『聖母の贈り物』ウィリアム・トレヴァー(著) 2016
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火曜日

ベスト・ストーリーズIII カボチャ頭』に集録された「昔の恋人」ウィリアム・トレヴァーをトリガーとして、彼の短篇集を読んでみた。本書、十二篇が編まれている。全体の中で中編(約100頁)の「マティルダのイングランド」は玉手箱的出来映えであるし、「イエスタデイの恋人」は50年~60年台の一般庶民の恋に落ちた不倫の血路はやはりのところ活路見いだせず。「こわれた家庭」も試練ありながらも幸せ感に満たされていた老婆を襲う出来事、目の付け所が鋭利。「ミス・エルヴィラ・トムレット、享年一八歳」もごくありふれた家庭の日常を炙る。アイルランドが数編にはベースラインとして肥やしとなっている。次なるトレヴァー短篇集『アリルランド・ストーリーズ』も読もうぞ。

聖母の贈り物 (短篇小説の快楽)
ウィリアム トレヴァー William Trevor
4336048169
登録情報
単行本: 408ページ
出版社: 国書刊行会 (2007/02)
言語: 日本語
ISBN-10: 4336048169
ISBN-13: 978-4336048165
発売日: 2007/02

内容(「BOOK」データベースより)
普通の人々の人生におとずれる特別な一瞬、運命にあらがえない人々を照らす光―。“孤独を求めなさい”―聖母の言葉を信じてアイルランド全土を彷徨する男を描く表題作をはじめ、ある屋敷をめぐる驚異の年代記「マティルダのイングランド」、恋を失った女がイタリアの教会で出会う奇蹟の物語「雨上がり」など、圧倒的な描写力と抑制された語り口で、運命にあらがえない人々の姿を鮮やかに映し出す珠玉の短篇、全12篇収録。稀代のストーリーテラー、名匠トレヴァーの本邦初のベスト・コレクション。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
トレヴァー,ウィリアム
1928年アイルランドのコーク州生まれ。トリニティ・カレッジ・ダブリンを卒業後、教師・彫刻家・コピーライターなどを経て、60年代より本格的な作家活動に入る。65年、ホーソンデン賞を受賞した『同窓』で注目を集め、以後現在まで30冊を超える長篇小説と短篇集を発表し、数多くの賞を受賞している(The Children of Dynmouth(76年)、『フールズ・オブ・フォーチュン』(83年)、『フェリシアの旅』(94年)でホイットブレッド賞を受賞)。短篇の評価はきわめて高く、初期からの短篇集7冊を合わせた短篇全集(92年)はベストセラー。ジョイス、オコナー、ツルゲーネフ、チェーホフに連なる現代最高の短篇作家と称される。現在英国デヴォン州在住





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