『戦争の悲しみ』バオ ニン(著) 2017
12/7
木曜日

原題はThe Sorrow of War(1991)。強烈ですね、ベトナム戦争と一般的に云われるベトナム戦争は、第二次インドシナ戦争(英: Second Indochina War)ともいわている。僕たちが、知り得てるイメージは映画からのインプット情報では、観た映画では「プラトーン(1986)」「フルメタルジャケット(1987)」「7月4日に生まれて(1989)」が印象的だけれども、アメリカ目線であって敵対視するベトコンは悪役扱いされている。本書は、1965年から10年に渡り、人民軍としてベトナムを守るため戦い続けた人物の戦前・戦中・戦後を振り返る。生の体験としての苦汁がしたたり落ちるばかりの緊迫感、葛藤感、絶望感に満ちあふれている。特に戦場での血生臭さは絶品。戦争って何だろう、と考えると未経験の私が語るには軽薄すぎて恐縮だが、平和であれば体験しなくてよいことを体験させられ、恋人、家族、親は子供を失う。激戦地で生き残った戦士は心休まることなく、いつ如何なる時も瞬時に戦地の恐怖のどん底の記憶を呼び覚まされる。酒に溺れたっていいじゃない。それで瞬間でも気持ちが安らぐことになれば。悪夢と恐怖の連鎖は、戦後も拭われず、銃後の人々も苦しむことを休ませてくれない。

る。 (ガーディアン必読1000冊:戦争旅行記 39作品読了/1,000)

戦争の悲しみ
バオ ニン 井川 一久
4839700923
登録情報
単行本: 370ページ
出版社: めるくまーる (1997/06)
言語: 日本語
ISBN-10: 4839700923
ISBN-13: 978-4839700928
発売日: 1997/06
内容(「BOOK」データベースより)
キエンは何度も死地を生きのびた。だが、戦争という苛酷な体験は、彼の心身に癒しがたい傷を残した。凄絶な戦闘、ジャングルをさまよう死者の霊、部下たちの気高い自己犠牲…痛切な思い出の数々が彼につきまとう。戦後のハノイに生還して、キエンは奔放で情熱的な同級生フォンと11年ぶりに再会する。かつて二人は狂おしい愛で結ばれていたのだった。だが今は、芸能会の放恣な生活に身を委ねるフォン。ここにも戦争の深い傷あとがある。極限状況における人間の悲劇性を見てしまった二人に、はたして青春の愛は回復するだろうか?ヴェトナム作家協会賞受賞・英インデペンデント紙海外小説賞受賞。



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