軍戦闘機『飛燕』一型丁

■マウザー20mm機関砲(MG151/20)
 これはドイツ製MG151/20を緊急輸入したもの。(ちなみに海軍、零戦の20mm機銃はスイス・エリコン社のFF型20mm機関砲を国産化したもの) 昭和17(1942)年11月28日、在独武官を通じてMG151/20を2,000挺、同弾薬包100万発の購買契約が交わされ、同月から毎月300挺、15万発が船便にて発送されることになった。陸軍はこのMG151/20を、社名のモーゼル(Mauser)を英語読みした「マウザー20mm砲」と呼称した。しかし戦局の悪化にともない潜水艦輸送に切り替えたものの、既に制海権が連合軍に掌握されたことで輸入数は契約数の半分にも満たない800挺、弾薬40万発にとどまった。

■20mm砲「ホ五」の自前調達
 陸軍は数に限りがあるMG151/20にいつまでも頼るわけにはいかず、ホ一〇三(12.7mm)の口径2を20mmに拡大した「ホ五」の実用化を図った。既に昭和15年、民間の中央興業に命じて非公式試作を進めていた。陸軍参謀総長、杉山元帥の異例の訓辞で実用化を強硬に進め、昭和19年1月から一型丁に換装されていった。

 戦果は一向に改善の兆しがない液冷発動機の不調や、操縦者技量の低下、アメリカ軍機との圧倒的兵力差など悪条件が災いして、期待に応える実績を残せないままに終わった。

 次回は『九七式重爆二型』をお楽しみに。(2010/08/12 22:52)

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