『エアーズ家の没落(上下巻)』サラ・ウォーターズ(著) 2015
8/24
月曜日

第二次世界大戦後、イギリスでのお話。広大な土地と館と召使を抱えていた貴族(地主階級)は、収入を絶たれ、昔のような贅沢な暮らしはできないように全土的な潮流に飲まれていた。本書に登場するハンズレッド領主館も朽ち果てていく勢いを止められずにいたのだが、それら栄枯盛衰の館を中心に物語りは進展していく。しかしながら、最後まで読んでも、殺人か、自殺か、精神的疾患か、霊にとり憑かれたせいなのか、何が原因で、(犯人がいるとすれば)誰が犯人で、館にとり憑く悪霊なのか、人間の仕業なのか、わからないのである。「ミステリか、ホラーか、サスペンスか」と問われれば、どれにも該当する。そのような作風に著者が敢えてしたのだろう、と思うことにしよう。

しかし、1800年前半に建てられた館、威風堂々としたビクトリア様式の外観と内装の贅沢さも維持していくのには、莫大な費用と人手がかかるものなのである。では、「住みたいですか?」と問われれば、「住みたい」と答えるかもしれない。どころで、広大なお庭の手入れとか、大理石や、銀食器を磨いたり、お掃除したり、大部分は庭師とハウスキーパーの仕事に明け暮れるのだろう。それもいいかもしれない。著者のサラ・ウォーターズ、ちと目が離せないかもしれない。

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)
サラ・ウォーターズ 中村 有希
4488254071
登録情報
文庫: 336ページ
出版社: 東京創元社 (2010/9/18)
ISBN-10: 4488254071
ISBN-13: 978-4488254070
発売日: 2010/9/18
エアーズ家の没落下 (創元推理文庫)
サラ・ウォーターズ 中村 有希
448825408X
 登録情報
文庫: 400ページ
出版社: 東京創元社 (2010/9/18)
ISBN-10: 448825408X
ISBN-13: 978-4488254087
発売日: 2010/9/18

内容(「BOOK」データベースより)

《上巻》かつて隆盛を極めながらも、第二次世界大戦終了後まもない今日では、広壮なハンドレッズ領主館に閉じこもって暮らすエアーズ家の人々。かねてから彼らと屋敷に憧憬を抱いていたファラデー医師は、往診をきっかけに知遇を得、次第に親交を深めていく。その一方、続発する小さな“異変”が、館を不穏な空気で満たしていき…。たくらみに満ちた、ウォーターズ文学最新の傑作登場。

《下巻》相次ぐ不幸な出来事の結果、ハンドレッズ領主館はますます寂れていた。一家を案じるファラデー医師は、館への訪問回数を増やし、やがて医師と令嬢キャロラインは、互いを慕う感情を育んでいく。しかし、ふたりの恋が不器用に進行する間も、屋敷では悲劇の連鎖が止まることはなかった…彼らを追いつめるのは誰?ウォーターズが美しくも残酷に描く、ある領主一家の滅びの物語。







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