【上巻】とある一室の和泉守(小四郎)と小池越中守(大番頭)。ある事柄の駆け引きの最中。外ではツクツクボウシ(寒?)が忙しい。大番頭の喉まで突き上げた想念。「つくづく欲しい」と。暫し破顔一笑。浅田氏はこんなダジャレも書くのだ。全般に笑いのツボが地雷の如くあちらこちらに埋め込まれていて、決して誰も避けては通れぬ。いいのじゃないか。
【下巻】奇想奇天烈で、支離滅裂までは発散していないけれども、登場人物の全員が善の心を持ち、後味のよい小説といえる。皆が一つの目標に損得・駆け引きなく協力する。このゴールに向けて先導するのが足軽から御殿様になった小四郎なのだが、その魅力とは何か。書くまでもなく一読されれば納得するだろう。リーダーシップ的というより、その人の魅力、オーラではないか。この魅力を育んだのは両親、友に恵まれることが最大の要因ではないか。育児の効能と大切さが身につまされる。
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