『天子蒙塵(一・二・三・四)』浅田 次郎(著) 2018
10/21
日曜日

【第一巻】
蒼穹の昴や中原の虹、珍妃の井戸を読んだ方への続編的プレゼントの様相漂う小説となっている。前作品群の小説の事後談・回顧録的といえばよろしいか。いきなり本書では前後の出来事がわかりにくいので、浅田氏の過去作品を一読の上、本書を読むことをお勧めする。本書を読みながら、なるほど、そうだったよな、そんなことがあったよな、と思いだし、ニタニタ笑いする思い出話な出来事の、同窓会ライクな一人語り口調の流れといえばわかるか(わからんよな)。僕にはちょっと間延びし過ぎる小説で、過去作品の密度に比するとなんとなくだるい。

【第二巻】
第二巻が一巻に比してテンポ良く、造詣が深くなってきました。張作霖爆殺事件、満州事変、関東軍の暴発、それを抑えきれなかった陸軍本部、これは大東和戦争まで続きますね。ごく一部の天才と気狂いの紙一重の人災といえる。天皇の統帥権も邪悪の根源、打ち出の小槌のように気軽に使われてしまう。さて、たくさんシーンありーの、登場人物も潤沢だけれど、春児、妹、春雷、文秀のキャラは群を抜いて飛び抜けてますね。春児の生い立ちと成し遂げたこと、故郷へしたこと。これは感動せずして、どうせよというのでしょうね。

【第三巻】
日本人が、満州人、漢人を侮蔑したり、侵略された感のある支那人が日本帝国陸軍、十把一絡げで日本人に怒りを感じたり。しかし、どちらの国民に関わらず正義と信念をもってコトに当たる沈着冷静で人情篤く、ぶれない判断力・行動力がある人は魅力がある。そういう人達が幾人か登場する(内緒)。また逆の輩もいるわけで。さあ、何となく龍玉が誰の手に渡るんだろうなぁと予想がつきそうですね。この話題が四巻に出るか知りませんが。

【第四巻】
「蒼穹の昴」も本巻で全シリーズ読み終えたことになる。すべての登場人物が収束し終えた感がなく、余談ありや本が出版されることを期待しないでもない。本書では文秀、春雪、春雷、他多数、思い入れのある登場人物がある。彼ら彼女らの実際の生活は地味であったろう。魅力ある人物になったのは作者の筆技量によるところも大きいだろう。通して読んで感じることは紫禁城、イコール塀の中と呼ばせて貰えば、あれは異常で異質な世界ですね。囚人と変わりませんね、気分的には。

登録情報
単行本: 338ページ
出版社: 講談社 (2016/10/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 9784062201940
ISBN-13: 978-4062201940
ASIN: 4062201941
発売日: 2016/10/27
登録情報
単行本: 322ページ
出版社: 講談社 (2016/12/7)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062203707
ISBN-13: 978-4062203708
発売日: 2016/12/7
登録情報
単行本: 304ページ
出版社: 講談社 (2018/6/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065118158
ISBN-13: 978-4065118153
発売日: 2018/6/21
登録情報
単行本: 306ページ
出版社: 講談社 (2018/9/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065129788
ISBN-13: 978-4065129784
発売日: 2018/9/28
【第一巻】
1924年、クーデターにより紫禁城を追われた溥儀とその家族。生家に逃げ込むもさらなる危険が迫り、皇帝は極秘に脱出する。
「宣統陛下におかせられましては、喫緊のご事情により東巷民交の日本大使館に避難あそばされました」
ラストエンペラーの立場を利用しようとさまざまな思惑が渦巻くなか、日本の庇護下におかれ北京から天津へ。梁文秀と春児はそれぞれに溥儀らを助けるが──。
王朝再興を夢見る溥儀。
イギリス亡命を望む正妃・婉容。
そして側妃・文繍は「自由」を選んだ。
史上初めて中華皇帝と離婚した文繍。その裏にはいかなるドラマがあったのか──。
累計500万部突破の国民的大ベストセラー「蒼穹の昴」シリーズ第5部スタート。待望の最新刊。
【第二巻】
張作霖爆殺事件から3年、息子・張学良は無抵抗将軍となり、清朝最後の皇帝・溥儀は玉座を追われたなか、満洲の野に放たれた猛獣と化した関東軍に一人反抗を続ける男・馬占山。
馬は同じ張作霖側近であった張景恵の説得を受け一度は日本に従うが──。
一方、満洲国建国を急ぐ日本と大陸の動静に目を光らせる国際連盟の狭間で、溥儀は深い孤独に沈み込んでいた。
ついに日本の軍部もその存在を知るところとなった天命の具体「龍玉」は今、誰の手に──。
『蒼穹の昴』シリーズ第五部、第二巻は日中の思惑が激突する満洲を舞台に、義と信に生きる男たちがしのぎを削る。
【第三巻】
新天地から始まる果てしなき道へ。
「馬賊の歌」も高らかに、日本を飛び出した少年二人、妙齢の美男美女は駆け落ちか。
満洲の怪人・甘粕正彦、男装の麗人・川島芳子も加わり、新たな登場人物たちが、それぞれの運命を切り拓くため走り出す。
満洲ではラストエンペラー・溥儀が執政として迎えられ、張学良は妻子を連れヨーロッパへの長い旅に出ていた。
日中戦争以前に何が起こっていたのか?
伝説のベストセラー『蒼穹の昴』シリーズ第5部。著者ライフワークはいよいよ昭和史の「謎」に迫る。
【第四巻】
王道楽土を掲げる満洲でラストエンペラー・溥儀が再び皇帝の位に昇ろうとしている。そんななか、新京憲兵隊大尉が女をさらって脱走する事件が発生。二人の逃避行はパリへと向かう。一方、欧州から帰還した張学良は、上海に繰り返し襲い来る刺客たちを返り討ちにしていた。
日本では東亜連盟を構想し後に「世界最終戦論」を説く石原莞爾が関東軍内で突出した存在になりつつあり、日中戦争突入を前に、日本と中国の思惑が複雑に絡み合う。
満洲に生きる道を見いだそうとする少年二人の運命は?
この世を統べる力を持つ龍玉にまつわる伝説は、ついに最終章へ。『蒼穹の昴』シリーズ第5部、完結!

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