『若き獅子たち(上下巻)』アーウィン・ショー(著) 2017
11/3
金曜日

【上巻】原題はYOUNG LIONS(1948)、著者自身も'42-'45にアフリカに従軍している。出だしは退屈だと感じたが、それは以降の導入部分、伏線として重要なエピソードであると直ちに判るし、人間個々が緻密に炙り描かれている。名もなき戦士もひとりひとりに人生がある。男と女の関係がある。WWIIの3年後に出版されているにもかかわらず、戦争全体の俯瞰さ加減、網羅性が強烈だ。しかし個々のシーンは身近な狭隘な範囲なのではあるけれど。木を見て森を自然に連想させてしまうというか、木を観て森の悲壮さを知らしめるというか。

【下巻】最期の出来事・終焉でいえば、WWIIには何百・何千万のエピソードがあるだろう。その何千万の中の3人を切り取り、タイムスライスして遡及しながら振り返ると本小説になる。何千万種類もできるわけだ。ひとつとして同じものがあるわけない。著者アーウィン・ショーは極上の表現力、戦争体現も含めてであろうが、緻密にヨーロッパ戦線を捉えている。感服だ。私も戦記・戦争物はそこそこ読んでいるつもりだが、緊迫感、死臭感、激痛感がワンランク上にランキングされるし、熟成度が強い。最期の脱力感を感じつつも感動に包まれもする。 (ガーディアン必読1000冊:戦争旅行記)

若き獅子たち〈上〉 (ちくま文庫)
アーウィン ショー Irwin Shaw
4480026150
登録情報
文庫: 535ページ
出版社: 筑摩書房 (1992/04)
言語: 日本語
ISBN-10: 4480026150
ISBN-13: 978-4480026156
発売日: 1992/04
若き獅子たち〈下〉 (ちくま文庫)
アーウィン ショー Irwin Shaw
4480026169
登録情報
文庫: 526ページ
出版社: 筑摩書房 (1992/04)
言語: 日本語
ISBN-10: 4480026169
ISBN-13: 978-4480026163
発売日: 1992/04
内容(「BOOK」データベースより)
【上巻】軍隊と戦争の罪悪を、エピソードを盛り込み劇的な構成でスリリングに描き出す、ショー初の長編小説。三人の主人公(ナチスに投じるオーストリア人、ユダヤ系アメリカ人、芸術を愛するアメリカ人)は、それぞれ前途に漠然とした不安を抱きながらも、青春を愉しんでいた。そこへ開戦。三人とも戦地に送られ、人間性は破壊され、堕落していく人々をまのあたりにする。
【下巻】二人のアメリカ青年は、戦争の体験から戦友として信頼しあうようになるが、ナチスを信奉するオーストリアの青年は、有能な兵士になるにつれ人間性を喪失してよく。やがて三人は、バイエルンの森で運命の対決を迎える。『武器よさらば』『禅者と死者』と並ぶ戦争を舞台にした青春小説で1958年には映画化された。



Copyright (C) 2017 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.