『ケリー・ギャングの真実の歴史』ピーター・ケアリー(著) 2019
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日曜日

原書は、True History of the Ned Kelly Gang, Peter Carey(2003)。

骨太な骨格でずしりと大地に根を下ろしたかのピカレスク小説だった。正直者で心根優しく母親、兄弟を助け、自分の農地で牧場や農園を営むことさえできていればネッドがこのような事件も無法者としてのレッテルを貼られることはなかった。アイルランド移民のオーストラリアでの虐げられた時代だった。日本では江戸末期から明治初期にかけてのこと。そしてネッド・ケリーは死んで伝説となった。読後感が何とも言えず悲しい。

※ウィッキペディアに掲載されているが、彼らの鋼鉄の甲冑も美術館に保存されていて興味深い。

英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1,000冊   犯罪系:112/1,000作品中

登録情報
単行本: 526ページ
出版社: 早川書房 (2003/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4152085231
ISBN-13: 978-4152085238
発売日: 2003/10

内容紹介
19世紀、オーストラリア。貧しいアイルランド移民の子ネッド・ケリーは、幼いころから獄中の父にかわり、母と6人の姉弟妹を支えてきた。父の死後、母はネッドを山賊ハリー・パワーに託す。だがそのせいで、ネッドはわずか15歳で馬泥棒の共犯容疑で逮捕されることになった。
出所したネッドは、美しい娘メアリーと出会い恋に落ちるが、ようやくつかんだ幸せも長くは続かない。横暴な警察は、難癖をつけてはネッドや家族を投獄しようとしてくる。いまや、ネッドと弟のダン、二人の仲間たち“ケリー・ギャング”は、国中にその名を轟かすおたずね者となっていた。あまりの理不尽さに、遂にネッドは仲間と共に立ち上がるが……。
死後百年を超えてなお人々を魅了しつづける実在のヒーローの真実の姿を、彼がまだ見ぬ娘へ綴った手紙を通して描く感動作。

ピカレスク小説社会の下層に位置する主人公が、一人称で自己の遍歴や冒険を物語る小説形式。挿話を重ねていく構造を持ち、時間、空間がパノラマ式に変転していくのが特徴。ピカレスクとは、「悪党」「ごろつき」の意のスペイン語ピカロ(picaro)より。最初のピカレスク小説は、作者不明の『ラサリリョ・デ・トルメスの生涯』(1554年)であるとされる。ピカレスク小説はまず、トマス・ナッシュ『不運な旅人』(1594年)によってイギリスに導入され、以後、16世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパ全土に広がり、ドイツのグリンメルスハウゼン『阿呆物語』(1669年)、フランスのアラン・ルネ・ルサージュ『ジル・ブラース物語』(1715?35年)、イギリスのダニエル・デフォー『モル・フランダーズ』(1722年)などを生んだ。19世紀以降、ピカレスク小説は、ことにアメリカ小説の構成原理として有効に働き、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』(1885年)から、J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(1951年)まで、数々の秀作を世に送った。日本において、ピカレスク小説がおおむね大衆文学の領域にとどまっているのは、日本人がヒーローに求める条件たる倫理や知性が、そもそもピカロの持ち合わせぬものであるからなのだろう。
(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年),出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について
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