『月のしずく』浅田次郎著 2013
5/14
火曜日

「黒の舟唄」という唄がある。
野坂昭如氏のオリジナルで、1971年にヒットした。
出だしの歌詞のダークさと、”ロー・エンド・ロー”のフレーズが子供時代にも妙に耳の奥襞にこびり付いている。

男と女の出会いを語ることができるほど、僕は人生経験を踏んではいない。男女の出会いの瞬間というのは、それは今にでも、近しい未来にも何らかの形で否応無く、もしくは突然、不意に訪れるやもしれぬ。他人事ではない。そして、それぞれの男と女にも苦悩・煩悩・葛藤を精一杯、舟に積み込んできた消し去りたい、消し切れない「過去」というものがある。それが出会いの瞬間、ネガティブに作用するか、ポジティブにはじけるか、経験として躊躇するなり、バネにするなりして、まだ見ぬこれからを切り開くこともあるかもしれないし、頓挫してしまうこともあるだろう。

1+1=2、2÷2=1の筆算のように足しきれぬ、割り切れぬ世界が蔓延ろんでいる。一癖も二癖もあるのだ。それが、男と女の世界である。判ったような口を叩くではない。

時代小説作家としての浅田次郎も好きではあるが、男女のイキザマを書かせると、浅田次郎氏はそこはかとなく情緒を掻き立てる作家である。

Row and Row
人生、止まることなく魯を漕いでいこうぞ。

月のしずく
浅田 次郎
4163172602

単行本: 317ページ
出版社: 文藝春秋 (1997/10)
ISBN-10: 4163172602
ISBN-13: 978-4163172606
発売日: 1997/10

内容紹介
辛い荷役の労働と酒にあけくれる男のもとに転がり込んだ美しい女。互いの心を軋ませながらも癒しのドラマが始まる。表題作他全七篇
出版社からのコメント
ある十五夜の夜、酒を飲むことだけが生きがいの男のもとに転がり込んできた女…。奇妙な同居生活から生れた癒しのドラマ!








(2013/05/14 21:38)


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