『猫のゆりかご』カート・ヴォネガット・ジュニア(著) 2015
9/25
金曜日

シルバーウィークから5冊目の読了本。未読棚にあった本書は何故、いつ、この本を買ったのか、思い出せなくて、誰がいいと勧めたのか、とかとか、気になって仕方がなかったが、結局思い出せず終いだった。

タイトルの「猫のゆりかご」は、英語ではcat's cradle、日本語で言えば「あや取り」になる。1963年の作品で、SFジャンルに嵌るのかもしれないが、どのカテゴリーに入れて良いのやら、結局そのような分類は無意味で浅はかと気付かされるのだが、そもそもが軽微な事柄でしかない。一言で感想を言えば、なんですか、この世界観。高品質、奇天烈かつ、予想外の裏切り展開だった。本書の本流を流れる宗教「ボコノン教」というのがベースラインとしてあって、キリストの旧約聖書に比べると実に人間味があって、筋が通っていて、斜に構えた緩い教えで実に心地よい。それらがストレートに僕の魂に突き刺さる教典であって、このような宗教があってもいいのじゃなかろうかと感嘆してしまおう。(おもしろきゃそれでいいのが読書なのである。屁理屈は不要)ストーリーはテンポとリズムがあって誠に好ましい。著者はアングラ(アンダーグランド)作家、カルト作家ともて囃された時期もあったらしいが、彼はメジャー路線から鋭角20度ほど左に逸れた角度に位置しているように僕は感じるし、それが読み手を選ぶかもしれない。著者ヴォネガットはアメリカ人であるが、知識のシャワーを嫌みなくマイルドにユーモアをもってプロットに織り込んだ。まさに綾取りは言い得て妙。このような陳腐な感想では誰も判らない、判って欲しくない、読んだ者だけが満たされる充足感でいいのであって、エクスタシーの急上昇スパイラルの竜巻に飲み込まれる幸せに包まれ、身を悶えさせてしまうのが本書の正しい読み下し方と僕は固く信じるのである。

猫のゆりかご
カート ヴォネガット 伊藤 典夫
B00CIME72U
登録情報
文庫: 367ページ
出版社: 早川書房 (1979/07)
ISBN-10: 4150103534
ISBN-13: 978-4150103538
発売日: 1979/07

商品の説明
わたしはジョーナ。『世界が終末をむかえた日』の執筆準備にとりかかったのは、キリスト教徒だったころのこと。いま、わたしはプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいて、禁断のボコノン教を奉じている。ボコノン教に入信したそもそものきっかけこそは、ほかならぬ未完の大作『世界が終末をむかえた日』なのだった。 シニカルなユーモアに満ちた文章で定評のある著者が、奇妙奇天烈な世界の終末を描いたSF長編。







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