「支援サイド事業者は、ビッグデータビジネスへの取組みを進めざるを得ないのか?」の理由 2012
3/20
火曜日
春分の日

「ビッグデータ」シリーズブログ。6回目ですか。

野村総合研究所の鈴木良介氏の著書『ビッグデータビジネスの時代』から、なるほどと感銘した部分をピックアップしてみたい。あくまで、本内容は以下の著書からであり、興味のある方は本を手にとってご覧いただけますよう。

ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略
鈴木 良介
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内容紹介
「ビッグデータビジネス」は、産業界全般で進むクラウド利用と併せて、2010年代の情報・通信分野における注力すべきテーマの1つになることが予想されています。
本書では、海外を中心とした「ビッグデータ」の活用企業および、活用を支援しようとするIT事業者の最新動向や戦略、ビッグデータビジネスを検討する視点を詳細に解説します。
また、Hadoop、DWH、CEPなどのビッグデータ活用を支える技術やその周辺技術の動向を紹介するとともに、ビッグデータ活用のための課題や利用サイド事業者/支援サイド事業者双方における今後のビッグデータビジネスの将来像などについて広範に解説します。

・ビッグデータビジネスとは何か?
・ビッグデータビジネスの効用と活用事例
・主要陣営の戦略とビッグデータ活用を支える技術
・ビッグデータ活用に向けた3つの阻害要因
・ビッグデータビジネスの将来予測

内容(「BOOK」データベースより)
国内&海外のビッグデータ活用事例、Hadoop/DWH/CEPなどビッグデータ活用を支える技術の解説から主要IT事業者の戦略と商材、将来予測までビッグデータビジネスを徹底網羅。ビッグデータビジネスとクラウド以降のIT潮流を掴むための最適な1冊。

前回の最後に問題提起していた、「支援サイド事業者は、ビッグデータビジネスへの取組みを進めざるを得ないのか?」の理由について今回進めていこう。

(1)利用サイド事業者の「電子化・自動化」に関するIT投資が一巡したため
(2)クラウドの影響もあり,ICT市場全体が縮小傾向にあるため
(3)基本的な計算能力・ストレージ容量や入出力性能の費用対効果が向上しているため
(4)ビッグデータ活用を支える技術・商材が登場しているため

と本書は挙げている。
(1)は既に説明済であるので、
(2)の『クラウドの影響もあり,ICT市場全体が縮小傾向』の要因について整理しよう。

■クラウドによる国内ICT市場全の縮小

クラウドの利用進展により、近い将来、国内ICT市場は縮小すると予想される。

情報システムの利用サイド事業者の多くは、クラウド利用の目的として、情報システム関連支出の低減を意図している。情報システム部門は大抵の場合、「いかにすれば、現在と同等の活動を、より低いコストで実現できるか」ということを考えざるを得ない立場にある。

併せて、国外のクラウドサービスへの利用者流出も想定される。クラウドは、ネットワークを介在して、サーバーサイドに置かれたサービスを利用するものである。そのため、「どうせネットワークを介してサービスを利用するのであれば、東京のサービスを使うのも、カリフォルニアのサービスを使うのも変わらない」という判断が生じるためである。

もちろん、「国内事業者が提供するクラウドサービスを、国外の利用事業者が利用することに伴い、国内CIT市場が拡大する」という事態も考えられるが、これを支持するような事例は今のところ見当たらない。

同様に、「外部事業者のICTサービスの価格が低減するために、中小事業者もその費用を負担しつつもサービス利用できるようになり、総額として市場は拡大する」という考え方がよく示される。ソーシャル・アプリケーション・プロバイダなどのいわゆるIT系スタートアップ事業者に当てはまるだろう。しかし、世の多勢を締める中小事業者にとっては、「それでも高いコスト」や「『サービスとしての提供』という概念の不明確さ」がボトルネックとなり、大幅な導入増加は現時点においては確認できない。

結果、価格の低減に基づく売り上げの縮小」を主因として、システム開発・パッケージソフト・危機販売等を中心としたICT市場は縮小傾向を迎えることが危惧される



縮小する国内ICT市場において活路を見出すためには、新たな事業領域の開拓が必要である。情報システムを利用する多くの事業者において、「情報システム部門の基本的な業務は現行のシステムを間違いなく動かし、コストをできるだけ削減すること」である。当然にして、情報システムに関するコスト削減の延長線上に、「新たな事業領域の拡大」は存在しない。

システム開発事業者をはじめとした既存事業者が、新しい事業領域を開拓するためには収益増加を目的に、投資を検討することができる事業部門に対して付加価値を訴求することが必要であろう。コストセンターはコストを削減することから逃げられない。プロフィットセンターはコストセンターと異なり、収益最大化という観点から検討を行うことが「不可能ではない」立場にある。



「クラウド」は情報システム実装に関する方法論に過ぎない。情報システム部門にとっては「情報システムをどのうように提供するか」は一大事かもしれないが、事業部門に対して訴求するためには、それを踏まえた「情報システムで何を実現するのか」「事業そのものに対してどのような付加価値を与えうるのか」という点に焦点を合わせた検討を行う必要がある。

このような議論は従来もされてきたが、「クラウドの特徴を活かすことによってどのような付加価値の提供が可能になるか」という点については、クラウド利用の進展が現実的になってきたこのタイミングにおいて検討すべき論点といえるだろう。








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