『菜の花の沖<六>』司馬 遼太郎(著) 2018
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土曜日

司馬遼太郎氏の全六巻の最終巻。「菜の花の沖」という書名にした所以が最終章でわかるが(著者のあとがきを除き)、一人の人物、高田屋嘉兵衛という人間が実存し、彼の行動・思考・理念ともいえるかもしれないが、幕府・ロシア・船頭仲間、商人に及ぼした影響力というのは計り知れない。影響力というのは独裁的なものではなく惹き付ける魅力、彼がいることの安心感という視点である。何故、影響力を持てるのだろうか。魅力ある主人公は、自ら考え、自ら行動する。他人に責任転嫁をしない。一途であって素朴で裏表がない。剽軽さもある。主人公の共通項だろう。だから、司馬氏も本に書きたいと当然考えたのだろう。

<五>でも触れたが、『日本俘虜実記 (上下巻) (講談社学術文庫)』ゴロウニンは読みたいリストに追加した。

菜の花の沖〈6〉 (1982年)
司馬 遼太郎
B000J7J8OI
登録情報
-: 353ページ
出版社: 文藝春秋 (1982/11)
ASIN: B000J7J8OI
発売日: 1982/11
菜の花の沖〈5〉 (1982年)
司馬 遼太郎
B000J7KE4G
登録情報
単行本: 354ページ
出版社: 文藝春秋 (1982/10)
ASIN: B000J7KE4G
発売日: 1982/10
菜の花の沖 (4) (文春文庫)
司馬 遼太郎
4167105551
登録情報
単行本: 341ページ
出版社: 文藝春秋 (1982/09)
ASIN: B000J7LG02
発売日: 1982/09
菜の花の沖〈3〉 (1982年)
司馬 遼太郎
B000J7M5Q6
登録情報
単行本: 362ページ
出版社: 文藝春秋 (1982/08)
ASIN: B000J7M5Q6
発売日: 1982/08
菜の花の沖〈2〉 (1982年)
司馬 遼太郎
B000J7MPHU
登録情報
単行本: 366ページ
出版社: 文藝春秋 (1982/07)
ASIN: B000J7MPHU
発売日: 1982/07
菜の花の沖〈1〉 (1982年)
司馬 遼太郎
B000J7I2JU
登録情報
単行本: 342ページ
出版社: 文藝春秋 (1982/06)
ASIN: B000J7I2JU
発売日: 1982/0

内容(「BOOK」データベースより)
江戸後期、淡路島の貧家に生れた高田屋嘉兵衛は、悲惨な境遇から海の男として身を起し、ついには北辺の蝦夷・千島の海で活躍する偉大な商人に成長してゆく…。沸騰する商品経済を内包しつつも頑なに国をとざし続ける日本と、南下する大国ロシアとのはざまで数奇な運命を生き抜いた快男児の生涯を雄大な構想で描く。

【第二巻】海産物の宝庫である蝦夷地からの商品の需要はかぎりなくあった。そこへは千石積の巨船が日本海の荒波を蹴立てて往き来している。海運の花形であるこの北前船には莫大な金がかかり、船頭にすぎぬ嘉兵衛の手の届くものではない。が、彼はようやく一艘の船を得た。永年の夢をとげるには、あまりに小さく、古船でありすぎたが……。

【第三巻】蝦夷地の主・松前藩は、アイヌの人びとを酷使して豊富な海産物を独占していたが、この内実をほかに知られるのを恐れ、北辺にせまる大国ロシアの足音を聞きながら、それを隠し続けた。ようやく嘉兵衛が巨船を作り上げ、憧れのかの地を踏んだ頃から、情勢は意外な展開を見せ始めた。幕府が東蝦夷地の経営に乗り出したのだ。

【第四巻】エトロフ島は好漁場であったが、すさまじい潮流が行く手を妨げ、未開のままだった。しかし幕府は北辺の防備を固めるため、ここに航路を確立する必要を痛感して、この重要で困難な仕事を嘉兵衛にゆだねた。彼の成功は蝦夷人にも幕府にも大きな利益をもたらすだろう。しかしすでに、ロシアがすぐ隣のウルップ島まで来ていた。

【第五巻】ロシアは、その東部の寒冷地帯の運営を円滑にするために、日本に食料の供給を求めた。が、幕府が交易を拒絶したことから、報復の連鎖反応が始まった。ロシア船が北方の日本の漁場を襲撃すれば、幕府も千島で測量中のロシア海軍少佐を捕縛する。商人にすぎない嘉兵衛の未来にも、領国の軋轢がしだいに重くのしかかってくる。

【第六感】突然の災厄が、嘉兵衛をおそった。彼自身がロシア船にとらわれ、遠くカムチャッカに拉致されたのだ。だが彼はこの苦境の下で、国政にいささかの責任もない立場ながらもつれにもつれたロシアと日本の関係を独力で改善しようと決意した。たとえどんな難関が待ち受けていようとも。感動の簡潔編。




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