頻繁に双極性障害と併発する疾患(-注意欠陥障害(ADD)-)

2012
1/18
水曜日

以下の著書からトピックスとなるものをピックアップしていこう。

参考書籍:「「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?-双極Ⅱ型障害と軽微双極性障害を学ぶ

「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?-双極Ⅱ型障害と軽微双極性障害を学ぶ


ジム・フェルプス 荒井 秀樹
4791107624

■内容紹介
うつ病と診断される人が増えている中、「落ち込んでいる」とか「意欲がわかない」といった抑うつ状態が長期間にわたり持続したり繰り返したりする人たちを、すべて同じうつ病と診断していて間違いはないのか? 本書は、長引く抑うつ状態に苦しんでいる人に対して、双極II型障害や軽微双極性障害を念頭において、診断や治療を見直しながら、主治医とともに病気を克服していくための対処方法を示している。また気分障害をスペクトラムとしてとらえる考え方を学ぶ。

■内容(「BOOK」データベースより)
うつが長いこと持続したり、繰り返したり、より悪くなる、などということはありませんか。抗うつ薬をのんでも効果がないとかより悪くなるということはありませんか。もしかすると、うつ病ではないのかもしれません。繰り返すうつの波は、「軽微な」双極性障害のせいかもしれません。本書は、気分障害スペクトラムの概念を詳説し、すぐに実践できる対処法を紹介する。



双極性障害と一緒に起きることが多い(併発)病気を見ていこう。

Ⅰ. 不安障害
1. 対人恐怖症・社会不安障害
2. 強迫性障害(OCD)
3. パニック障害
4. 心的外傷ストレス障害(PTSD)
5. 全般性不安障害(GAD)
Ⅱ. 注意欠陥障害(ADD)
Ⅲ. パーソナリティ障害
Ⅳ. 物質乱用障害
Ⅴ. 精神障害
(Ⅲ、Ⅳ、Ⅴについては触れない)


これらは強い気分障害の要素を持っていないため、自分たちの症状に当てはまるとは限らない。・言い換えれば患者は不運なことに、互いに無関係で別々の治療を要する二つのメンタルヘルスの問題を抱えてしまっていることがある。 (医学用語では二つの違った障害が同時に起きることを「併存状態(コモビディティ)という)

しかし双極性障害の治療をするだけで、これらの病気が回復へ向かっていこと多く、これらの症状がもともと双極性障害の気分障害の一部だった(または双極性障害によって症状といわれるレベルまで悪くなってしまっていた)と考えられる。

双極性障害は、精神科診断の主な種類のほとんどの疾患と併存する可能性がある。


診断上の不安障害という分類だけの話ではなく、不安障害と双極性障害の併発こそ問題となる。
なぜなら不安障害の治療にもっともよく使われる薬が抗うつ薬であるため。
これは多くの人に効く。
問題なのは、気分障害スペクトラムの症状と併存したり、実際に不安障害が双極性障害の一部であったりした時、つまりある程度の双極性障害をもっている時である。不安症状に対して使う抗うつ薬が双極性障害を悪化させる危険性を考慮しなければならない。

すべての不安障害には、多くの場合薬物治療と同様かそれ以上の効果のある心理療法が存在している。しかし、これらの治療は広く知られていない。どこでも受けられるものではない。結果的に、不安が際立っていて(気分障害スペクトラムの要素)も、気分や意欲の周期性変化が目立たない患者の多くでは、抗うつ薬の治療を受ける事になるだろう。

不安障害が双極性障害の一部である場合もある。気分障害スペクトラムの症状が上手く抑えられない時は、不安症状が原因とみられる。確かに不安は一般的に双極性障害の症状とみなされていない。

双極性障害と併存すると思われるものに触れていこう。



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Ⅱ.注意欠陥【多動性】障害(ADHD)

ADHDと双極性障害の併存から起こる二つの問題が、診断と治療に影響する。

◆双極性障害とADHDは、本当に別の症状なのか?

