『私記キスカ撤退』阿川 弘之著 2013
11/26
火曜日

タレント・エッセイストの阿川佐和子は阿川弘之の長女であるが、これはどうでもよろしいか。著者の阿川弘之氏は戦時中に、海軍予備学生として、対中国の諜報作業担当(暗号解読)に従事している。
先日読んだ『キスカ島 奇跡の撤退: 木村昌福中将の生涯』将口泰浩著と併せて購入した1971年の書籍であるが、「キスカ島 奇跡の・・」は本書を参考にして執筆されている部分もあり、内容的には事実が淡々と述べられている。また、著者が戦後、キスカ島を尋ね、島の状況や、遺品を捜し巡るレポートも興味深いところでもある。他、真珠湾攻撃時の状況を再現するため、飛行機をチャーターし、同じ進路・高度で雷撃機のように急降下、爆撃機のように高度を保ちながら、どのような景色が目の前に広がるのか、このレポートも興味津々といったところである。その他、ドキュメンタリーとして東郷平八郎や、キスカ撤回とは直接関係のない話題も挿話されているので、全体としては統一感が薄められた感は拭いきれないのではあるが、まあ、良しとしましょう。

私記キスカ撤退 (文春文庫)
阿川 弘之
B009HO4IYO
登録情報
フォーマット: Kindle版
ファイルサイズ: 390 KB
紙の本の長さ: 240 ページ
出版社: 文藝春秋 (2012/9/20)
販売: 株式会社 文藝春秋
言語 日本語

内容紹介
太平洋戦史の中で奇蹟とされる日本軍キスカ島守備隊の無血全員撤収。「霧の作戦」は、いかにして立案され、どのように実施されたのか? すでに何度も描かれた「語るに足る数少ない後味のいい史実」(あとがきより)であるキスカ作戦成功の全貌を、筆者が新取材と、独自の見方で描いた表題のドキュメントほか、戦後、文筆家として初めて玉砕の島を訪れたときの模様を描く「アッツ紀行」、「海軍の伝統と気風について」など、一貫して揺るがぬ著者の視点をあきらかにする好読物を併録。

※参考DVD
太平洋奇跡の作戦 キスカ【期間限定プライス版】 [DVD]

しかし、挿話の”「あゝ同期の桜」に寄せる”は絶品(失礼)である。特攻隊として若き命を捧げた遺書が何篇か掲載されている。母親への感謝の念、恋人への想い、やり残したこと、やりたかったことへの未練、残りの命にタイマーがセットされるにつけ、心が研ぎ澄まれてくる人が多いのは何故か。すべての一語一語が重たげに語りかけている。耐えられないではないか。






(2013/11/26 20:28)


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