『社会リズム療法』(5)-活動の量と刺激のバランスを知る 2012
3/21
水曜日

数回に渡り、「社会リズム」をピックアップしていこう。
本内容は、以下の著書からの要約であり、リワークプログラムの中でも教わった内容となる。
きちんと確認したい方は、本書を手に取ることをお勧めする。

対人関係療法でなおす 双極性障害
水島広子
4422114638

内容紹介
《対人関係療法でなおすシリーズ》の3冊目。「双極性障害」(=「躁うつ病」)とは、気分の高揚とうつ状態とが繰り返し訪れる病気である。単極性のうつ病と誤診されたためにうつがなかなか治らなかったり、病気ではなく性格の問題だとされて、きちんとした治療を受けられずに何年も過ごしている患者さんも多い。また、きちんと診断されても、これまでは薬物療法しか有効な治療法がなかった。本書では、「対人関係」と「社会リズム」という、この病気を発症させる二つの大きな要因に焦点を当てて、薬物療法以外に、自分自身でコントロール可能な方法を日本で初めて紹介する。

<目次>
はじめに
第I部 双極性障害を患うということ  
第1章 双極性障害という病  
第2章 双極性障害と社会リズム
第II部 対人関係・社会リズム療法(IPSRT)の進め方  
第3章 対人関係・社会リズム療法とは  
第4章 社会リズム療法  第5章 対人関係療法  
第6章 双極性障害対策チームを作る
本書の内容の理解を深めるための参考文献
あとがき


「社会リズム」シリーズの第五回目は「活動の量と刺激のバランスを知る」の要約となる。

SRMの第一の目的は、日常生活を規則的にすることだが、自分の日常活動をよく検討して、それが気分にどういう影響を与えているかを知るためにも役立つ。そして、自分にとって最も気分のバランスがとれる睡眠、社会的なやりとり、知的な刺激はどのくらいのものかを判断していくことにある。

活動の刺激が強すぎると<躁>になり、活動の刺激が少なすぎると<うつ>が促進されるということも観察されている。

認知療法の一部に、「行動活性化」(BA:Bchavioral Activarion) という技法がある。実は、単極性のうつ病に対しては、行動活性化の部分だけでも、認知療法全体を行うのと同じだけの効果があるという研究結果をジェイコプソンらが発表している。うつ病の治療において、行動を活性化することにはそれだけの治療効果があるということになる。双極性障害の場合には、<躁>にならない程度に行動を抑制し、<うつ>にならない程度に行動を活性化する必要があるわけである。

よって、どのくらいの活動量と刺激が自分の気分の安定に最も貢献するのかを調べていくのは重要な作業である。双極性障害は一生に関わる病気であるから、この判断には数ヶ月をかけてじっくり行う必要がある。季節性の変動がある人もいるので、季節をまたいだ観察も必要となる。夏にはちょうどよいバランスが、冬にもよいとは限らない。女性の場合は、月経周期によって気分が変動する人も多い。月経周期による気分の揺れとエピソードの再発とは区別する必要があるので、気分の落ち込みが月経前に特有であれば、それはそういう傾向として捉えていくようにする。もちろん、月経間前後は気分障害が起こりやすい時期でもあるため、その時期には、前のエピソードのきっかけになったようなことを極力避ける必要がある。

SRMと資金の経過を振り返って、どういうときに睡眠障害が変動するのか、刺激が変動するのか、というようなことを見ていく。「コンサートに出かける」「演劇を観にいく」などという行動の刺激が強すぎることがわかったら、その頻度を調整したり、刺激の強度を下げるための工夫を考えたりしよう。楽しみを全て諦めるわけではなく、刺激的過ぎないぎりぎりのラインを見つけるようにしよう。

且つ同僚や刺激のルールを決めたら、「ちょっとくらいはいいだろう」という例外を設けずに、明確な線を引くことが大切である。

エピソードの予防と言う確固たる目的があるからであり、双極性障害の場合、エピソードが再発するととても高くつくことになるからである。

双極性障害は、エピソードとエピソードの間には原則的に無症状になる病気であるが、実際には<軽度のうつ>でいる人が多いことも知られている。特に、双極Ⅰ型障害の人の中には、<躁>になるのが怖くて、常に生活を抑制にして<軽度のうつ>でいようとする人もいる。<躁>の直後にそんな気持ちになるのは理解できるが、これは、長い目で見るとお勧めできない。第一に、本人の生活の質を大きく低下させるからである。日常の基本的な気分が<軽度のうつ>ではなく<正常気分>になることは、人間として当然求めてよい幸福であり、治療できちんと取り組むことによって実現可能な目標である。

第二に、生活を抑制的にし過ぎてしまうと、その活動量と刺激の少なさから、本格的なうつ状態を招く結果になり兼ねない。自己流の[治療]で<軽度のうつ>に落ち着けるのではなく、本当の治療によって、正常気分で日常を過ごし、将来のエピソードも可能な限り予測するというのが正常な治療目標である。治療の中では、過去のエピソードによって受けた傷を癒すというプロセスも必要になってくる。

SRMをつけてみると、活動量や刺激が極端に少なく、<軽度のうつ>が毎日続いているかもしれない。そうであれば、無理のない範囲で活動量や刺激を増やすという工夫をしたほうがいいだろう。



且つ同僚や刺激を工夫する際には、安全に行う必要があるので、ぜひ、主治医と相談の上、実行してみよう。



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