思春期前の双極性障害(厳しい調査基準による)の90%はADHDを持っているとビックリするような研究結果がある。
思春期前に双極性障害と診断されたという点に注目してほしい。同じ研究結果で、青年期で双極性障害を持つ人では30%だった。
成人期では、もっと数値が下がった。
これはどういうことだろうか?
まず子どもの双極性障害を診断するためには、ADHDの症状の奥にある症状を調べる必要がある。

双極性障害を併発したADHDとじぃんすいなADHDを区別するものは何だろうか?
この二つの障害には、意欲が高まっている、注意力散漫、早口で喋るなど共通する症状がいくつかある。しかし双極性障害の症状は周期的であるから、現れたり消えたりする
種類の症状はどれも、双極性障害からきていることが多い.双極性障害の症状にある軽躁病や誇大妄想は、ADHDにはない。

子どもの場合、これらの症状がどのように現れるのだろうか?
案の定、「双極性障害の軽躁病を探すのが難しい理由」で出てきたのと同じ診断上の難点が出てくる。
明かな躁病と子どもの正常な行動にもはっきりした境界線はなく、区分けするのはこちらの方が難しいくらいである。この調査の第一人者バーバラ・ゲラー医師が指摘したように、「子どもの機能障害、病的な多幸気分」あるいは「子どもが病的に多幸的であるとか病的に誇大妄想である」などは想像しがたいこと。
例えば、子どもはクレジットカードを使いすぎて限度額に達することもしないし、何度も離婚を経験することもない、とゲラー医師は言う。ゲラー医師の調査グループは、子どもの軽躁病や躁病を示す四大要素を見つけた。意欲亢進、注意力の散漫や早口とは違って、ADHDでは通常見られないものが次の四つある。

 1.異常な高揚感
 2.誇大妄想
 3.急速な思考
 4.睡眠欲求の減少

◆ADHDがあることで、双極性障害の治療は変わるか?

療法の症状がある場合、一般的に気分障害の専門家は、「まず双極性障害を治療する」ことに同意している。双極性障害の治療でADHD症状がヘル、あるいはなくなる場合もあるので、最初に気分調整薬を使う。ADHDだけの症状なら、おそらく気分調整薬だけでは効果がそれほどないし、ADHDの標準的なアプローチである精神刺激剤を使った治療が必要になるかもしれない。

しかし、精神刺激剤が抗うつ薬と同じように双極性障害を悪化させる可能性を認識しているので、最初に双極性障害の方を治療する。精神刺激剤を使うと双極性障害の危険性が高くなると言う考えはとても深刻であるが、まだ理論上の懸念である。その危険性は、まだはっきりと照明されていない。少なくとも、クリニックで何年もこの例に関して研究しているダニエル・エイメン医師の経験によると、精神刺激剤はADHDに関係している脳の変化を元に戻すことができるかもしれないとのこと。(研究結果を発表する準備段階にある) 一方で他の気分障害の専門家は抗うつ薬と同じような心配を精神刺激剤にも抱いている。

しかしながら、ある程度の双極性障害を持つ患者に対する精神刺激剤の危険性を評価する上で問題なのは、軽躁病が現れるまで待つ医者もいれば、探しにいく医者もいることである。だから精神刺激剤(または抗うつ剤)が軽躁病や躁病を引き起こすかどうか知ろうとすることは、それらの追求をどれだけ頑張るかにかっているかもしれない。患者の症状よりも、むしろ医師の追求過程によって結果が決まる可能性がある。

他の似ている病状が絡まる中で双極性障害を理解するのは、とても時間がかかる。双極性障害は他の病気と間違われる可能性があるし、他の病気と併存する可能性もある。そして他の症状の治療によって悪化してしまう可能性もある。診断結果では別の病気のように見えても、気分調整薬に対する反応はとてもよいこともある。あるいは双極性障害の気分の易変性が落ち着いたとき、もう一つの障害の症状がもっと明らかになり、見分けがつくようになるかもしれない。

目の前に認められる症状だけではなく、違う解釈も比較・検討して、全ての症状の経過を考えに入れる必要がある。



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