『血と暴力の国』コーマック・マッカーシー(著) 2015
3/26
木曜日

コーマック・マッカーシーは初読の作家だった。本書は、分類するなら、「ノワール小説(何らかの闇により出口なしの閉塞状態に追い込まれる人間を描くことに着目するなら(文末解説より)」になるらしい。ウィキペディアの解説を引用するなら「ハメットやチャンドラーの私立探偵物と違い、犯罪者を主人公に据えた作品が多いのが特徴。代表的な作家として、ギャング出身のジョゼ・ジョヴァンニ、極左志向のジャン=パトリック・マンシェットなどが挙げられる。」とあり、コーマック・マッカーシーもその一人に挙げられている。

なんとも独特な文体で、最初は取っ付き難いと思いながら読み進めていくうちに、心地よいテンポとなって、従来の小説が何ともゴテゴテと粉飾まみれでまどろっこしいとも感じてしまうから不思議である。

どのように独特か、文末の解説から抜粋すると「会話に引用符を付けず、コンマを最小限に切り詰めるという独特の文章の書き方をする。このせいで、一見とっつきにくい印象がないではないが、本作ではセンテンスが短めだし、なれてくれば癖になる文体だ。・・途中略・・・ マッカーシーの作品には心理描写がほとんどなく、外形描写で含蓄のある表現をする。」
 まさにそのとおり。

「マッカーシーの小説は、神話やギリシア悲劇のように、人間と人間の関係や、人間の心理ではなく、人間と世界の関係をあげく小説であるように思われる。(文末解説より)


文中の会話で、金を奪って逃走中のモスが、ヒッチハイクで拾った15歳の少女に向けて言う台詞。『きみは朝起きたときには昨日なんて意味がなくなっていると思っている。でも意味があるのは昨日だけだ。ほかに何がある? 君の人生はそれができあがってきた日々でできあがっている。ほかに何もない。・・』

妙に心に突き刺さった。何となく自分では説明がつくのではあるが。

というわけで、「贔屓の作家に加えてやってもいい」の勢いで4冊アマゾンに中古本を注文した。どうでしょう。こうやって作家の裾野が広がっていくのは余生をより楽しむための必須アイテムとなってくれるのである。

血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)
コーマック・マッカーシー 黒原 敏行
4594054617
登録情報
文庫: 424ページ
出版社: 扶桑社 (2007/8/28)
言語: 日本語, 英語, 日本語
ISBN-10: 4594054617
ISBN-13: 978-4594054618
発売日: 2007/8/28
しょうごさんの読書メーター

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
マッカーシー,コーマック
1933年、ロードアイランド生まれ。4年間を空軍ですごし、大学にもどって創作活動に入る。65年、長編デビュー。85年、第5長編Blood Meridianで新境地を開く。92年に発表した『すべての美しい馬』で全米図書賞・全米批評家協会賞を受賞。2007年、The Roadでピューリッツァー賞を受賞







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