『零戦32型(A6M3)』 名古屋航空宇宙館
2002年12月30日
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 この修復された零式艦上戦闘機32型は、昭和54年にマーシャル群島のタロア島で発見されたものから回収されたもので、名古屋航空ビル内の航空宇宙館に置かれています。タロラから出撃していた際の第525航空隊の隊員マーキング、「Y2−128]を付けています。

 名古屋空港 航空宇宙館

※32型の特徴

  1. 翼端を50cmずつ切り詰めた。⇒ロール性能向上。
  2. 高空性能は向上したが、継続力が減少。
  3. 栄エンジンを21に換装。
  4. それに伴いカウリングの形状が変更。
  5. 20mm機銃を100発ドラム弾庫を装備。
  6. アメリカの連合軍はコードネーム「ハンプ(HAMP)」と命名

 太平洋戦争に於ける、日本軍の最東南端占領域となったギルバート諸島、およびマーシャル群島は東京から4,000Kmも離れた南太平洋上に浮かぶ。こんな遠隔地の小さな島々が、日・米両軍にとっては戦略上の重要な拠点となり、血で血を洗う攻防戦が繰り広げられた。

 マーシャル群島のひとつタロア島は、飛行機を有する主要な拠点だったので、752空の零戦隊などが進出して米海軍艦船に対する攻撃、防空任務にあたった。しかし、1944年1月30日米艦船群の徹底的な艦砲射撃によって、所在の海軍機はほとんど破壊され、残骸はそのまま放置された。

 1978年、アメリカの輸送船の船長がジャングルに埋もれたこれらの残骸を発見したことから、日・米航空関係者が逐次同島に赴き、程度の良好な機体を運び出した。零戦は各型系15機分の部品があったとされ、そのうちの三二型、機番号"Y2-128"が、福岡所在の航空宇宙団体の手によって回収され、1984年6月から85年1月末にかけて復元され、新しく建設された名古屋国際航空ビル内の航空宇宙館に展示された。

 生産数の少なさもあって、現存するA6M3系は、この三二型と、ニュージーランドの二二型だけであり、貴重な存在。

 救いは、A6M5系と似ているが微妙にディーテールの異なるカウリングが、比較的原型をとどめていて、気化器空気取入口の五二型以降との相違を明確にできるのでが有難い。

 プロペラはオリジナルだが、スピナー前半は複製品のため先端が丸過ぎてイメージを損ねている。
(出典:『エアロ・ディーテイル7 三菱零式艦上戦闘機』出版:株式会社大日本絵画(1993.5) )

【A6M232さんから情報提供(2009.4.2)】 http://www10.ocn.ne.jp/~a6m232/
・主翼はほぼオリジナルで構成されています。当方何回かあの32型では検証させていただいている関係上知りえた情報です。
・外翼(機銃横の切断部から)は32型のオリジナルで、特に翼端は確実にオリジナルで在ることを外形・溶接痕・翼端灯基部・三菱固有の刻印等にて確認しています。胴体含めて外形はあのような状態ですが予算上の為であり、特筆すべき点はオリジナル外板の上からアルミ板を張るもしくはFRP**での修復をされていることです。(FRP**処置は以前の所有者)* ですからその下にはオリジナルの外板が腐食部以外は殆ど残っている状態です。オリジナル状態で言えば科博の複座改造21型にも匹敵するほどの内部状況を保っている貴重な機体なのです。
 


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