原書はThe Man on the Balcony(1967)、刑事小説、第四作、第一作、第二作ときて第三作。緊張感を保ちながらも、物語に吸い込まれる。というのは小説としては上手だからだろう。登場する刑事たちに個性というより強烈な灰汁の強さがある一方で、犯人を追い詰めて挙げてやる熱意に溢れ、同じ人として被害者や親族に真摯に向き合う。会話の絡みも絶品だ。当たり前といえば外せないツボなのであるが、お作法がキチンとしているのは読み手からしても気持ちのよいものである。オーソドックスだが、セオリーを順当に撫でていく。そして何よりスリリングであるのが宜しい。