『失われた時を求めて(3)花咲く乙女たちのかげにI』プルースト(著) 2019
8/8
木曜日

原書は、Remembrance of Things Past, Marcel Proust


(1)本書を読んでみたいと思ったのは、デンゼル・ワシントン主演のイコライザー2で読まれていたから。ガーディアン1000必読でもある。しかし、超大、空前絶後の14巻(400字原稿用紙で一万枚近く)、難解、登場人物多、読み終えた人は読書人口全体の一握り、本書を読み解くための解説書まで出版されている有様。読み終えた人は武勇伝として語ることが許されるともいう。原書では第一篇から第七篇とあり、訳本は14巻に分割されている。さて、ここに最終巻(第十四巻)まで読み遂げることを宣誓したい。味覚や嗅覚、五感に誘発され「無意識的記憶現象」の世界に誘って貰い、ズブズブと心身を浸しきることができるか、または飽き飽きしてさっさと脱落するか、だ。
プルーストにかかると、アスパラガスの表現もこのようになる。(p269参照) 下敷きとなった書籍があるようだが、ここは絶品でしょう。


(2)まだまだ長丁場。芸術・美術・演劇の登場も多く、プルーストの博学さが解る。しかし、僕はスワン、オデットもキャラクター的には波長が合いません。時代も時代だけれども、プルーストは、出来事や心情の表現をひっぱるひっぱるから、さすがなのか、クドイのか、どうしたものか?


(3)三巻にきてはや難所、大きな壁が僕の前に立ちはだかってきた。真率申し上げるとおもしろくないのである。パンシロンGをご飯にふりかけて食べているようなものである。それもお茶なしで。プルースト研究家で訳者、吉川和義氏が文末で述べているが『プルーストの小説において枢要となるのが「筋立て」ではなく、「精神」のドラマであることを雄弁に示している』氏の訳には注釈文や図が豊富に挿入されており、読者へ更なる興味の誘導と理解を深めるための役割を果たしてはいる。本巻は文化(服装、美術、建築、ブルジョア階級の風習)を学ぶ観点で読み終えた。主な話のひとつとして、私(主人公)のジルベルトへの想いは女々しく自身の自尊心に呪縛され、ほんとうの恋でも愛でもない。仕事のないブルジョア青年の暇つぶしでしかないじゃないか。いい加減にしなさい。


英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1,000冊   家族・私小説:119/1,000作品中

失われた時を求めて(1)――スワン家のほうへI (岩波文庫) 登録情報
文庫: 528ページ
出版社: 岩波書店 (2010/11/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003751094
ISBN-13: 978-4003751091
発売日: 2010/11/17
失われた時を求めて(2)――スワン家のほうへII (岩波文庫) 登録情報
文庫: 555ページ
出版社: 岩波書店 (2011/5/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003751116
ISBN-13: 978-4003751114
発売日: 2011/5/18
失われた時を求めて(3)――花咲く乙女たちのかげにI (岩波文庫) 登録情報
文庫: 498ページ
出版社: 岩波書店 (2011/11/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003751124
ISBN-13: 978-4003751121
発売日: 2011/11/17

内容紹介
(1)ひとかけらのマドレーヌを口にしたとたん襲われる戦慄。「この歓びは、どこからやって来たのだろう?」 日本の水中花のように芯ひらく想い出――サンザシの香り、鐘の音、コンブレーでの幼い日々。プルースト研究で仏アカデミー学術大賞受賞の第一人者が精確清新な訳文でいざなう、重層する世界の深み。当時の図版を多数収録。(全14冊)

(2)株式仲買人の出身ながら社交界の寵児スワンは、ある日友人に最下層の粋筋(ココット)オデット・ド・クレシーを紹介される。追う女、追われる男の立場はいつしか逆転し、初老の男は年下の恋人への猜疑と嫌悪に悶える(スワンの恋)。二人の結婚からジルベルトが誕生し、幼い「私」はシャンゼリゼで出会ったこの美少女に夢中になる(土地の名―名)。好評の吉川プルースト第2巻。(全14冊)

(3)少年の目に映るパリの社交風俗を描く、第二編第一部「スワン夫人をめぐって」。オデットとの結婚によって上流階級との交際を断ったスワン。夫妻の娘ジルベルトへの想いを募らせ、スワン家のサロンの信奉者となる私。ある日、夫人のお供をした昼食会で憧れの作家ベルゴットと同席する栄に浴するも、初恋は翳りを帯び……。







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