『逃げ水<1><2>』子母沢 寛(著) 2017
4/13
木曜日

子母澤 寛(しもざわ かん、1892年2月1日~1968年7月19日)の小説は初めて読んだ。これまた、幕末の動乱期を描いたものだが、作家が違えば、主役となる人物が違えば風景も物語も違って映る。幕末動乱期、非日常の出来事は事件となり物語と昇華する。千人千様の人生が時代の烈風に煽られ、悉く悶絶してしまうドンヨリした空気が沈殿しているような時代。色はグレー。そして血生臭い斬首・切腹・戦いに流される血の赤色。一括りに僕のイメージは黒に近い灰色と錆び黒ずんだ赤色、これに収斂する。さて、主役は槍使い、山岡謙三郎(後年の号は泥舟)である。「幕末の三舟」(勝海舟、義弟:山岡鉄舟)のひとりでもあった。隠居がよい味を出していて「江戸っ子の正義」が滲み出ている。

P.S.「逃げ水」とは、舗装道路が水に濡れたように見え、近づくとそれが逃げていくように見える景色のことだが、著者は、何故故、書名に「逃げ水」と付けたのか? それを考えている。解るようで判らない。

逃げ水〈1〉 (嶋中文庫)
子母沢 寛
4861563348
登録情報
文庫: 488ページ
出版社: 嶋中書店 (2005/07)
言語: 日本語
ISBN-10: 4861563348
ISBN-13: 978-4861563348
発売日: 2005/07
逃げ水〈2〉 (嶋中文庫)
子母沢 寛
4861563356
登録情報
文庫: 497ページ
出版社: 嶋中書店 (2005/07)
言語: 日本語
ISBN-10: 4861563356
ISBN-13: 978-4861563355
発売日: 2005/07
内容(「BOOK」データベースより)
<1>旗本高橋家の養子謙三郎は、実兄山岡紀一郎、養家の隠居義左衛門のもと修行に励み、槍一筋で破格の出世を遂げる。桜田門外の変、清河八郎の策謀による浪士組の上京、新選組の結成…、激動の時代に将軍家への忠誠を貫く男、のちの泥舟、高橋謙三郎。勝海舟、山岡鉄舟と並び幕末三舟と称された男の生涯。

<2>京で新選組が、江戸で新徴組が奔走するなか、大政奉還、鳥羽・伏見の戦いを経て、江戸開城が行われる。これを不服とする彰義隊が上野に立篭り、徳川慶喜を擁立するとの噂が飛び交うが、将軍家の安全こそを至上とする謙三郎は慶喜を守り続ける。明治政府への仕官を拒み、市井に埋れた忠の人、高橋泥舟。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
子母沢/寛
明治25‐昭和43年(1892‐1968年)。小説家。北海道生まれ。もと彰義隊の御家人の孫として生まれ、その回顧談を聞いて育つ。明治大学を卒業後、複数の新聞社、木材会社、商社などを経て、大正15年より東京日日新聞社に勤務し、侠客ものを書き始める。昭和3年『新選組始末記』を刊行、この作品は後に刊行された『新選組異聞』『新選組物語』とともに「新選組三部作」と称され、創作性が高いとされながらも、今なお、新選組研究者のバイブルとまでいわれている。昭和7年『国定忠治』を発表。股旅もの作家として独立。以後、侠客、幕臣を主人公とした作品を次々に発表する。昭和36年『座頭市物語』が映画化され、好評を博す。昭和37年幕末維新を背景にした一連の作品で第十回菊池寛賞を受賞



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