『カラマーゾフの兄弟(全五巻)』ドストエフスキー(著) 2024
5/23
木曜日

原書は、The Brothers Karamazov, Fyodor Dostoevsky

【第一巻】
まだ一巻目。感想は追々で

【第二巻】
イワンがアリョーシャに語ったこと、私小説の朗読(プロとコントラ)、ゾシマ長老の手記による諭し(ロシアの修道僧)は読み応え十分、歯応えを感じた。ここだけでも価値あり。日常の会話では誰しも「ここだけの話、是非、秘密で」は登場人物の誰しも守ることができない。あれは宣伝してねと言っているようなもの。でないと話に粘りがでないからか。正教キリスト、一般に宗教観に希薄な日本人からすると無神論者はあるにせよ、なぜにここまで宗教に神に救いや赦しを委ねるのか、僕はすべては自分自身に巣食っているブレない規律や理念と考えている。

【第三巻】
ミーチャもグルーシェニカの支離滅裂さ、心変わは乱気流の如し。これは劇場で演目にフィットするのでは。激情型、オーバーアクション、エトセトラ。本作品が1870年前後とすると日本は幕末から維新で激動の最中であった頃。予備審査(第9編)はすべて近代的斬新的に映る。ただしこのような予審がされたのは一握りではなかったのだろうか。相変わらず百姓の方は人間に非ずの扱われ方で、著者自身も特権階級意識が鼻につく。お百姓さんから作家になる人は少ないし読み手も識字率が低い下層階級ではなく上流階級限定なんだろうと想像する。

【第四巻】
第四部。構想と練り込みは見事だろう。しかし、個人主観としてミーチャ、イワン、グルーシェニカ、カテリーナに全く感情移入、同情すること叶わず。なんだこいつらとなってしまう。法廷の裁き(捌き)は作者自身も傍聴者の立場をとりメリハリと濃淡がくっきりしてよい。この時代の検事・弁護士、傍聴人の個性が余すことなく表現されているのではないか。文章としては訳者の方含めて上手だが、まったく「空騒ぎ」で「お騒がせ」ではないか。

【第五巻】
第五冊目はエピローグとして若くして病死したイリーシャの出来事でアリーシャが爽やかに未来に向けた提言をもちクロージングとなっており、今までのクドクドしい人間模様を多少なりとも後味をよろしくしてくれたように感じた。200ページ強が解説に割かれておりロシアとは、ドストエフスキーとはが中心で、まだ読み始めたところ。ドストエフスキーもミーチャも浪費家で父殺しをモチーフ、兄弟に絡めたところは若い時分からの構想があり本書に繋がったのだろうと理解した。世界に冠たる作家だが、偏屈なんだろうと思うよ。

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