『ロンドン狂瀾』中路 啓太(著) 2016
5/11
水曜日

これは1930年(昭和5年)、ロンドン軍縮会議、そしてロンドン海軍軍縮条約の締結、日本国内での批准に向けた政府・海軍・枢密院等を巡って克明緻密にやりとりが小説風体裁をもって語られている。歴史の教科書で覚える1930年、ロンドン海軍軍縮会議、米英に比して日本は補助艦艇を7割を巡って国益をかけた調整がされた」みたいな箇条書き覚えではない。出来事がタイムラインに添ってしみじみ克明である。ボリュームたっぷりである。当時の大日本帝国憲法では第十一条「統帥権」、第十二条「編成大権」があり、憲法解釈を巡り、まことに泥臭い。若槻全権代表、浜口総理大臣、幣原外相、元老、外交官、雑賀の筋の通った登場人物、そうでない与党、海軍保守派が入り乱れている。二大政党による交替があった時代でもあった。維新・日露戦争を経て米英日列強国にカウントされるようになった日本ではあるが、先行き怪しく不透明感に崩れ込んでいく満州事変(1931年)をトリガーに、更なる雲行き暗く軍国主義を増幅増大していく端境期でるといえよう。

ロンドン狂瀾
中路 啓太
4334910726
登録情報
単行本: 568ページ
出版社: 光文社 (2016/1/19)
言語: 日本語
ISBN-10: 4334910726
ISBN-13: 978-4334910723
発売日: 2016/1/19

内容(「BOOK」データベースより)
1930年1月、霧深きロンドン。米英仏伊、そして日本の五大海軍国によるロンドン海軍軍縮会議が始まろうとしていた。世界恐慌が吹き荒れ、緊縮財政と戦争回避が叫ばれているなかではあったが、各国それぞれの思惑と輿論を抱え、妥協点を見出すのは容易ではない。日本の全権団長は若槻礼次郎。随員には雑賀潤外務省情報部長がいた。難航を極める交渉の果て、雑賀は起死回生の案を捻り出すが―。誇り高き外交官の活躍と、統帥権干犯問題の複雑な経緯を、精緻かつ情熱的に描ききった、今こそ読まれるべき傑作。






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