今年は偶然の縁か、100年前の第一次世界大戦を扱った兵士アレッサンドロ・ジュリアーニを読み、NHK-BSでは特番も観た。これらが縒り合わさり第一次世界大戦の時代背景が認知できていたグッドタイミングでの本書。「天国でまた会おう」も第一世界大戦後のフランスを舞台にしている。塹壕で生き埋めになりながら九死に一生を得たアルベールと、その彼を助け出した瞬間に砲撃を顔に受け口も顎も無くなってしまったエドヴァールを中心とした物語。登場人物個々の思考が鋭利で、何故そのように考え、喋るのか。それぞれ過去の家族の影響、経験した出来事がその人なりの人格を作りあげていくわけである。そこがキチンと解説されていることは善は善、悪は悪人として役割を演じていても気持ちよく読めることになるし、悪が失墜していくことに拍手するということにもなるのである。すべての人は悩み苦しみ藻掻くのである。葛藤のない人生なんかありゃしない。これが濃密度の物語を紡ぐのである。本書は葛藤だらけなのである。
終盤、駅に来ないエドヴァールを心配するアルベール、泣き崩れるアルベール、ここで涙落せずにいられようか。
ピエールの他作品買ってしまった。またひとつ、作家の裾野が拡がったのである。
天国でまた会おう(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫) ピエール ルメートル Pierre Lemaitre 平岡 敦
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登録情報
文庫: 336ページ
出版社: 早川書房 (2015/10/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4151814515
ISBN-13: 978-4151814518
発売日: 2015/10/16 |
天国でまた会おう(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫) ピエール ルメートル Pierre Lemaitre 平岡 敦
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登録情報
文庫: 336ページ
出版社: 早川書房 (2015/10/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4151814523
ISBN-13: 978-4151814525
発売日: 2015/10/16 |
内容紹介
膨大な犠牲者を出して、大戦は終わった。
真面目な青年アルベールは、戦争で職も恋人も失ってしまう。画才に恵まれた若きエドゥアールは顔に大怪我を負い、家族とのつながりを断つ。戦死者は称揚するのに、生き延びた兵士たちには冷淡な世間。支え合いながら生きる青年たちは、やがて国家を揺るがす前代未聞の詐欺を企てる!
第一次世界大戦後のフランスを舞台に、おそるべき犯罪の顛末を鮮やかに描き上げた一気読み必至の傑作長篇。ゴンクール賞受賞作。
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