『すべての美しい馬』コーマック・マッカーシー(著) 2015
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水曜日

コーマック・マッカーシー原作の「血と暴力の国」を読み、彼の他作品を読んでみたいとの想いから本書を手に取った。これは、『国境三部作 -The Border Trilogy-』と表される第一作目にあたる。純文学だ。テキサス州とメキシコ州の(テキサス州は、メキシコ領だったがアメリカ州に編入された)人間や文明や暴力が綯い交ぜに絡む土地柄とも言えなくもないのだろうが、本書では主にメキシコをロケ地に仕立てられており、主人公のジョン・グレイディ、馬も主役級の扱われ方で登場し、幼友達ロリンズとの飄々且つ、親密な友情と、牧場主の娘とのピュアな恋は成就するには小説的に掟破りであり、甘ったるいだけの乙女チックでは広く読者には受け入れられないのであり、ここはひとつ二人の愛を引き裂いてしまう反勢力が横行しなければならなかったのであり、N極S極よろしく相反する身分・住む世界が違うのだよ諸君の常套手段で切り裂いてしまえばよいのであった。更に思いもよらぬ事件に死とも数センチの距離で隣り合わせもするが切り抜けていく。マッカーシーの心情と情景の描写は彼独特の文体が無駄を削ぎ落としても余りある読み手の感情に訴求してくるのである。

すべての美しい馬 (ハヤカワepi文庫)
コーマック マッカーシー Cormac McCarthy
4151200045
登録情報
単行本: 286ページ
出版社: 早川書房 (1994/04)
ISBN-10: 4152078413
ISBN-13: 978-4152078414
発売日: 1994/04

内容(「BOOK」データベースより)
1949年。祖父が死に、愛する牧場が人手に渡ることを知った16歳のジョン・グレイディ・コールは、自分の人生を選びとるために親友ロリンズと愛馬とともにメキシコへ越境した。この荒々しい土地でなら、牧場の仕事を続けていくことができると考えたのだ。途中でブレヴィンズという年下の少年を道連れにくわえ、3人は予想だにしない運命―、激しい恋、流血、1人の死の渦中へと踏みこんでいく。メルヴィル、フォークナーに比肩するといわれる作家が、詩的な文章で美しくも苛烈な世界での青春を描く。全米図書賞、全米書評家協会賞受賞作。






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