原書は、BRIGHT LIGHTS,BIG CITY(1984)。
ベストセラーだったということ、80年代のサリンジャーと謳われたこと。飄々としてストーリーはニューヨークの街で生活する主人公を中心に出来事を舐めていく。淡々としてる。大きな起伏もなく。考えてみるとNYで憧れの仕事に就き、美人の女性を妻としたが・・・。何故か、満たされない。コカインの快楽に簑隠れしても充実感がない主人公。都会まみれになってみて、故郷から離れてみて、母親を亡くしてみて、父、母、兄弟の家族の愛情・絆を感じる。自分のしていることの空白感を噛みしめ悶々とする。結局のところ、自分をよく見せよう、自慢しようと見栄えに勤しみ励む人生にろくなことはなく、回顧心が純朴世界に回帰していくのだろう、ということは頷けるのだよね。文章全体が、[きみ]=[自分]という人称付けが俯瞰的、客観的でクールかな。
(ガーディアン必読1000冊:コメディ 49作品読了/1,000)
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