クラウドの「のぼり」利用の進展により情報がおのずと蓄積される 2012
3/23
金曜日

シリーズブログ。

野村総合研究所の鈴木良介氏の著書『ビッグデータビジネスの時代』から、なるほどと感銘した部分をピックアップしてみたい。あくまで、本内容は以下の著書からであり、興味のある方は著者に敬意を表して本をご覧いただけますよう。

ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略
鈴木 良介
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内容紹介
「ビッグデータビジネス」は、産業界全般で進むクラウド利用と併せて、2010年代の情報・通信分野における注力すべきテーマの1つになることが予想されています。
本書では、海外を中心とした「ビッグデータ」の活用企業および、活用を支援しようとするIT事業者の最新動向や戦略、ビッグデータビジネスを検討する視点を詳細に解説します。
また、Hadoop、DWH、CEPなどのビッグデータ活用を支える技術やその周辺技術の動向を紹介するとともに、ビッグデータ活用のための課題や利用サイド事業者/支援サイド事業者双方における今後のビッグデータビジネスの将来像などについて広範に解説します。

・ビッグデータビジネスとは何か?
・ビッグデータビジネスの効用と活用事例
・主要陣営の戦略とビッグデータ活用を支える技術
・ビッグデータ活用に向けた3つの阻害要因
・ビッグデータビジネスの将来予測

内容(「BOOK」データベースより)
国内&海外のビッグデータ活用事例、Hadoop/DWH/CEPなどビッグデータ活用を支える技術の解説から主要IT事業者の戦略と商材、将来予測までビッグデータビジネスを徹底網羅。ビッグデータビジネスとクラウド以降のIT潮流を掴むための最適な1冊。

2000年代後半より注目を浴びている「クラウド」がビッグデータビジネスの「ゆりかご」として、どのような役割を担うのか、
(1)ビッグデータビジネスの「ゆりかご」としてのクラウド
(2)クラウドの「のぼり」利用の進展により情報がおのずと蓄積される
これら2つの点から著書より解説する。

今回は前回の、「(1)ビッグデータビジネスの「ゆりかご」としてのクラウドから」に続き、
(2)「クラウドの「のぼり」利用の進展により情報がおのずと蓄積される」を解説する。

2000年代後半より注目を浴びている「クラウド」がビッグデータビジネスの「ゆりかご」として、どのような役割を担うのか。

利用サイド事業者において、クラウド利用の進展がビッグデータの活用を後押しすると考えられる理由はもうひとつある。クラウド利用環境では、サーバに多くのデータが集約・蓄積されるためである。データを集約することは、ビッグデータを活用するための基本的な環境整備となる。

「データの収集と分析から、事業に役立つ知見を導き出す」という点は、従来から多くの事業者の関心事項であるが、「サーバにデータが集約されること」の効能については、クラウド利用が拡大しつつある近年において、特に注目するべき事項といえる。クラウド利用環境下においては、おのずとサーバ側へのとデータが蓄積されるようになるためである。

ビッグデータビジネス興隆の背景として、クラウドの利用進展は重要な役割を担うが、それを理解するためには、クラウドを少し違う視点から位置づけるとよい。


クラウドは従前、「ネットワーク越しに利用される巨大な計算資源やデータの蓄積場所」として位置づけられてきた。端末に保持し得ぬほどの、大量の計算リソースやデータをサーバサイドに置いておき、必要に応じて、端末から呼び出して利用するという視点である。たとえば、電子書籍サービスは、サーバサイドに置かれた大量の電子書籍データから、利用者が必要とするものを「いつでも、どこでも」利用可能な状態にするサービスであるといえる。

このように、「ネットワーク越しに、クラウドの効用を端末側で享受する」という見方は、クラウドから端末サイドへと付加価値が『くだる』状況に注目した位置づけといえる。


              


一方、ビッグデータビジネスにおけるクラウドの役割を考える際には、付加価値がクラウドへと『のぼる』状況に注目すべきである。すなわち、端末から様々なデータがネットワークを介してクラウド側へと集約される状況である。



たとえば、電子書籍サービスを例に考えると、クラウドから端末に対しては電子書籍データが流れる『くだる』一方で、端末からクラウドに対しては、「誰が、どのような時点において、どのような電子書籍を読んでいるのか?」という利用能動情報を取得する『のぼる』ことが可能になっている。たとえば、アマゾンは電子書籍端末上で、関心のあるところに対して下線を引く機能とその共有サービス(Amazon Popular Highlight)を提供し始めているが、このような「どこを面白いと感じたのか」というデータも、端末からクラウドへと吸い上げるべきデータの好例である。


携帯電話、PC、その他のネットワーク接続可能端末において生成された、多種多様なデータは、ネットワークを介してクラウドに集約・蓄積されることになる。このようにして、クラウドにビッグデータが蓄積され、活用につながるのである。







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