『誰がために鐘は鳴る(上下巻)』アーネスト・ヘミングウェイ(著) 2019
5/27
月曜日

原書は、For Whom the Bell Tolls, Ernest Hemingway(1940)。

上巻:ヘミング3作目。文中「たとえ七十時間でも、七十年に匹敵する充実した人生を生き切ることは可能だと思う」とジョーダンが思考するが、戦中の無法と略奪と殺人と緊張と弛緩が分単位・時間単位めまぐるしく入り交じる非日常が、平時の何百・何千倍と濃縮・凝縮されているとしたのなら、あながち短時間で人生を[生き切る]というのも[あり]なのかもしれない。「七十年の人生と七十時間と交換しますか?」と問われれば、あなたは交換しますか、しませんか? 僕は怯え震えながら[毎日を大切に生きたい。だから交換はしない]と答えるのでしょうね。

下巻:既読作品では一番まともな感じ。スペインの内戦、共和国側VS国民戦線側、本書の主な人物が属する共和国側も雑多な寄せ集めでしかない。そして四日間のお話。登場人物、個々の個性が冴えている。主人公ジョーダンの心の揺れ、心変わりがじれったい。彼らが絶命頻度の確率が高まる中、ヒロインのマリア、平時ならただの青い小娘にさえクラクラと人生を共に生きようとしてしまう。人として安定志向、安全な場所、つまりラマーズの「安全の要求」を念探して止まない。ヘミングウェイは生涯、経験則・類似的体験でしか小説を書けなかったと聞いたことがある。それはそれでいいけれど、創作的なことは乏しかったのだろうか。どうでもいいけれど、僕には。

英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1,000冊   戦争旅行記:116/1,000作品中

登録情報
文庫: 460ページ
出版社: 新潮社 (2018/2/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4102100164
ISBN-13: 978-4102100165
発売日: 2018/2/28
登録情報
文庫: 517ページ
出版社: 新潮社 (2018/2/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4102100172
ISBN-13: 978-4102100172
発売日: 2018/2/28

内容紹介
上巻:1930年代後半、スペイン内戦。共和国側の義勇兵であるアメリカ人ジョーダンは、山峡の橋の爆破を命ぜられる。協力するゲリラ隊には、腹の読めないパブロ、女傑ピラール、そして敵側に両親を殺された娘、マリアらがいた。無垢なマリアと恋に落ちたジョーダンだが、死を賭した作戦決行が数日後に迫っていた。内戦取材を元に、激動する運命と愛を生々しく描き切る、ヘミングウェイ畢生の大作。

下巻:マリアとの愛とゲリラ隊の面々への理解を深めていくジョーダンは、華やかで享楽的なマドリードにマリアを伴う未来を夢想する。だが、仲間のゲリラ隊がファシスト側との凄絶な闘いを経て全滅し、戦況は悪化。ジョーダンは果たして橋梁爆破の任務を遂行することができるのか──。スペインを愛し、その過酷な現実を直視したヘミングウェイが書き上げた、戦争の意味と人間の本質を問う渾身の傑作。







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