怒りの指数は? コントロール法は?(4) -気持ちを落ち着かせよう-

2012
2/12
日曜日

前回の「願望を実現させる手段にする」に続くシリーズ第4回目。

『いやな気分よ、さようなら』から怒りについてシーリーズで要約してみたい。

誰にでも怒りはあるもの、その辺りをどのように緩和するか、多分、恐らく、皆さんにも有益な部分はあるはずだから、参考になればと期待を込めて。

本シリーズはこのように分割したい。

1. NOVACO怒りの評価尺度
2-1. なぜ腹が立つのか
2-2. なぜ腹が立つのか
3. 願望を実現させる手段にする
4. 気持ちを落ち着けよう
5. 想像法
6. ルールを書き直す
7. 狂った態度を受け入れる
8. 洗練された操縦法
9. 「すべき思考」を止めること
10. 交渉の戦術
11-1. 正確な感情移入
11-2. 正確な感情移入
12. 統合認知リハーサル
13. 自分の怒りについて知る事柄

〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法
デビッド・D.バーンズ 山岡 功一 夏苅 郁子
David D. Burns 佐藤 美奈子 林 建郎 小池 梨花

4791102061

内容(「BOOK」データベースより)
認知療法の気分改善効果は、驚くべきものである。うつ病に対して、抗うつ薬と同等か、それ以上の治療効果があると証明された初めての精神療法、それが認知療法である。本書は、人生を明るく生き、憂うつな気分をなくすための認知療法と呼ばれる最新の科学的方法を示す。抑うつ気分を改善し、自分の気分をコントロールする方法を身につけるための最適の書。

◆気持ちを落ち着けよう

いったん気持ちを鎮めると決めたら、怒りを助長するような無価値なものは、腹が立つとき心をよぎる「怒りの考え」として書き留めておくべき。苛立ちを鎮めるためにはダブルカラム法(図1.3)で客観的な「落ち着いた考え」を書き留めてみよう。頭をよぎる反論に気をつけるために「怒りの考え」を「第三の耳(客観視)」で聞いてみよう。何も考えずにこの対話を記録する。あなたは実に多彩な言葉や復讐心を思い浮かべるだろう。全部書き留めておこう。そしてもっと有用(自分をたまめるために役立つこと)で興奮の少ない「落ち着いた考え」に置き換えてみよう。そうすることで刺激されたり、圧倒されることが少なくなるだろう。

前述の【例】の続き

恵子は夫の前妻の子、理沙が夫、忠男にまとわりついているときに感じるフラストレーションを解決するために、このダブルから無法を試してみた。恵子は夫に、理沙にもっと厳しくするように言い続けていた。しかし夫はその反対の行動をとった。逆に夫は妻が小言ばかり言って自分の思うようにしようとしていると感じ始めた。その結果、忠男は妻の恵子と過ごす時間はますます少なくなっていた。

恵子は嫉妬と罪を感じる「怒りの考え」(図1.3)を書き留め、そして「落ち着いた考え」に置き換えた。恵子は気分が和らぎ忠男を支配したいという衝動の解決の役に立った。それでも理沙を我侭にさせておく夫が悪いと感じていた。そこで、夫にも「たまには間違うこともある権利」があると考えることに決めた。その結果、恵子は忠男への口出しが減り、夫は気分が楽になった。二人の関係は改善し互いに自由で尊敬し合えるものとなった。もちろん「怒りの考え」を考え直すことだけがこの二人の再婚を成功させる要素ではない。しかしこれがなければ再婚は行き詰ってしまうような大切な大きな第一歩だったと言えよう。



図1.3 恵子は夫が自分勝手に振舞う娘を甘やかしているものを見たときに感じた「怒りの考え」を書き出した。しかし、「落ち着いた考え」をすると嫉妬と恨みは消えた。

◆怒りの考え

◆落ち着いた考え

①なんで彼は私のことを聴こうとしないんだろう。

①夫は私の思うとおりに何もかもやらなくてはいけない義務なんてない。よく話は聴いてくれるんだけど、私が気紛れだから嫌気がさしてきたんだ。

②理沙はうそつきだ。働いているというがそんなことはない。忠男の助けを期待している。

②理沙は元々嘘つきで怠け者で、学校では人を利用するだけだ。働くのが嫌で、それが問題なのだ。

③忠男はとても忙しく、自由な時間がない。もし、その上に娘のために時間を取られれば、私は一人になり子供の世話も一人でしなければならなくなる。

③私は一人が好きだ。自分の子供の面倒は一人で見ることができる。おそらく夫は私が怒らなくなれば、もっと私と一緒にいたいと思うようになるだろう。

④理沙が私から離れていく。

④その通り。でも私は大人だ。一人でも耐えられる。夫が自分の子供をかまっていても怒ることはないのだ。

⑤忠男は人を操る。

⑤夫も大人だ。夫が理沙の助けをしたくないならそうすることもできる。関わらずにいよう、私には関係ないことだ。

⑥そんなこと許せない。

⑥簡単だ。一時のことだ。もっと悪いこともあった。

⑦私は子供っぽすぎる。私は罪を感じるべきだ。

⑦私は時には未熟でいたっていい。私は完璧ではないしその必要もない。罪の意識など必要ない。救いも入らない。


怒りを鎮めるためにさらに精密なチャートである「歪んだ考えの日常記録」を使うこともできる。怒りを感じるような場面や評価での怒り具合の違いを、この練習の前後で比べることもできる。図1.4は若い女の子が電話で自分を雇ってくれそうな人と簡単なやり取りをしてるときのフラストレーションにどう対処したかを示したもの。彼女は「怒りの考え」を抑えておくことで嫌な思いを避けることができたという。この抑えられた苛立ちこそが彼女の毎日を気まずくしていた源であった。でも、相手よりも十倍も悪く自分自身を扱っていたことがわかった。一度これに気付いたら落ち着いた考えに置き換えることは沿う難しくはない。「自分でもこんなにうまくいって驚いています」と語った。

                       図1.4 歪んだ考えの日常記録

刺激的状況

感情

怒りの考え 落ち着いた考え 結果

パートタイムの医学文献を転写する新聞の求人広告だった。「多少の経験」が必要と書いてあった。最初その男はその会社がどんな会社なのか十分説明しなかった。その上で私を十分な経験がないからと採用しなかったのだ。

怒り(99%)
嫌悪、葛藤

1.間抜けだ。何を考えているんだ。私は十分経験があるんだ。
2.あれは新聞で一番言い仕事だった。それはうまくいかなかった。
3.親に叱られる。
4.もう泣くしかない。

1.こんなに興奮することないんだ。彼の声なんか聞きたくない。私に自分の経験を十分説明させてくれなかった。それでよかった。仕事に就けなかったことは私の失敗ではない、彼の失敗だ。そんな会社で働きたいものか。
2.私は物事の均衡をなくしていた。ほかにもいっぱい仕事はあるんだ。
3.もちろんそんなことはない。少なくともトライしたんだから。
4.馬鹿馬鹿しい。泣かなきゃいけないのか。泣くほどの価値もありはしない。自分の価値はわかる。

怒り(15%)
嫌悪、葛藤


次回は、「想像法」のアプローチについていっしょに考えてみよう。







(2012/02/12 9:15)

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