『影踏み』横山秀夫著 2013
6/19
水曜日

ここに登場するのは、盗人、それも”ノビ師”と呼ばれるジャンルに、違うか、カテゴリー、ニュアンスが今一歩か、つまり分業化された専門職といえばいいだろうか。昼間、人がいないときに泥棒するのが”空き巣狙い”とすれば、この”ノビ師”は夜、住人が寝ている最中、忍び(シノビ)込んで、金銭を拝借するという非常に希有な能力の持ち主でなのである。そういう職業なので、一般の人はこの職業に就けることはまず不可能だろう。

盗人を持ち上げては行けない。反社会的で、罪のないカタギの人に対して行うべき行為ではない。盗人はクズであり、世の中にのさばらしておいてはいけないのである。

ここで登場する真壁修一という人物は、頭は切れるし、人情と正義感を持ち得ているので、憎みきれない。実に泣かせるいい奴なのだ。しかも、ずっと想い続ける綺麗な恋人がいるのに、とても粗末に扱っている。にも関わらず彼女は誠意をもって真壁という男を待ち続けている。そして、準主役と呼んでいいだろう、双子の弟、啓二が、兄の妙な部分に棲みついていることも重要なファクターとなっている。(バラサナイ)

そんなにいい人ならば、まっとうな生活をすればよい。
しかし、それでは小説にならない。
そういうことである。
横山秀夫氏の安定感。読む前から安心していられる。

影踏み
横山 秀夫
439663238X
登録情報
単行本: 328ページ
出版社: 祥伝社 (2003/11)
ISBN-10: 439663238X
ISBN-13: 978-4396632380
発売日: 2003/11

●内容(「BOOK」データベースより)
窃盗罪での服役を終え出所した真壁修一(34)が真っ先に足を向けたのは警察署だった。二年前、自らが捕まった事件の謎を解くために。あの日忍び込んだ家の女は夫を焼き殺そうとしていた―。生きている人間を焼き殺す。それは真壁の中で双子の弟・啓二の命を奪った事件と重なった。十五年前、空き巣を重ねた啓二を道連れに母が自宅に火を放った。法曹界を目指していた真壁の人生は…。一人の女性をめぐり業火に消えた双子の弟。残された兄。三つの魂が絡み合う哀切のハード・サスペンス。

●内容(「MARC」データベースより)
十五年前のあの日、男は法を捨てた…。一人の女性をめぐり業火に消えた双子の弟。残された兄。三つの魂が絡み合う哀切のハード・サスペンス。『小説NON』連載を単行本化。祥伝社ノン・ノベル創刊30周年記念特別作品。







(2013/06/19 21:43)


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