気分や感情は事実ではない

2012
2/11
土曜日

怒りシーリズはまだまだ続くが、横道に逸れ、『いやな気分よ、さようなら』からヘッドラインのテーマに語ろう。

〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法
デビッド・D.バーンズ 山岡 功一 夏苅 郁子
David D. Burns 佐藤 美奈子 林 建郎 小池 梨花

4791102061

内容(「BOOK」データベースより)
認知療法の気分改善効果は、驚くべきものである。うつ病に対して、抗うつ薬と同等か、それ以上の治療効果があると証明された初めての精神療法、それが認知療法である。本書は、人生を明るく生き、憂うつな気分をなくすための認知療法と呼ばれる最新の科学的方法を示す。抑うつ気分を改善し、自分の気分をコントロールする方法を身につけるための最適の書。


あなたは次のように考えるかもしれない。

「気分が良い時と悪いときとで人生に対する考えが全く違うことからみても、確かにうつ病は私の悲観的な考え方の産物かもしれない。でも私の考えがそんなに歪んでいるとすると、なぜその歪みにずっと気づかずにいるのだろう? 私が不合理な考え方をしているとしても、なぜ普通の人とまったく同じように現実的な考え方ができると自分で思っているのだろう。」

憂鬱な考え方にねじれているにしても、それゆえにこそ大きな錯覚を引き起こしていしまうもの。言い換えれば、感情は事実とは異なるものである。実際のところ、感情はそれ自体はあなたの感がえ方を写す鏡のようなものに過ぎない。もし認知が歪んでいたら、そこに生じる感情も遊園地のトリックミラーのようにナンセンスなものになってしまう。しかしこの誤った感情も正常の考え方から生まれる現実的な感情と同じように認識されていしまうので、自動的にそれがあなたも事実であるように感じられるのである。こここそまさに、「うつ病の魔術的なトリック」なのである。

認知的の歪みによっていったんうつ病に陥ったら、悪循環により気分と行動がますます落ち込んでいく。憂鬱な脳が感じていることをそれが何であれ信じてしまうので、なにもかも悲観的に思えてくる。このことは十分の一秒の単位で起こり、自分でも全く気づけない。

憂鬱気分は現実のように感じられ、その結果その気分を作りだした歪んだ考え方が事実のように受け止められるに至る。この悪循環はどんどん進み、ついに完全に捕らわれてしまう。この心の監獄ともいえる状態は錯覚であり、自分で作りだしたまやかしに過ぎないが、事実のように『感じ』られるからこそ、まるで事実のように見えるのである。

心の監獄から脱出するのにはどのようにすればいいのだろう?

とても簡単なこと。

今の気分というのは、あなたの考え方の産物なのであるから、気分がそうであるからといってあなたの考え方が正しいことにはならない。不愉快な気分は、単にあなたが物事を不愉快に考えているという事実を示すに過ぎない。ちょうど生まれたばかりのアヒルのヒヨコが母アヒルの後をついて歩くように、気分は考え方の後をついて来るものである。ヒヨコが後をついて来るからといって、母アヒルの行く方向が絶対正しいとは限らないのである。

あなたは「自分はそう感じるからこそ、自分なのだ』というかもしれない。

このような感情が明白な事実であるという考えは、何もうつ病の患者だけの専売特許ではない。今日、精神療法家の多くが、「感情に自ら気づいて、それを素直に表現できることが成熟するということだ」と考えている。この考え方でいくと、感情こそ高度な自我の統合性と現実を反映するもので、従って絶対の事実である、ということになる。

著者の立場は違う。

感情それ自体は全く特殊なものではなく、むしろ歪んだ考え方がマイナス気分を作ると考える。

だからと言って、ロボットのように感情をなくせ、と言いいたいのではない。心の歪みから来る不愉快な気分をなくす方法を伝えたいのである。

人生をもっと現実的に受け止める方法を身につければ、喜びばかりではなく悲しみさえも、歪みなく純粋なものとして経験し、価値の高い感情生活を送ることが出来るようになる。




(2012/02/11 11:38)

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