内容紹介
【上巻】
この侍が虎の尾なら、どこかに虎がいる。不戦開城決した江戸城に、てこでも動かぬ旗本がひとり。居てはならぬ旧幕臣の正体があきらかになるにつれ、城中の誰もが遠ざけ、おそれ、追い出せない……幕末の武士の屈託まで描き出す、時代ミステリー傑作。今も変わらぬ組織人の忠勤ゆえの悲喜こもごもを、情感たっぷりにユーモラスに描き出した傑作!
先の見えない時代は平成の世も同じ。時代を越えて変わらぬ人間の弱さ、おろかさ、やさしさ、そして土壇場の底力を見せてくれるところはまさに浅田文学の真骨頂。読者の反響の高かった宇野信哉氏の挿絵を本文・装幀に使用。
【下巻】
物言えばきりがない。体に物言わせるのみ。御城明け渡し後も、徳川の世が安泰であるかのように、謎の旗本は勤仕をまっとうした、しかも出世までして。やがて明暗と噪寂の中、まさかの天下禅譲の儀が……なしくずしの御一新でも、人としての義は変わらない。今も変わらぬ組織人の忠勤ゆえの悲喜こもごもを、情感たっぷりにユーモラスに描き出した傑作!
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