「ハリー・ボッシュ」シリーズは第15作目。待ちに待ったコナリー新刊。H.Bシリーズ。いやはや、安心感に包まれて、スリル・ハラハラ感を味わえる、妙な表現だがそうなのだ。ボッシュのキレのよい洞察力と、俊敏な行動力が事件を究明していく様がこ気味よい。アマゾンのビデオプライム、観た方も多いでしょうが、情景や描写はとてもよくできていた。特に片支持式のボッシュの自宅などは。されど僕が頭の中で出来上がっていた見た目のハリー像は違いをみせた。(当然か・）このシリーズも続きが楽しみである。

さて、原題のTHE DROP、文末の解説で定年延長選択制度(略称DROP)、転落死事件、滴下血痕(A drop of blood)を意味がそれぞれ込められており、それが事件の支流・本流となってくる。本話では、刑事としてパートナーの存在、それとの信頼感と不信感、警察組織上層部とそれに対立・対抗する政治（市議）も伏流としてドロドロとどす黒く憤懣している。しかし、このシリーズが続く理由は主人公ハリー・ボッシュが殺人事件を解決するまでの根気・下向きさ・フットワークさ、強かさがタマネギの薄皮を一枚ずつ剥がすように核心に近づく思考や行動もひとつに挙げられるが、ボッシュが圧力に屈しないひたむきな正義感と、人として悩み苦しむ葛藤部分もきちんと語られているからだろうと僕は感じる。その葛藤はポジティブな方向へ転進することも見逃せない。

転落の街(上) (講談社文庫) マイクル・コナリー 古沢 嘉通	登録情報 文庫: 336ページ 出版社: 講談社 (2016/9/15) 言語: 日本語 ISBN-10: 4062935015 ISBN-13: 978-4062935012 発売日： 2016/9/15
転落の街(下) (講談社文庫) マイクル・コナリー 古沢 嘉通	登録情報 文庫: 336ページ 出版社: 講談社 (2016/9/15) 言語: 日本語 ISBN-10: 4062935023 ISBN-13: 978-4062935029 発売日： 2016/9/15
内容紹介 当代最高のハードボイルド作品と言われる、ハリー・ボッシュ・シリーズの邦訳最新刊!冷厳冷徹に正義を貫き捜査を進める一方、仲間や恋人、愛娘に見せるボッシュの優しい姿が胸に響く不朽のLAハードボイルド作品です。LAと市警の抱える病巣を抉り出し、未解決連続殺人事件の深い闇に迫る緊迫のサスペンス! 【内容】定年延長選択制度を適応され、ロス市警未解決事件班で現場に居続けるボッシュ。 未解決事件のファイルの中から、DNA再調査で浮上した容疑者は当時8歳の少年だった。高級ホテルの転落事件と並行して捜査を進めていくが、事態は思った以上にタフな展開を見せる。2つの難事件の深まる謎! 許されざる者をとことん追い詰めていく緊迫のサスペンス! 転落した市議の息子は殺害されたのか、自殺だったのか。未解決強姦殺害事件の背後に潜む深い闇とシリアルキラーの影。 ”誰もが価値がある、さもなければ誰も価値がない“という信条のもと非情な捜査を進めるボッシュ。 陰惨な様相を呈しはじめた事件には戦慄の結末が待っていた!