『アイ・アム・レジェンド』リチャード・マシスン 著 2012
7/3
火曜日

僕のリチャード・マシスン読破計画、2作目となる「アイアム・レジェンド」。
何度か、映画化され、ご覧になった方も多いのではないか。(僕は観ていないが・・)
映画に合わせて、改題されているが、原題『地球最後の男』(※注1)が僕にはピンとくる。

本作品は、リチャード・マシスン、1954年の作品であり、「ゾンビ」を扱った夥しい数のB級ホラー作品、マイケル・ジャクソンのスリラーでのゾンビが踊るダンス、ゲームソフト、あらゆるジャンルで利用価値の高かった(興行的にヒットした)引き金となっており、それらの原点になったのが本書である。

さぞや、おぞましい世界を描いた作風だと思われるだろうが、これは、文学作品である、と僕は言い切りたい。

なぜなら、妻や子供を失った主人公の、一人取り残された真人間の苦しみを、嘆き・心の葛藤が年月を経るに従って、心境変動する描写が絶品だと感じるからだ。(例えば無条件に娘を行政指導で焼かざるを得なかったこと、一度葬った嫁が、蘇り舞い戻るが、自らの手で心臓に杭を打ち込まなければならなかったことを自分の身に置き換えた場合、絶望・苦悩をどのように表現できるか、これがマシスンならではの作家としての技量であって、読み手に震えさせるほどの感情移入をさせてしまうところにある。)

また、孤独の中で希望も生き甲斐も失い、酒浸りの毎日。ある日、生き延びている犬を発見。手なずけ、愛情を持って接しようとする主人公の温かなシーンもストーリーに変化を持たせている。が、その犬も短時間で死に絶えてしまう。まさに天涯孤独、友達はゾンビだけ、えらいこっちゃ、です。

葫、十字架、杭、・・・、などなど、ゾンビ特有のキーワードはモチーフとして採り上げられている。しかし、何故、吸血鬼となり得たのか、何故、死者は蘇るのか、葫に弱いのか、鏡に戦くのか、十字架に怯えたり、そうでないゾンビの違いは何なのか、何故ゆえ、日の光に弱く、夜行性なのか、なぜ、弾丸では死なず、木の杭が有効な殺戮手段となるのか、皆さん、説明できますか?

そのようなことを類推しながら、医学書的な見地からも考察が加えられているところにある。
マシスン恐るべし。

巻末の解説で、「リチャード・マシスンがいたからこそ、わたしも活躍できるのだ」-スティーヴン・キング-
というのは、彼贔屓の僕にとっては、まさにリチャード・マシスンは師匠であって神様扱いをする気持ちは多いに頷けるのである。

まだまだ、書きたいところではあるが、この辺りで止めにしましょ。
あまり、グロテスクな、血飛沫が迸る表現は多くないから、是非、お読みなされ。
お節介だろうな、これは。



アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV)
アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV) リチャード・マシスン 尾之上浩司

早川書房 2007-11-08
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登録情報
文庫: 286ページ
出版社: 早川書房 (2007/11/8)
言語 日本語
ISBN-10: 4150411557
ISBN-13: 978-4150411558
発売日: 2007/11/8

◆内容紹介
【ウィル・スミス主演映画化!】
夜が来る。ネヴィルは一人、キッチンで夕食の用意をする。
冷凍肉をグリルに入れ、豆を煮る。
料理を皿に盛っているとき、いつものように奴らの声が聞こえてきた。
「出てこい、ネヴィル!」……
突如蔓延した疫病で人類が絶滅し、
地球はその様相を一変した。
ただ一人生き残ったネヴィルは、自宅に籠城し、
絶望的な戦いの日々を送っていた。
そんなある日……
戦慄の世界を描く名作ホラー、
最新訳で登場!(『地球最後の男』改題)

(※注1)
"I Am Legend" は1954年に発表された。日本では新たな版が刊行されるたびに異なるタイトルが付けられた。
以下にその変遷を示す。(出典:ウィッキペディア)
1.『吸血鬼』 - 1958年、早川書房(ハヤカワSFシリーズ)、田中小実昌訳
 作者名の表記はリチャード・マティスンとなっている。
2.『地球最後の男〈人類SOS〉』 - 1971年、早川書房(ハヤカワ・ノヴェルズ)、同訳
3.映画『地球最後の男オメガマン』公開に合わせて再刊された。
4.『地球最後の男』 - 1977年9月、早川書房(ハヤカワ文庫)、同訳
 文庫化に際して改題された。
5.『アイ・アム・レジェンド』 - 2007年11月、早川書房(ハヤカワ文庫)、尾之上浩司訳
 映画『アイ・アム・レジェンド』公開に合わせて新訳が刊行された。







(2012/07/03 22:20)


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