ここ、一年近く、迷い猫に対する僕の扱いはひどいときもあった。
迷い猫を何度かカゴに入れては捨てに行った。
上野の不忍池では、ポイっとすてて振り返ることすらしなかった。
しかし、帰趨本能なのか、その迷い猫は戻ってくることもあったし、僕も良心が咎め、探しに行くこともあった。
そういった罪滅ぼしも兼ねて、迷い猫をカゴに入れ、汐留の「ブラバテーブル」へ食事に出掛けた。
夜景が色とりどりの蛍を散らしたように僕たちを包んでいた。
迷い猫は、にんまり顔で、円らな瞳は潤々と輝いていた。
やはり、僕は迷い猫が必要なのだろうか。
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