『耳ラッパ―幻の聖杯物語』レオノーラ・キャリントン(著) 2018
11/7
水曜日

原書はThe Hearing Trumpet, Leonora Carrington(2003、キャリントンが執筆したのは1950年代)。状況の想定がユニークで、高齢な主人公マリアンに対する家族の扱いが世の中一般の行動を代表している。マリアンはいまだに矍鑠とし、歯はないが呆けてはいない。なのに何故老人ホームへとあしらわれるのか?耳が遠いが耳ラッパ(補聴器)がある。奇天烈・奇想天外なストーリーが拡散し、終盤は支離滅裂、なんじゃこれムードで折り詰め弁当詰め込み過ぎじゃあるまいか、と飽食気味ではあるが。作者は「キリスト教の権威と偽善を徹底的に戯曲化して笑い飛ばす(文末解説)」とあるように、箱舟、聖杯、魔術、魔女狩り、異教徒、テンプル騎士団と多種投入され色とりどりで楽しめる。無秩序・無鉄砲でありながら、実は充分に練られていたり、されど随所で茶化され笑えます。

 (ガーディアン必読1000冊:コメディ 86作品読了/1,000)
登録情報
単行本: 233ページ
出版社: 工作舎 (2003/7/1)
言語: 日本語
ISBN-10: 4875023731
ISBN-13: 978-4875023739
発売日: 2003/7/1

内容紹介
風の老女マリアンが奇妙な耳らっぱを手にし、老人ホームで個性豊かな老女たちと繰り広げる痛快な冒険の日々。魂の遍歴を描く女性シュルレアリストが贈る、92歳のアリスの奇想天外な幻想譚。







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