『歴史の影絵』吉村昭著 2014
3/9
日曜日

先日読んだ「人体探求の歴史」に紹介されていた、そして今回読了の『歴史の影絵』に触発され、故吉村 昭氏の文庫本を6冊アマゾンで購入した。(※注1)

本書は、吉村 昭氏が自著を執筆するに当たって、機縁となった理由・因縁、それにまつわる四方山話で構成されている。収録されているお話は11篇。

 「軍用機と牛馬」の話題から。私が零戦に没入したのは吉村氏の「零式戦闘機」だったことも因縁深く思惟される。牛車で「零戦」を隠密に名古屋・大江から、各務原飛行場まで運搬した話題・苦労話だ。開戦直後、世界トップクラス、時速500キロを超す零戦が、時速2キロの牛に揺られて運ばれた。なんともギャップのあろうことか。(道の整備が悪く、車や馬では機が傷んでしまう) その牛(途中から穏やかで馬力のある馬も併用)たちは酷使され、飼料も充分与えられず(与えたくても与える餌が無かった)櫛の歯が欠けるように減っていった。

話は脱線するが、零戦を製作していた(中島飛行機もライセンス生産していたが)三菱の名古屋・大江は、私が3年近く住んだ最寄り駅の次の駅に当たる。乗り過ごして「大江駅」まで何度か行ったことがあるが、20台代後半の私は零戦にはまったく興味がなかったので、零戦のメッカであったことも知らなかった。(何と悔しい) 零戦に洗脳されていれば大江周辺を嗅ぎまわったに違いない。

最後の「伊号潜水艦浮上す」は言葉に詰まる。言葉にならない。皆さんには、どうでもよろしいか?

 「無人島野村長平」
 「反権論者高山彦九郎」
 「種痘伝来記」
 「洋方女医楠本イネと娘高子」
 「越前の水戸浪士勢」
 「二宮忠八と飛行器」
 「ロシア軍人の墓」
 「小村寿太郎の椅子」
 「軍用機と牛馬」
 「キ-77第二号機(A-26)」
 「伊号潜水艦浮上す」

歴史の影絵 (文春文庫)
吉村 昭
4167169398
登録情報
文庫: 198ページ
出版社: 文藝春秋 (2003/8/10)
ISBN-10: 4167169398
ISBN-13: 978-4167169398
発売日: 2003/8/10

内容紹介
種痘術を伝えた中川五郎治、シーボルトの娘イネの秘密、伊号第33潜水艦の悲劇など、作家の透徹した眼で実像を追う、歴史探求紀行

内容(「BOOK」データベースより)
江戸の漂流民長平の苦闘、種痘術を伝えた中川五郎治、シーボルトの娘・イネの出生の秘密、沈没した潜水艦で死を迎えた者たちの佇まい…。歴史小説の名作を世に送り出し続ける作家は、いかにして記録の裏側に迫るのか。史実に現れる日本人の美しさと優しさに触れつつ歴史の“実像”を追う、発見に満ちた旅。

(※注1)触発されて購入した本
 ・歴史の影絵
 ・光る壁画
 ・間宮林蔵
 ・脱出
 ・冬の鷹
 ・ポーツマスの旗





(2014/03/09 13:42)


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