『ふたりの証拠』アゴタ・クリストフ(著) 2019
5/13
月曜日

原書は、LA PREUVE by Agota Kristof(1988/フランス)
悪童日記に比し、ばくっと小説的。何故か泥沼に足を掬われた感が否めない。混沌・飄々。感情表現を一切排除し比喩表現もなく、全編の文体としては最大級に淡泊なトーンで戦慄を煽る。主人公リュカの生き様が彼の子供時代の境遇の発展系と考えても(著者の経験も踏まえた箇所もあるらしいが)、何かしら空寒く、人間味がある部分欠落してしまって埋めようがない。律儀で正直なピースと阿漕なピースがパズルで言えば、僕の中では組み合わせることができない。まあいえば二重人格的。双子のクラウスは空想で実存しないのではないかと疑ってみたり。

登録情報
単行本: 238ページ
出版社: 早川書房 (1991/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4152077298
ISBN-13: 978-4152077295
発売日: 1991/11

内容(「BOOK」データベースより)
戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
クリストフ,アゴタ
1935年ハンガリー生まれ。1956年のハンガリー動乱の折りに西側に亡命して以来、スイスのヌーシャテル市に在住している。1986年にパリのスイユ社から世に送り出したフランス語の処女小説の『悪童日記』によって一躍脚光を浴びた

堀/茂樹
1952年生、フランス文学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)




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