『死の味(上下巻)』P.D.ジェイムズ(著) 2018
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日曜日

原書は、A TASTE FOR DEATH(1996)。蜜の味じゃなくて死の味。どんな味だろう?

【上巻】ミステリーは出だしは緩やかにならざるを得ない。殺人によりスタート位置に立つが、まだ加速はしない。状況証拠、アリバイ、主な登場人物が出揃うのが前半戦。誰が胡散臭いか読者は憂悶と悶えるのがお作法、作家への礼儀とわきまえている。著者は女性であるが、ありがちな後付の行動説明、「私はこうだったからこうしたんだ、それでいい」的釈明風味が皆無で好印象をもつ。作者の特徴は「言おうとしたが言わずにおいた言葉」(カギ括弧が点線のイメージ)が多く、飲み込む言葉で心情を代弁している。下巻、アクセル捻って加速していただきましょう。

【下巻】いよいよ後半戦、ミステリーは早々、犯人が見つかってはならない。複数人に某かの殺人に対する動機があり、アリバイも曖昧なまま、捜査が続くのがよろしい。そして際際まで判らず、読者もまさかのどんでん返しというのが作者からすれば醍醐味かもしれない。本書はそこまで悩ますこともなく、最期は落ち着くところに落ち着くわけで、そうなると雪崩現象で全てがクリアーになってしまう。まあ、そういったものだろう。

 (ガーディアン必読1000冊:犯罪系 61作品読了/1,000)

死の味〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
P.D. ジェイムズ P.D. James

4150766088

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登録情報
文庫: 383ページ
出版社: 早川書房 (1996/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150766088
ISBN-13: 978-4150766085
発売日: 1996/12
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登録情報
文庫: 388ページ
出版社: 早川書房 (1996/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150766096
ISBN-13: 978-4150766092
発売日: 1996/12
内容(「BOOK」データベースより)
【上巻】教会の聖具室で血溜まりの中に横たわる二つの死体は、喉を切り裂かれた浮浪者ハリーと元国務大臣のポール・ベロウン卿だった。二人の取り合わせも奇妙だが、死の直前の卿の行動も不可解だった。突然の辞表提出、教会に宿を求めたこと…卿は一体何を考えていたのか?彼の生前の行動を探るため、ダルグリッシュ警視長は名門ベロウン家に足を踏み入れる。重厚な筆致で人間心理を巧みに描く、英国推理作家協会賞受賞作。
【下巻】不可解なのはポール卿の行動だけではなかった。前妻の事故死、母親を世話していた看護婦の自殺、家政婦の溺死…彼の周辺では過去に謎の怪死事件が続いていた。ふたたび捜査線上に浮かびあがってきたこれらの事件に、今回の事件を解決する鍵があるのか?それぞれに何かいわくありげなベロウン家の人々の複雑な人間関係から、ダルグリッシュ警視長が導きだした推理とは?緻密な構成が冴える、英国本格派渾身の力作。



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