流人道中記(上下巻)浅田 次郎(著) 2020
3/29
日曜日

【上巻】浅田次郎氏の作品はそこそこ読ませていただいている。読売新聞連載の単行化ということもあり、話のメリハリや、反復した語り(解説)となっていて、読み手を意識した小説である。上巻を読み終え、一人として悪人が出てこない。読者(僕の場合は)として全くストレスはないに等しい。心地よい。下巻では玄蕃が何者で何して破廉恥罪となったのか、乙次郎の道中を通じての彼の成長、兄弟や家族との融和が語られるのは自明の理といえるだろう。

【下巻】如何せん、ハッピーエンドとなってほしくてもそうならないのが「常」であって、玄蕃が問う「武士の世は」理不尽で、階級的で、時には威圧的で、戦国の世から役目はがらりと変わっていながら、大方の人が気づいても気づかぬふりをする。世襲やシキタリにガンジガラメ。憤懣やるかたない「武士の世」に一計を投じた玄蕃の生きざまが庶民的であり、男気がある。面倒みよく、ほうってはおけないお節介者、それと身分とのギャップがよい風味を醸し出しているのではないか。いい小説でしたね。

登録情報
単行本: 371ページ
出版社: 中央公論新社 (2020/3/6)
言語: 日本語
ISBN-10: 4120052621
ISBN-13: 978-4120052620
発売日: 2020/3/6
登録情報
単行本: 294ページ
出版社: 中央公論新社 (2020/3/6)
言語: 日本語
ISBN-10: 412005263X
ISBN-13: 978-4120052637
発売日: 2020/3/6

内容紹介
上巻:読売新聞連載で感動の声、続出。累計100万部突破「笑い」の『一路』に続く、「涙」の道中物語。

万延元年(1860年)。姦通の罪を犯したという旗本・青山玄蕃に、奉行所は青山家の所領安堵と引き替えに切腹を言い渡す。
だがこの男の答えは一つ。
「痛えからいやだ」。
玄蕃には蝦夷松前藩への流罪判決が下り、押送人に選ばれた一九歳の見習与力・石川乙次郎とともに、奥州街道を北へと歩む。
口も態度も悪いろくでなしの玄蕃だが、道中で行き会う抜き差しならぬ事情を抱えた人々は、その優しさに満ちた機転に救われてゆく。この男、一体何者なのか。そして男が犯した本当の罪とは?
下巻:この男、仏か、罪人か。
奥州街道の終点、三厩へ向かい北へと歩む罪人・青山玄蕃と、押送人・石川乙次郎。
道中の宿場で、二人は抜き差しならぬ事情を抱えた人々と行き会う。
親の仇を探し旅をする男、無実の罪を被る少年、病を抱え宿村送りとなる女……。
彼らを救わんとする玄蕃の行動に触れるにつれ、乙次郎の武士としての心は揺らいでいく。
やがて明らかになる、玄蕃の抱えた罪の真実。
小説でしか味わうことのできない、感動の結末が訪れる。







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