『永遠の0ゼロ』百田尚樹著 2013
5/9
木曜日

先日、「海賊とよばれた男」で本屋大賞をとった百田尚樹氏のデビュー作品「永遠の0」を読んだ。

”零戦”、”特攻隊”のキーワードが本書を読むきっかけだった。(零戦と聞くだけで僕は馬の鼻に人参状態となるのだ)

祖父が特攻隊員だったと亡くなる寸前の祖母から知らされた孫にあたる姉と弟が、その祖父を知るという当時の人々を訪ね、回想を聞かされることで話は進む。

著者が参考文献とした著書28冊の半分以上は読破している自分にとっては戦中の出来事で目新しい発見はなかったが、当時、「生きて妻と子供の元へ帰る」という信念を崩さず貫き通した、一人の[戦闘機乗り]がどのような扱いを受けたか、また、周りの人達へ、その後の人生をプラスの方向に転進させたか、更に、姉と弟にまで好影響を与えていったのは何故か。話の進行と共に振り子が大きく揺れながら、徐々に治まっていくかのように鎮まっていく。そして、その顛末に誰しも驚愕してしまうだろう。

当時、お国のためとはいえ、一人の特攻隊が戦争を変えることなどあり得ないとわかっていても、自分が身を呈することで祖国を、愛する家族を守れるのだ、そう思わないで、何故に特攻に身を捧げることが出来たであろうか。

終盤の展開では、こう絡めてきたか、と前半の零戦オタクには退屈にさえ映っていた僕も背筋を伸ばせずにはいられなかった。幸い、電車の中で、目頭が熱くなるのをハンカチで押さえることはできたが、鼻水が一滴、流れ落ちるのは押さえきれなかったのが残念であった。

読了後、自分の心も朝もやのような静けさに包まれていた。

永遠の0 (講談社文庫)
百田 尚樹
406276413X
登録情報
文庫: 608ページ
出版社: 講談社 (2009/7/15)
言語 日本語
ISBN-10: 406276413X
ISBN-13: 978-4062764131
発売日: 2009/7/15

◆内容紹介
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。
◆著者からのコメント
この小説のテーマは「約束」です。
言葉も愛も、現代(いま)よりずっと重たかった時代の物語です。








(2013/05/09 22:26)


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