『西欧人の眼に』コンラッド(著) 2019
4/3
水曜日

原書は、UNDER WESTERN EYES(1911)。

【上巻】コンラッド、三作品目。政治小説。20世紀初頭のロシア、圧政政治、物言えぬ庶民、何の希望も未来もないVS革命を興そうとする人。まぁ、暗い。しかし待てよ、自分がそのような境遇の中で生を受け、育ってきたとしたら、当たらぬ神に祟りなし、な人生をさめざめと諦め境地で送ったのか、はたまた、身を挺して革命の銃弾として飛び出しただろうか。わからない。答えられない。誰でも自分を軸として経験をベースにして相対的に比較するのが大体のところだから、僕にはロシアを比較する軸にするだけの度量がない、ってところでしょうか。

【下巻】文末にコンラッドがロシアの政治状況より心理状況を描きたい、と。抑圧され搾取され汗まみれ、泥まみれで一縷の希望を持つことも、持とうとも考えることなく多くの庶民は奴隷同様の人生が決まっているも同然だった。ラズーモフは私生児で身寄りなく「ロシア大地の子」と信じることで尊厳を維持し続けたのだが。何かおかしいよね。このような世界の中で育つと「革命」が反乱分子ではなく、熱望していくこと、その中では暴力や殺人も正当化されるのか、そうではないだろう。平和ボケ社会で育った僕には評価する資格はないのかもしれない。

英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1,000冊   犯罪系:110/1,000作品中

登録情報
文庫: 335ページ
出版社: 岩波書店 (1998/12/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003224841
ISBN-13: 978-4003224847
発売日: 1998/12/16
登録情報
文庫: 339ページ
出版社: 岩波書店 (1999/1/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 400322485X
ISBN-13: 978-4003224854
発売日: 1999/1/18
内容紹介
上巻:親もきょうだいもない孤独の身の上の大学生ラズーモフは,何とか自力で身を立てようと勉学に励んでいた.ある日下宿に帰った彼は,思いも寄らない事態に巻き込まれたことを知って驚愕する.恐怖,絶望,苦悩,怒り,そして裏切り-圧制下のロシアと国際都市ジュネーヴを舞台に,西欧人には不可解な「ロシアの心」を垣間見る.

下巻:ひと癖ありげな革命家たちに,英雄的行為の実行者として迎えられ,猜疑と不安に襲われるラズーモフ.だが,やっと身の安全を確信できるようになったその時,愛の光が彼の心を射抜き,偽りの人生を拒絶させる.「おれには,ハルディンを振り払うことなぞできないんだ」.煩悶のすえ,彼はある決意を胸に下宿からとび出した…



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