『縮みゆく人間』リチャード・マシスン著 2012
8/24
金曜日

リチャード・マシスンの読破計画進行中の9冊目。1956年の作品。
(リチャード中毒症になってしまった)

人間が放射能や、殺虫剤を浴びて、無限に縮んでゆく、というのはチープなコンセプトで、”あり得ない”と、一般世論の大多数ではあろうが、それはそれとして、実際に、自分自身が縮んでいったときを想像してみよう。

夫として、綺麗な妻を抱けなくなる惨めさを痛感した時、娘を超して縮んでいく自分が父親としての威厳を保てなくなった時。マスコミにさらし者になった時。さらに、縮んで、飼い猫に襲われ、更に1インチを割ったとき、蜘蛛に襲われた時。それぞれ、どのように対応・対処していったか。心の葛藤はどのようであったか。もう、自分の身体が無くなる寸前、星の美しさだけは変わらないと感じた主人公。そう感じると、心が深く満ち足りて、宇宙に比べれば、ちっぽけなものではないか、と悟りとも言える境地に至ったこと。

まあ、マシスンの考え方の幅・深さと、その表現方法。彼の思考の捻り込みと、深さ加減、回転力の強弱は並大抵ではない。普通サイズの人間でよかったと、読了後にあなたも感じるでしょうよ。


縮みゆく人間 (ハヤカワ文庫 NV 129)
リチャード・マシスン 吉田 誠一

登録情報

* 文庫: 294ページ
* 出版社: 早川書房 (1977/01)
* ISBN-10: 4150401292
* ISBN-13: 978-4150401290
* 発売日: 1977/01

(wikipediaより)
核実験によるスコールと、街中で噴霧された殺虫剤を浴びたスコット・ケアリーは、それらの相乗効果により、肉体が縮んでいくという恐るべき事態に直面する。あらゆる治療の甲斐なく1日に1/7インチずつ縮んでいくスコットは世間の好奇の目にさらされ、その肉体以上に精神的にダメージを受け、献身的に尽くす妻との仲も崩壊していく。

ある日、ひょんなことから家の外に放り出されてしまったスコットは鳥の襲撃を受け、逃げるうちに地下室に落とされてしまい、家族からも隔絶されてしまう。一寸法師のようになり、体にスポンジのかけらをまとった彼は、執拗に襲いかかる蜘蛛に針を使って戦い、高層ビルのように聳え立つ家具の上に置かれたクラッカーと漏水で飢えをしのぎながら、孤独な生存競争を続ける。

そして体長がいよいよ1/7インチとなった日、スコットが死んだと思い込み家を去っていく家族に、彼は懸命に自分の存在を訴えるが気づいてもらえず、絶望しながらも、自分の人生に誇りを持ちながら深い眠りにつくのだった。










(2012/08/24 21:19)


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