『女性たちの戦争』 2012
5/19
土曜日

読書も通勤途中に混雑を避けて読むのが常である。
しかし、最近は目の老化激しく、「離せば判る」であるし、照度不足であれば、
読むに耐えられない状況でもある。


今回の著書は、複数連名執筆のオムニバスであるが、戦場に直接赴いた兵士ではなく、戦時中を生き抜いた庶民の”イキザマ”、”心の葛藤”が読者を引き込む。

特にうるうると心を掴まれたのは、「ぽぷらと軍神」、「字のない葉書」「ごはん」、「見よ落下傘」、「裸の捕虜」あたりか。「私の赤マント」はユーモアたっぷり。

どれも捨て作品はない。


まあ、兵士が戦場で戦うだけが戦争ではなく、戦時中の日本国中が、強制連行された異国人だちが、忍耐を強いられ、精神的には虐待生活を送っていたのであろうし、ひもじい思いをしていた。愛しい人や、親が子を想う気持ちは計り知れないものがある。それぞれの作品は、それらの心理状態が浮き彫りにされており、当時の匂いまで漂ってくるではないか。

活字の力は絶大である。
何故に、これほどまでに自分の心に土足で問いかけてくるのだろうか。

今は平和なのか、平和ボケなのか、よくわからない。
つべこべ言わずに、読め、と言いたい”お勧め本”である。

女性たちの戦争 (コレクション 戦争×文学)
大原 富枝 長谷川 時雨 中本たか子 上田 芳江 瀬戸内 晴美 吉野 せい 藤原 てい 田辺 聖子 河野 多恵子 大庭 みな子 石牟礼 道子 壺井 栄 高橋 揆一郎 竹西 寛子 司 修 一ノ瀬 綾 冬 敏之 寺山 修司 三木 卓 小沢 信男

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集英社 2012-01-05
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【登録情報】
* 単行本: 712ページ
* 出版社: 集英社 (2012/1/5)
* 発売日: 2012/1/5

【内容紹介】
銃後という名の戦場を生き抜いた人々の物語
勤労動員、空襲、疎開、引き揚げ。銃後の人々は、日常に浸潤してくる戦争といかに関わったのか。河野多惠子、三木卓、向田邦子、石垣りんらが書き残した、女性や子ども、外国人ら、非戦闘員の戦争


【収録作品】
1.大原 富枝 「祝出征」
2.長谷川 時雨 「時代の娘」
3.中本 たか子 「帰った人」
4.上田 芳江 「焔の女」
5.瀬戸内 晴美 「女子大生・曲愛玲」
6.吉野 せい 「鉛の旅」
7.藤原 てい 「襁褓(オムツ)」
8.田辺 聖子 「文明開化」
9.河野 多恵子 「鉄の魚」
10.大庭 みな子 「むかし女がいた1~3」
11.石牟礼 道子 「木霊」
12.壺井 栄 「おばあさんの誕生日」
13.高橋 揆一郎 「ぽぷらと軍神」
14.竹西 寛子 「兵隊宿」
15.司 修 「銀杏」
16.一ノ瀬 綾 「黄の花」
17.冬 敏之 「その年の夏」
18.寺山 修司 「誰でせう」「玉音放送」
19.三木 卓 「鶸」
20.小沢 信男 「私の赤マント」
21.向田 邦子 「字のない葉書」「ごはん」
22.阿部 牧郎 「見よ落下傘」
23.鄭承博 「裸の捕虜」








(2012/05/19 11:25)


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