事業者におけるIT活用の段階を示す「第1の壁」と「第2の壁」 2012
3/15
木曜日

前回の続き。数回のシリーズを予定している。

野村総合研究所の鈴木良介氏の著書『ビッグデータビジネスの時代』から、なるほどと感銘した部分をピックアップしてみたい。あくまで、本内容は以下の著書からであり、興味のある方は本を手にとってご覧いただけますよう。

ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略
鈴木 良介
479812530X

内容紹介
「ビッグデータビジネス」は、産業界全般で進むクラウド利用と併せて、2010年代の情報・通信分野における注力すべきテーマの1つになることが予想されています。
本書では、海外を中心とした「ビッグデータ」の活用企業および、活用を支援しようとするIT事業者の最新動向や戦略、ビッグデータビジネスを検討する視点を詳細に解説します。
また、Hadoop、DWH、CEPなどのビッグデータ活用を支える技術やその周辺技術の動向を紹介するとともに、ビッグデータ活用のための課題や利用サイド事業者/支援サイド事業者双方における今後のビッグデータビジネスの将来像などについて広範に解説します。

・ビッグデータビジネスとは何か?
・ビッグデータビジネスの効用と活用事例
・主要陣営の戦略とビッグデータ活用を支える技術
・ビッグデータ活用に向けた3つの阻害要因
・ビッグデータビジネスの将来予測

内容(「BOOK」データベースより)
国内&海外のビッグデータ活用事例、Hadoop/DWH/CEPなどビッグデータ活用を支える技術の解説から主要IT事業者の戦略と商材、将来予測までビッグデータビジネスを徹底網羅。ビッグデータビジネスとクラウド以降のIT潮流を掴むための最適な1冊。


ここで著者の鈴木良介氏がユニークな切り口で競合環境にある状況を
「第1の壁」
「第2の壁」
と分類している。

「第1の壁」とは、電子化と自動化ができているか、いないかを分かつ壁、と言っている。いまだに「書類とハンコがぐるぐる社内を回っています」という非効率な手続が残っている会社もあるだろうが、それは「第1の壁」(電子化・自動化の壁)を超えていない事例といえる。この10~20年で業務の効率化は電子化・自動化により大きく進展し、「第1の壁」を乗り越えた事業者が増大した。

「第2の壁」は多くの事業者が直面するもの。「第1の壁」を乗り越えた事業者は、次に何を課題と考えているのか。多くの事業者において、「電子化・自動化はしたけれども、何か新しい付加価値の導出ができないものか?」という状況にあるだろう。

目の前には電子化・自動化が進んだ結果、膨大なデータが生成・蓄積されている。しかし、ただ蓄積されているだけ、すなわち<死蔵>しているだけのこともあれば、蓄積にすらいたらず、<垂れ流し>となっていることもよくあるだろう。確かに、電子化・自動化により大幅な業務効率化は実現しているものの、新しい付加価値の導出に成功しているかというとそうはいえない事業者はまだ多い。

この状況は、IT活用に関する「第2の壁」(知見導出の壁)に直面している状況といえるだろう。



アマゾンなどは、第2の壁を越えた好例であるし、国内外においてさまざまな事業者がこの壁を越え始めている。

「第2の壁」を乗り越えた先にある便益に、世界中の誰もが気がついていないのであれば、その壁を乗り越える労を敢えてとる必要はないかもしれない。しかし、その壁の向こうにある大幅な効率化・収益性の構造に誰かが気が付けば、あとは「追いつき、・追い越すこと」を目指さざるをえない。そうでなければ、次元の違う競争力によって本業での敗北を喫するだけである。これが利用サイド事業者において、ビッグデータに取り組むべき大きな理由である。

と著者は辛口であるが、世の趨勢であろう。






(2012/03/15 20:04)


Copyright (C) 2012 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.