『死せる魂(上中下)』N.ゴーゴリ(著) 2018
9/18
火曜日

原書は、Dead Souls, Nikolai Gogol(1842)。

【上巻】まだ、序盤、これからどうなるのか、それはさておき。本作品はゴーゴリ最大傑作と言われている。一部、二部構成となっていて、第一部初版は1842年発行。第二部は1852年、といえば幕末、嘉永5年、166年前の作品である。御者が馬車を走らせて電話も電気もない時代。より身近に感じさせるため、僕は自分の魂を過去に放り投げ、その時代の暑さ寒さ、色、臭いを感じたい。その場所の傍らに佇んで出来事を見守もられる位置に魂をセットする。そんな気持ちで読むことが多い。すると馬糞も臭ってくる。

【中巻】主人公チチコフの計略を謀る経緯が何となく浮かび上がってきた。ロシアという大国は今以て心地よく住めるという印象がない。気候風土の厳しさを除外してもだ。当時の貴族階級と人頭税に苦しむ農奴(まあ、奴隷ですね)の間の生活の質の差が、比較することすらおぞましい程に天地の開きがある。役所は賄賂漬けであって、どこに正義があるのだろうと感じる。どうなんですかね、風刺といえども検閲もされ、ロシアの政治的背景もなんとなく解るようでもあるが、ゴーゴリはどこまで本音で書けたのだろうか。

【下巻】主人公チチコフも結局のところ悪人で改心することなく、元より無理な相談だったということか。コスタンジョーグロのライフスタイルと思考が一番自然で僕には共感できたのだが。文末にゴーゴリの伝えたかったことか、ロシア国の収賄・贈賄・賄賂まみれのなかで「高潔な思想とはいかなるものであるか」を訴求して止まなかったのだろうか。本書は欠落した頁が何箇所かある。著者が死の前に焼いてしまったところもあるらしい。さて結論:過去にワープできてもロシアには住みたくないねぇ。

 (ガーディアン必読1000冊:コメディ 80作品読了/1,000冊)

死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)
N.ゴーゴリ 平井 肇
4003260546
登録情報
文庫: 260ページ
出版社: 岩波書店 (1977/3/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003260546
ISBN-13: 978-4003260548
発売日: 1977/3/16
死せる魂 中 (岩波文庫 赤 605-5)
N.ゴーゴリ 平井 肇
4003260554
登録情報
文庫: 228ページ
出版社: 岩波書店; 改訳版 (1990/2/1)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003260554
ISBN-13: 978-4003260555
発売日: 1990/2/1
死せる魂 下 (岩波文庫 赤 605-6)
N.ゴーゴリ 平井 肇
4003260562
登録情報
文庫: 254ページ
出版社: 岩波書店; 改訳版 (1977/7/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003260562
ISBN-13: 978-4003260562
発売日: 1977/7/18



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