『密偵』ジョセフ・コンラッド(著) 2018
11/21
水曜日

原書は、The Secret Agent, Joseph Conradl(1907)。コンラッド初読。情景描写と心理表現が一級品ではないだろうか。ビロードのように手触りよく、刃物のように切れ味鋭くと表裏一体、光と陰の両面をデュアルに兼ね備えている。ストーリーは不思議な奇跡を描きつつ、終局は権力者は生き残るという図式。幾ばくかの終焉の後味の悪さが滓として貯まる。登場人物は多くはないが、警部補、警視監が人情的な側面を垣間見せ、僕はこの両人が本書にいい出汁として隠し味として魅力溢れるものにしていると印象を抱いた。


 (ガーディアン必読1000冊犯罪系 90作品読了/1,000冊)

登録情報
文庫: 475ページ
出版社: 岩波書店 (1990/6/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003224825
ISBN-13: 978-4003224823
発売日: 1990/6/18
内容紹介
某大使館に傭われてアナーキスト・グループにまじり内情を流す密偵ヴァーロック.上司は彼にグリニッジ天文台爆破を命ずるが,事態は思惑をはずれて意外な方向に…….巨大で陰欝な都市ロンドンにうごめく孤独で卑小な人物たちのドラマを,コンラッド(1857‐1924)は皮肉たっぷりの筆致で描きだす.近年再評価の声高い傑作長篇.



Copyright (C) 2018 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.